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「で。キサマは一体何しに来やがったんだ、カカロット」

なけなしの冷静さを取り戻したベジータは、滝行を中断して再び問う。
願わくば、悟空には今すぐ立ち去って欲しいと言う頑なな意思を眼差しへと込め、一先ずタオルドライ。

恐らく自身の願いは届かなかった。
それを確信したのは、悟空がどっかりと差し向かいにある樹木の幹に腰掛けた所作が、眼睛へ飛び込んで来たから。

ベジータは心中にてひっそりと落胆するが、いつもは無駄に生き生きしている相手の浮かない表情が気になった。
酷く暗然とした面持ちである。
一旦気になり出したら、どうにもそわそわして落ち着かなくなって来たベジータは、急かすように相手を呼んだ。

「おい!」
「あ、うん。いや、えっと……来るつもりは無かったんだけど」

悟空にしては、やけに歯切れが悪い。
普段のあっけらかんとした彼を知っている人間から見れば、これだけで明らかに様子がおかしいと判断出来た。
無論それは、ベジータとても例外でなく。

大体、来るつもりが無かったのなら今こうして己の面前に居る時点で矛盾している。
そう訝しんで正視すると、悟空は力無く笑み後頭部を掻いた。

「何ちゅーか、調子悪くてさあ」
「何が」
「瞬間移動もなんだけど、あっ」
「……!?」

言葉の途中でピクン、と悟空の体が震えたと思えば、いきなり全身を黄金色の炎が包み込む。
超サイヤ人化だ。

唐突に膨れ上がった戦闘力に、ベジータは何事かと目を瞠った。
が、どうやら戦意はないらしい。
忽ちオーラの波を収束させた悟空は、ほっと息を吐いた。但し、超化した姿のままで。


「な、何なんだキサマっ。やるつもりか?」
「そうじゃねえよ。ただ最近、こうやっていきなり超サイヤ人になったり、瞬間移動先間違ったり……調子悪いんだよなあ」

力のコントロールが上手くいかないらしく、家の中の物を壊し過ぎて怒られたのだとションボリする悟空。
対してベジータは慮るように、しげしげと相手を眺めた。

「……キサマ、もしかすると」
「え?」

何かしら心当たりでもあったのか、スッと伸ばした掌で金色の前髪を掻き分け、額を、頬を、首筋を撫でる。
勿論、邪念に繋がる他意はなかった。
単に、彼の体調を気に掛けた上での妥当な行動だ。
例えこの胸が熱く高鳴り、体温が急上昇していたとしても決して疚しい気持ちからではない。

変に緊張する自分自身へと言い訳を並べ立てつつ、ベジータは一通りの確認を終えて体を離した。


「やはりな」


概ね納得してポツリと呟かれた声に、悟空はただただ目を瞬かせるのみだった。










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