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3





「お、おい!どうしたんだよ、急に!」

突然腕を取られたと思えば、ベジータは己が寝泊まりに利用しているカプセルハウスへと向かって進み出したのだ。
一人合点がいった様子で説明も何もすっ飛ばされての強制連行なのだから、彼が不審感から慌てるのも至極当然と言えよう。

「ベジータ!」

この近距離で聞こえぬ訳がない、と再び呼び掛ければ、掴まえていた腕はそのままに向き直ってはくれた。
だが、不意に立ち止まられた所為で悟空は体勢を崩し、蹌踉けてしまう。

常ならば起こり得ない凡ミスに困惑しつつ自力で踏ん張ろうとするが、立て直そうとした矢先に腕を引かれた。
刹那、焦りを含んだベジータの舌打ちを耳にする。

「うわ、ちょっ!」

今度は力加減を間違えられたらしい。
加えて、バランスが取れずに倒れ込んで来た悟空をあろうことか避けようとするベジータ。

幾ら何でもそれは酷いんじゃないかと、助けを求めて振り回した手が肩口に引っかかり、彼諸共盛大に転んだ。
起き上がったら一言文句を垂れてやろうチクショウめ。
密かな決心を胸に、ベジータを下敷きにしていた悟空は一旦身動ぎする。

「……うん?」

と共に、ちょっとした違和感を感じた。
気のせいではなく、尻の辺りに硬い感触が当たるのだ。
男なら誰しも覚えが有りすぎるだろう膨らみ具合を認めて、悟空は無意識に呆れ笑いを零していた。

「チッ、くそったれめ……。おいキサマカカロット、何笑ってやがる?さっさとどかないと殺……」

ベジータも漸く自分自身の状態を把握したようで、恨み言もそこそこに身を強張らせる。

「いやあ、はははっ。おめえでもあるんだなー欲求不満!」
「……」
「あんまり強がってねえで、ブルマに構って貰えよ?なっ」
「……ッ!」

続けざまに揶揄され、挙措を失ったベジータは感情に流されるまま悟空の体を突き飛ばした。
すると乱暴に撥ね除けられて尻餅をついた悟空は、あたかも喫驚した風に男を窺う。
実の所、ベジータの本心は別にあったのだが、自分の発言で相手の怒りを買ってしまったのだと思い込んだ彼は、すっかりと意気消沈して視線を逸らした。


「……いいから、来い。話はそれからだ」


吐き捨てるように告げてから背を向ける男を暫く黙視した後、仕方無く悟空は室内へ消えた背中を追い掛ける。
地面を踏み締める足の感覚が、何とも頼りない気がしてならなかった。









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