お題 | ナノ



※幼なじみ設定





――小春日和
まさにそんな言葉が似つかわしいと思うような日のこと。

城を空けることが多いため、なかなか話すことすらままならない十蔵と一緒にお喋りでもしようかと思い、十蔵の部屋に行く***。

実際、お喋りはただの口実に過ぎない。
本当のところは二人きりの時間を過ごしたいというのが本音だったりする。


部屋の前に着くと、何故かやたらと心臓がバクバクし始めた。
幼なじみなのだから普通に話せばいいと頭では思うが、目の前の戸に手を伸ばすことができない。

何を話そう、何をしよう、いろいろな考えが頭を巡る。
考えてからくればよかったという後悔に辿り着いたとき部屋の戸が開き、スラッとした男性が出てきた。


「何かあったのか?」
『あ、いやっ、その…。』


顔が逆上せたかのように熱くなる。茹で蛸のように真っ赤なのだろうか。
二人きりでいるのが目的だったはずなのに、顔を見ただけで真っ赤になる自分が恥ずかしくなった。
これでは二人きりどころではない。


『暇だから…お喋りでもしようかなー、なんて…』


勇気を出して言ってみた。
いつからだろうか、彼を男性として意識し始めたのは。


「…それだけで迷っていたのか。」


だが、お固いわりに鈍感な目の前の幼なじみには***の勇気は通じなかった。
忙しいからやっぱりダメか、などと考えていると手をそっと握られた。


「たまには***と馬鹿げた話をするのも悪くないな。」
『馬鹿げたって…失礼ね!!さりげなく手握らないでよ!!』


微笑みながら言う彼は、幼なじみだから何度も見てきたはずなのに、男性と意識したときからそれすらもかっこよく見え、余計に意識してしまう。
手を握られたのだってすごく嬉しかったのだが、なぜ素直になれないのだろうか。この性格をどうにかしたい。


「先ほどから顔が赤いが、熱でもあるのか。」
『無いですよ、十蔵さんこそほんのり赤いですよ。固いこと言い過ぎてると胃炎になるよ。』



ばかげた話をしよう
――たまには二人きりで。



titleby:DOGOD69


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