親衛隊長と会長4 「遅かったですね、会長。あまり二人きりにはならないでください、腐りますよ?主に下が」 「だから俺は病気なんか持ってないって…!」 相変わらずなロジというか相模への容赦ない態度に俺は「あぁ、そうだな」と適当に返事を返してジークを見た。散々言い負かされたのか、今にも泣きそうな顔で、けど約束を守ってるのか唇を噛み締めながらプルプルと肩を震わせているジークに内心で可愛いなぁ、なんて思いつつ足を進める。近寄れば目尻に涙を溜めたジークが不思議そうにこちらを見た。 「ユーリ?」 「ちょっと足広げろ」 言えば素直に開く足の間に俺はどっかりと腰を下ろす。先に驚きの声が上がったのは頭上からだ。 「ユ、ユユユユユーリ…!?」 「会長、何をなさってるのですか!」 次に咎めるカナメの声。ロジは一瞬悩んでからジークの隣に座った。多分バランス的にカナメの方に座ろうと思ったが当たりがきついから諦めたのだろう。 「ん?別に。いつものことだよ、なぁ?ジーク」 目を見開いてるカナメに俺はあざとく首を傾げながらジークの頬に手を這わす。 「ユ、ユーリが甘えてくるなんて初め…っ」 「いいから、今日は俺に合わせろ」 動揺を隠せないのか、あわあわと両手をばたつかせるジークの耳をそのまま引っ張って小声で話す。それに分かったか分かってないのかは知らないが、落ち着きを取り戻したジークは俺の腰に両手を回して首筋に顔を埋めてきた。 「会長…もしかして二人っきりの時とかにデレてなかったの…」 「うるせーこいつが先にデレるからそんな余裕がなかっただけだ」 小声で半眼を向けるロジに若干気まずさを感じながら、俺は腰の空いた部分から胸を探ってくる手をカナメに見えないように抓る。 「あ、あの会長が自分から好意を向けられている人に近付くなんて…」 どうやら効果はあるようだ。声を震わせながら俺たちを見つめるカナメは口に手を当てながらまさか、と呟いた。 「やっぱり、脅されてるのですね…!契約の一種に1時間置きに触れ合わなければならない掟があったりして…」 「あれ」 ロジの間抜けな声が聞こえる。 俺達もそうだ。呆気にとられてカナメを見ていると、ブツブツ言いながらキッとジークを睨み付けた。 「そうやって自分から触れさせるように仕向けて嫌がる会長を楽しむ、なんて下劣な男だ!」 「楓ちゃんはやっぱり楓ちゃんだった…」 「こいつ…俺のこと慕ってるんじゃねーのかよ…」 同時に頭を抱えるロジと俺。ジークは負けるのが分かってるくせにまた反論している。 「どうすんだよ…」 「とりあえずもうちょっと続けてみよー…途中で気付くかもしれないしー」 お前の言葉、信じるからな。尾てい骨辺りで膨らんでくる熱を感じながら、俺はやはりカナメに見えないようジークの鳩尾に肘鉄を食らわすのであった。 「なぁ、ジーク。そこの卵とウインナー、食べさせてくれないか?」 「それもいいが私の卵とウインナーも美味しっぐふ…っ」 「会長がわざわざ食べ物を口に運ぶことを許したというのにそのような卑猥な…!恩を仇で返すのかっ!」 「あー…そういえば飯食うの面倒臭い時親衛隊に頼んでたような…」 「かいちょー…」 「しゃーねぇ、面倒臭えけど俺が食わせてやるよ。ほらジークあーん」 「ユッユーリ、その舌は誘っているのか?誘っているのか…!?」 「それを狙っていたのか、無理強いさせるなど卑怯な…!」 「駄目だ、伝わってねぇ…」 「なぁ、ジーク。俺の名前呼んでくれよ」 「ユ、ユーリ?」 「もう一回」 「ゆ、ユーリ…」 「もっと、な?」 「っ、ユーリ…!!」 「っこら待て盛るな時と場所を考えろ…!」 「だがもう我慢がっぐ、」 「名前を呼べるだけでも有難いと思え、コモドオオトカゲ。あと会長はユーリではなくゆ、う、り、だ。ちゃんとした発音も出来ないのか、愚図め」 「あはは、楓ちゃんにとってそこが大事なんだ…」 「なぁジーク」 「なんっ…!!………ユ、ユーリ今のは…」 「ほっぺにチューだね、魔王様愛されてるぅ〜」 「ユーリ…!もうこの者達など放って…ぶふっ」 「いいからお前は大人しくしてろ」 「会長からの口付け…!これは…」 「気付いてくれたかな?」 「だと嬉しいけどな」 「また例の契約の一種か!そうやって行動を思いのままに動かす訳だな。はっ、卑劣さが窺える」 「何故伝わらない…」 「な、何故でしょ〜…」 結局、日が暮れてもカナメには何も伝わらなかった。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |