ピグモとアラモのプチ冒険6



第4話!

お家に帰ろ
 (また遊ぼうね!)



「わーすげー、コロコロしてるー」
[わっ!こら転がすな…!]
「ねぇ、コーヴォルって人型になれるよね?見せて見せて!」
[は?あっちに俺様の偉大なる弟がいるからわざわざ人型になる必要なんてないんだよ!]
「ん?じゃあピグモは人型になれないってこと?」
[成人してる俺様がなれない筈ないだろっ!]
「じゃあ見せてよ」
[ふ、ふんっ。そう言うからにはまずお前たちがなってみねーと話にならないな!まぁ子供だからなれなくても仕方な…]
「俺たちなれるよー」
「まだ半人前だけど、ほら!」
[………う]
「ピグモも見せてよ」
「まさか俺たちが出来ること、大人のピグモが出来ない筈ないよねー?」
[むきーっ!俺様は偉大だからそう簡単にならないの!]
「なんだ、つまりなれないんじゃん」
[だからなれるって!]
「じゃあ見せてってば」
[ぐっ…ク、クリエさえあればいくらでも]
「クリエ?あの花の?」
[そうだ!クリエがないからお前たちに貴重な魔力を無駄遣いすることなんか…っ]
「じゃあ取りに行こうよ」
[へ?]
「裏山にクリエの咲いてる場所、俺知ってるよ」
「それさえあれば偉大なピグモは俺達に人型見せてくれるんでしょ?」
[そうだけど…]
「あ、まさかそれも嘘とか?」
[むっきぃぃぃー!!ムカつく!ムカつくぞお前等!上等だ、クリエの場所まで案内しろ!お前等に俺様の偉大なる人型を見せ付けてやる…!!]





「兄さん…大人気ないって言葉知ってる?」
[うぐっ]

 肩で声を詰まらせる兄さんに僕は呆れて溜め息をつく。けれど、まぁでも、と項垂れるその頭を見つめながらフォローの言葉を探した。

「確かにクリエがあればユーリといくらでも話相手が出来るもんね」
[だろだろ?!]

 途端に調子に乗って元気になる姿を見ながら、僕はやっぱりフォローしなくても良かったかもしれないと考えた。
 それにしても、と前で道案内をしてくれる子供たちを見る。
 山道を動きやすいようにだろうが、犬の姿に戻った彼らの進む速度は僕がついていくには速くて、思わず息が上がる。身体能力に優れているとは言えない僕たちコーヴォルは体力を使う時にも魔力が必要だ。これはクリエを見つけたらすぐに補充しないと帰れないかもしれない、と考えた所でまた更に子供たちの足が早くなった。

「ちょ、ちょっと待って!もう少しゆっくり…っ」

 慌てて走って彼らに追いつこうとするが、どうやら離れ過ぎて気付かないらしい。ぐんぐんとその差を広げられてその姿が小さくなっていく。森の中で草木も多く視界が悪い分、今にも子供たちを見失いそうになった。

[どうした、スピードが落ちてるぞ?]
「や、長い間人型でいたからそろそろ魔力が…」

 そう言いながら自分の足が少しづつ重くなっていくのを感じる。子供たちの姿はいつの間にか消えていて、それに焦った時に気が抜けたのか、僕は本来の姿に戻ってしまった。

[わっ、ととっ]

 肩に乗っていた兄さんは、腰掛けていた場所が消えて地面にドサリと落ちる。僕は元の姿に戻ったことで呼吸を落ち着けることが出来て、ゆっくりと息を吐いた。

[ごめん、兄さん…]
[あー、あいつらすっかりいなくなっちまったな…ていうか俺様達がいなくなったことに気付けよっ]
[うーん、まだ子供だし、多分走ることに夢中になってたんじゃないかな…]

 そう言って怒る兄さんを宥めつつ、僕は辺りを見回した。どうやら森の結構奥の方まで来てしまったらしい。どこを見ても木々が並び同じような道に見える中、とりあえずと兄さんは腰を上げて鼻をひくつかせた。

[戻るか。クリエの場所知らないのに進んで帰れなくなるのも困るしな!]
[今も結構奥まで来たみたいだけど大丈夫??]
[これぐらいなら俺様の鼻で戻れる!丁度もらった食料もまだあるから体力はもつ…ってあれ?おい…弟よ、クッキーとサンドウィッチが入った風呂敷はどうした?]
[え?あ、あれ、確か腰にかけてたからこの辺りに落ちて…あれ、ない…?]

 僕は近辺に落ちているだろうと辺りを見回して、風呂敷がないことに気付いた。マズい、食料がなければ兄さんがお腹をすかせてしまい、オーラを見る能力が鈍ってしまう。
 もしかして進む途中どこかに落としてしまったのだろうかと青ざめながら僕は兄さんの顔を見た。

[ど、どどどどどうしよう…!と、途中で落としちゃったのかも…!]

 そんな僕を見て兄さんは困った顔をするが、すぐに笑って肩を叩いてきた。

[心配するな!とりあえず戻れる所まで戻ろう、もしかしたらあいつら俺様達がいないことに気付いて引き返してくるかもしれないしな!]
[う、うん…]

 その言葉にやっぱり兄さんは兄さんだということに安心する。普段どうしようもなく単純だが、いざという時に優柔不断で心配性な僕を元気付けてくれる頼もしさに、僕は無性に甘えたくなって、兄さんの手をそっと握った。
 ぎゅっと握り返してくれる力に心が温かくなりながら、それでも奥の方に残る不安は僅かにだけど残っていた。
 だ…大丈夫…だよね?



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(C)siwasu 2012.03.21


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