Moon Color ツイッターの診断よりリクエスト「『月が綺麗ですね』ILOVEYOUをユーリが言うとなんとなるのか。あまーい感じで」 ※本編より先の話なので若干ネタバレあり注意。 ◆ 今日の飯も文句なしに美味かったと俺は満足しながらソファーに寝転がって近付くピグモとアラモに手を伸ばした。 ら、ジークに腕を引っ張られた。 「んだよ食後のモフモフタイムを邪魔すんな」 「う…。す、すまない…」 「で、何?」 不機嫌なまま仕方なく聞けば「いい酒が手に入ったから一緒に飲もう」とのこと。 酒と言えば嫌な思い出があるので顔をしかめたらアルコール度の少ないジュースに近いようなものだしそんなに飲ませないと約束してくれたので、さっきからジークの足元でポカスカ脛を叩いたり噛んだりしている2匹を宥めてこいつ等用のベッドに連れていく。 途中構ってもらえないことに悲しげな目を向ける2匹に心が揺らいだが、最近ジークとも仕事が忙しいせいで話せていなかったしとピグモとアラモには明日一緒に散歩に行く約束をして納得してもらった。 戻ると心地いい風が流れてきて見ればバルコニーへの扉が開いてジークがテーブルにグラスを用意している。むしろその横に並べられたつまみに引き寄せられるように近付いてこの世界でのチョコレート菓子みたいな球体のものを口に入れた。中で溶ける甘さに思わず頬が緩む。 そのまま何か話したそうに、けれどモジモジしたまま何も言えずにいるジークと微妙な空気のまま酒を酌み交わした。 相変わらず変な所でシャイな魔王に呆れつつふと空を見れば青い月が見える。 「慣れねーなぁ…この色」 「確かユーリの世界では色が違ったか?」 「あぁ、黄…」 続けようとした言葉はジークの目を見て止まった。不思議そうに俺を見るその金の瞳に元いた世界の夜空で輝く色を思い出して笑みが漏れる。 その時ふと、授業で聞いたどこぞの偉い文豪様の小話を思い出して悪戯心が芽生えた。 「月…綺麗だな」 目の前の金の瞳を見てほろ酔いの心地良さに思考を委ねながら肘をついた手に頭を乗せる。 ジークはその言葉に空を見上げて「確かに綺麗だ」と言った。 「あぁ、本当綺麗だ」 また俺は空を見ずに呟いた。ジークはそこで矛盾に気付き俺を見る。思わず喉の奥がクツリと鳴った。 「ユーリ…そう言う割には先程から月を見ておらんではないか」 不可解そうに眉を下げるジークを無視して風に揺られる長い髪を引っ張る。 目の前で痛かったのか目尻に涙を浮かべるそれを舐めとれば頬が真っ赤に染まった。散々人に同じ行為をしといて自分がされたらすぐこれだ。 「ゆ、ユーリ…っ」 慌てるジークに俺は少し悩んだ後席を椅子から引き締まった膝の上に移動する。 体重が乗ってビクリと肩を揺らすジークがあわあわと口を開閉させた。 「ま、まさかもう酔って…」 「ねーよ、」 胸元に頭をもたれさせれば上から心配そうな金の瞳が落ちてくる。それに締まる胸を今日ぐらいは解放してやってもいいだろうとジークの顔を両手で掴み唇を甘噛みしてみた。面白いぐらいに体が跳ねる。 「綺麗だ、月」 そう甘く囁きながらジークの瞳を見つめた。金の瞳が左右に揺れる。 俺は言ってから段々恥ずかしくなってきて目を逸らすと胸元に顔を埋めた。赤らむ頬はきっと酒のせいだけじゃない。 よく考えたら何だこの台詞は。意味が分からない。あれだ、文豪様はよっぽど気障な奴と見た。 「本当…嫌になっちまうぐらい綺麗だよ」 それでも最後に胸の内をさらけ出すようにそう呟いて絶対この意味は伝わるなよ、と深く念じた。 青い月よりも金にも黄色にも似た月の方がやはり好きだと感じながら。 こいつといる限り瞼の裏に映るそれが色褪せることはないだろう。 end. >> index (C)siwasu 2012.03.21 |