ピグモとアラモ2



 痛みに身悶えながらも心配そうに近寄るピグモとアラモに癒されながら、俺は二人を抱き寄せた。鳴き声すらもあげない2匹だが、喜怒哀楽はその雰囲気でちゃんと伝わってくるので大体何を考えているか分かる。
 ほら、今だって短い手で俺の顔を一生懸命撫でる辺り…くそ、可愛い。

「俺の味方はお前等だけだ…っ」
「何馬鹿なこと言ってるんですか。…僕はもう行きますけど、針は30分したら忘れず必ず抜いて下さいね」
「あぁ、分かった」

 帰るユイスにわざと礼を省き手を振れば、案の定引き攣るこめかみが見える。
 扉を強く閉める音を聞きながら俺は枕に頭を置き目を閉じると、2匹が背中に乗って肩や腰をマッサージしてくれた。正直そんな弱い力で凝りが解れることはないのだが、その心遣いが嬉しいのと背中に当たるモフモフが気持ちいいのと何より可愛いのとがアロマテラピー宜しく精神的に癒されていたので、黙って2匹のマッサージを受けることにした。

「…お前等が喋れたら少しはいい暇潰しになんのにな」

 そう呟けば止まる2匹の手。話せなくても言葉は理解出来るらしいこいつ等に失礼なことを言ったかもしれないと首を回せば、何やらピグモとアラモが自分の尻尾をくわえだした。一体何をしてんだ。

「おい、お前等…」

 俺の背中の上で尻尾を口にいれたまま転がる2匹に「そんな可愛いことは目の前でやってくれ」と頼もうと身体を起こしかけて、大きな音と共に開く扉に邪魔をされる。

「ユーリっっっ!!!仕事が終わったぞ…!」
「げ」

 窓から外を見れば、まだ青い空が見えることにげんなりとしながら俺は溜め息を吐いた。
 あれ以来俺との時間を増やす為に真面目に責務を果たす魔王の姿に、側近のユイスは勿論城中が感動を覚えて俺に謝辞を送ってきたことは記憶に新しい。それは勿論嬉しいことなのだが、今の体調としては正直もっと夜中まで激務をこなしてくれた方が有り難いっつーか。

「ん?何だこれは」
「あぁー…疲れに効くとかって」
「何?そこまで私の為に…」

 いや、その表情を見る限りお前との情事に備えているとか思ってるようだが、違うからな。

「ユーリ、ただいま」
「………おかえり」

 仕方なく返事すれば、微笑むジークに「お前は盛りのついた中学生か」とか「少しは手加減を覚えろ」とか言いたかった言葉は嚥下した。
 そうか、これが惚れた弱みというやつか。いや、そもそも俺はいつこいつに惚れた。出来たらその時に戻してくれ、もう一回やり直すから。勿論惚れない方向を狙って。

「ユーリ、今日も愛し合おうぞ」

 言いながらこめかみに唇を寄せながら馬乗りになるジーク。
 俺は焦って体を起こすも、ジークは背中にいた2匹を転がすと背中にソッと口づけを落とした。
 尻尾をくわえたままの2匹はそのままの体勢で転がるとベッドの下に落ちていく。

「あ、ピグモ、アラモ!…てめ、」

 俺はそれを目で追うと、責めるような視線をジークに向けた。人のペットに何してくれてんだ、と口を開こうとしたがその前に唇で塞がれてしまう。
 興奮止まぬ様子の荒い呼吸と尻尾が腰の紐を外し始めた所で、俺は抵抗する為に手を伸ばした。

「おい、これ見ろ、これ!今は針治療中なんだよ!せめて待っ…ひ!」
「治療しながらでも後ろからなら可能であろう」
「いや、ユイスから30分経ったら抜けって言われて…」
「では私が抜いてやる」

 駄目だ、話にならない。
 尻尾が腰から服の中に滑りこんでくるのを感じながら、俺は固く目を閉じた。

「くそっ」
「ユーリ…お前は本当にかわい「「ダメーーー!!!」」…い…?」
「は?」

 突然響いた重なる声に俺達は固まり横を向いた。
 と、同時に背中にかかっていた重力がなくなり…つまりジークが背中から消え、代わりに服を着せ直す手とジークよりは軽い体重がのしかかった。

「い、いくら魔王様といえどもやり過ぎだぞ!」
「それに僕達もいるのにそ、そそそ、そんなこと、するなんて…!」
「………えーと」

 俺を庇いつつ魔王様に向かう二人の見知らぬ子供に首を傾げる。
 こいつらどこから現れたんだ?

「ご主人様もちゃんと魔王様に言うべきだよ!」
「そうだ!何なら俺様が言ってやるぞ!」

 詰め寄られ、俺は疑問符を浮かべながらもその気遣いに礼を述べる。
 ベッドの下に転がされたジークは、ようやく起き上がると二人の子供に怒鳴りかかった。

「お前等っ!私に盾突く気か!!」
「ひっ!う…や、やっぱりやめようよ兄さん」
「お前っ、ご主人様を助けない気か!?」
「だ、だって魔王様だよ?」
「俺様達はその前にご主人様の下僕だ!」
「おーい…」

 怯えながら裾を引っ張る青い髪色の子供と、睨み合うピンク頭の子供とジーク。どうやらジークはこの二人と面識があるらしい。
 完全に置いてけぼりな俺は状況説明を求めつつ、そろそろ時間なので針を抜きたいんだが…と溜め息をついた。
 頼むからこれ以上面倒事を増やさないでくれ、面倒臭いから。



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(C)siwasu 2012.03.21


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