ピグモとアラモ1



 異世界って一言で言えば簡単だが、その中にも色んな種類があると思う。妖精が飛び交うような幻想的な世界に剣と魔法で敵を薙ぎ倒していく様な爽快的な世界、宇宙を飛び回るような世界に…あぁ、あとはパラレルワールドもあるか。
 そんな夢に憧れる子供達(稀に大人達)には少々残念なお知らせだが、お前達より一足早く非現実的な世界にやってきた俺から一つ、忠告させて欲しい。
 魔王っぽい奴には、気をつけろ。
 赤髪金目に角・羽・尻尾がついてたら多分それだ。見つけたらすぐに逃げるんだぞ、間違ってもヨメにならないか?と言われて頷くんじゃない。泣き虫でもとにかく構うな。
 あいつはな、普段弱そうに見えるが…。

「いっ、い加減に……しろ…っ!」

 とにかく、絶倫だ。

「そうは言っても、お前も喜んでおるではないか」
「馬鹿かっ、それはお前の尻尾が…ひっ、…っ!」
「これがどうかしたか?」

 ジークは中に埋め込んでいるものを確認させるかのように持ち上げるが、生憎と狭い空間に収まっているそれは俺の内壁を抉るだけに終わった。異物感への恐怖は慣れたものの、未だ自由に動き回る尻尾が与える快楽には弱い。
 おまけにそれから出る粘液には催淫作用があると聞かされた時はお前魔王じゃなくて本当は淫魔とかじゃねーのかと呆れた程だ。

「ユーリ、愛しておるぞ」

 行為中何度も繰り返す言葉に俺は思わずジークを睨みつけた。それを言えば許されると思っているのかお前は。
 が、心中で悪態を付きながらも言葉になるのは嬌声でしかなく、俺は悔しさに唇を強く引き締める。

「く…っぅ、ん」
「ほら、口を閉じるでない」
「ふぅっ、は…っ、あっぁ、ぃ…っ!」

 2本の指がこじ開けるように唇に侵入する。爪で傷を作られるのも御免だと仕方なく口を開けば舌を爪先で撫ぞられた。切れそうで切れないギリギリの強さに、思わず背筋が震える。
 漸く抜けた異物感に窪みはその入口を閉じるが、まるで欲しがるかのように収縮を繰り返しているのはジークの撫ぞる指の感覚で嫌でも実感させられる。そんな身体に少しの嫌悪感を抱きながらも、それでも甘受するのは相手がお前だからだ、と心中で思い目を閉じた。
 先程より質量のある圧迫感に息を吐きながら堪える。嬉しそうに背に口づけを落とすジークに、惚れた弱みだと眉を寄せた。
 しかし心とは逆に俺の身体は限界だと、訴えている。





「いいか。毎日だぞ、毎日。お前等の常識では普通の感覚かもしれないけどな、生憎と俺は人間だ。このままじゃいつか腹上死してもおかしくない」
「まだそれだけ流暢に口が動くなら大丈夫でしょう?」
「おいこら、じゃあお前も同じ目に合ってみろ。一日5回だぞ、5回。あのでっかいのがだな…」
「下品ですよ、ユーリ。それに人間といえどもそれぐらいで死にはしないことぐらい知ってます」

 とうとう我慢出来ずに文句を言ってやりたかった俺は、けれど本人ではなくその部下に愚痴を吐き出した。まぁこうして一蹴されることは分かってはいたが。
 ちなみにジークに言わないのはだな…あれだ、それで泣かれるのも面倒臭えからだ。

「俺の腰は既に死にかけなんだけど」
「だからこうして治療しているではないですか、この僕、が!」
「何で語尾そんなに強調すんだ…ってい…っ!痛い痛い痛い!痛ぇよバカ!!」

 俺は俯せの身体を捩ってユイスを睨みつけた。針治療によってジクジクと熱を持った腰は同時に痛みと怠さが癒されているのが分かる。
 最初の治療を受けた時はそれこそファンタジーらしく魔法とか使えよ、と抗議したのだが実はこの針は珍しい癒しハリネズミのものらしく、魔法よりもずっと効き目が強く高価なのだと逆にユイスに怒られてしまった。

「何で僕が貴方達の交尾のケアまでしなくちゃいけないんですか」
「おま…交尾って…せめてもっとまともな言い方」
「交接」
「……………」

 冷めた目のユイスに俺は諦めて枕に顔を埋めた。
 ロジの奴、こんなドラゴンの何がいいんだ。

「兎に角、今はただゴロゴロ寝っ転がるぐらいしか仕事がないんですからせめて旦那様のお相手ぐらいしっかり務め上げて下、さ、いっ」
「っっっ!ってぇ…」

 止めとばかりに剥き出しの背中を叩かれ俺は涙目でユイスを睨みつける。
 確かに初夜以降俺の身体を気遣ってマナーや字の練習はなくなったものの、今はむしろそっちの方がいいと請いたい。寝転がるだけがどんなに暇か分かるか、畜生。



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(C)siwasu 2012.03.21


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