二人+夜=愛3 さて、何と言おうか。 返事を待っているらしいジークの咎めるような視線とはなるべく合わないように目線を横についている腕の方へ向けながら、俺は口を開く。 「…一回だけだったし」 「あるのだな」 「…向こうの世界での話だし」 「誰だ、それは」 「…聞いてどーすんだ」 俺はその発言に思わず半眼になりながら向き見ると、怒りが収まりきらないといった表情のジークは鼻を鳴らしながら口の端を歪めた。 「その者は水責めにでもあわせて、呼吸の出来ない苦しみに悶えさせながら殺さずじっくりと嬲ってやるわ」 そんなジークの言動に、忘れかけていたがそういえばこいつ仮にも魔王なんだったと思い出した。 それにしても昔の男でこうも責められるとは…。泣かれるのも御免だが、これはこれで面倒臭い。 俺はこのままでは埒が明かないと現状を打破すべく、ジークの首にゆっくりと腕を巻き付けて甘えるような仕草を取ってみた。 ジークの眉がピクリと動くのを確認しながら顔を寄せて触れるだけのキスをすると、鼻が合わさる距離のまま金色の瞳に真摯な視線を向ける。 「これからは、こーいうことすんの、お前だけだろ?」 「ぬ…」 「経験あるっつっても覚えてねーんだよ。だから、俺がしたいって思ってするのはジークが初めてだ」 「ぬぬ…」 「…それとも、俺が他の男としたことあるって知って、嫌いになったか?」 「そ、それはない!」 「じゃあ汚いって感じたのか…」 「それもない!」 眉を下げて悲しそうな表情を作れば、怒りはどこにいったのか焦る顔で俺を見るジーク。 俺自身言ってから気付いたが、これで軽蔑されたら結構傷付く。それぐらい嫌われたくないとは思っていた。 ジークは身体を戦慄かせると、力強く俺を抱きしめる。 「ユーリが怖がる気配がないから、もしやと考えはしたのだ。だが、事実と知って私は、私は…」 悲愴な声でそう言うジークに本当に悪いことしたなぁ、と罪悪感が芽生える。 しかしこれ相手を言うとどうなるんだろうか。…いや、黙ってよう。 「意識がある上では本当に初めてなんだよ。…こんな気まずいままのセックスは嫌だからな」 「分かっておる!」 ガバッと顔を起こしたジークは俺の手を取るとソッと甲に口づけを落とした。 「おぬしが忘れられぬ位蕩けさせてやる。私がどれだけユーリを愛しているか、存分に身を以て知ってくれ」 恥ずかしげもなく愛しそうに呟く声に、俺は思わず頬が赤くなって手を振り払った。 くそ、後半の台詞に格好いいとか思ってしまった乙女な俺なんぞ爆発してしまえ。 「優しくするからな、ユーリ」 「あー、はいはい。いっぱい愛してねダーリン」 誤魔化すように棒読みで返事すれば、ジークは笑って俺のこめかみに唇を寄せた。 まるで悟られているようなそれに悔しくなって俺はジークの長い髪を引っ張ると、荒々しく唇を合わせる。それに呼応するように激しく貪る口付けは、気付けばお互い高ぶるように求め合っていた。 「っは、ぁ、」 「力を抜いていてくれ、ユーリ」 狭間を割り、窪みに押し当たる感触に俺はされるがまま身体をシーツの上に投げ出す。しかし視線を下の方に向けて状況を確認すると、慌てて足を閉じそれの侵入を拒んだ。 「おい!何突っ込もうとしてんだお前は…っ!」 「何って…これだが」 怒鳴る俺にジークは首を傾げるとつい、と自分の尾てい骨から生える蜥蜴のものに似た細い尻尾を持ち上げる。 不思議そうな顔を見せるジークに頭がくらりと揺らいだ。 「慣らさねば辛いであろう?」 「いや、そうだけど。…普通は指使うもんだろ」 「指では爪が当たって中が傷付くではないか」 「切っとけよ…」 見せられた両指の尖った爪を見て俺は溜め息を落とす。 「どんなプレイだよ…」 「私の尻尾は主に性的行為として使っておるのだが」 知りたくなかった事実にまた揺らぐ頭を押さえていると、顔を寄せたジークが俺を真剣な眼差しで見つめてきた。 「優しくすると誓う、絶対にだ」 あぁ、もしかしてこれは怖がっていると思われているのだろうか。あながち間違いでもないが。 流石にここまで来たら戻ることはもう出来ない。俺は覚悟を決めると、頷き続きを促した。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |