二人+夜=愛1



 生徒会長を勤めていた筈が気が付けばファンタジーの世界にワープして、あなたが伝説の勇者か!とか言われるならまだしも魔王様に嫁ぐなんて話知ってるか?
 あったら是非教えてくれ、参考にするから。

「…ユーリ」

 面倒臭いことが嫌いな俺は、ワープ先で魔王様に求婚されて(いや、まともな求婚なんざされちゃいないが)相手するのも面倒だったので(だってあいつまさかの泣き虫なんだよ、俺の嫌いな)嫁入りすることが決まった。
 最近は何となく「あぁ…俺こいつ好きかも」と思えてるのでその辺りは問題ない。

「おい、ユーリ…」

 泣き虫なのは仕方ないとして、顔よし・・スタイルよし・オプションに角と羽根と尻尾…は別にどうでもいいとして一応王様だから贅沢な暮らしは出来るし、気の弱い性格だから基本的に言うことは何でも聞いてくれるし(そのほとんどはガミガミドラゴンに阻止されるが)何より優しい。これは男女限らず一番大事な所だと思う。
 最近は周りも俺が人間でも普通に接してくれるようになったので、少し嬉しかったりする。

「………ユーリ…」

 まぁ(色々すっ飛ばして)そんな訳で今日は魔王様との初夜だ。
 ちなみに初夜ってのは結婚した夫婦が初めて寝床をともにする夜で、午後八時頃を指すらしい。
 調べてもそんな表面上の説明ばかりだが、つまりはお互い肉体で愛を確かめ合う…要はセックスする夜ってことだ。

「って何泣こうとしてんだコラ」
「ユ、ユーリが返事してくれぬからだ…!」

 目尻に涙の粒を浮かべるジークを俺は足蹴にしながら冷たい視線を向けた。この泣き癖がなければもっといい男なんだがな。
 現在風呂場でのムードもジークのテンパりにより台なしになったせいでちょっと白けてる俺だが、あちらはそうでもないらしい。顔を赤くしながらモジモジとするジークを見てると、ヨメってのはポジションが上でも構わないのだろうかとふと思った。
 いや、自分がリードするのは面倒臭いから絶対嫌だが。

「ユ、ユーリ…」
「何」
「や、ややや、優しく、する、からな…!」
「………」

 …やっぱり面倒臭くても俺が襲った方がいいんじゃないだろうか。何か不安を感じる。
 緊張のせいかガチガチに固まっているジークは、風呂場での積極性はどこに行ったのか今はベッドの上で正座をしながら俺を見つめるだけで動く気配はなかった。
 俺は大きな仕方ないとばかりに溜め息を一つ吐く。
 何を勘違いしたのかジークが怯えるように身体を跳ねさせた。

「ちげーよ。ほらジーク、もっとこっち来いって」

 言いながら俺が座っている枕側に手を招く。それに慌てて移動しようと立ち上がるも、ジークは足が痺れたのかそのまま前のめりに倒れこんだ。

「本当間抜けな魔王様…」
「い、言うな」

 罰が悪そうに赤い顔をしかめるジークが男らしい顔つきをしている割りに可愛く見えてしまい、俺は苦笑する。
 性交経験はあっても恋愛経験のなかった俺は、こいつ程はっきりと感情を表すことは出来ない。
 けれど、本来ならジークの面倒臭い所を面倒臭いと感じずむしろ可愛いと思えるのは…つまり、そういうことなのだろう。

「ユーリと繋がれると実感が湧いて、その、少し緊張してだな…」

 俺は倒れた体勢のままモゴモゴと言い訳するジークに近寄る。顔を両手で持ち上げると、揺れる金の瞳が俺の姿を映した。

「ユ、ユーリ…」
「もう黙ってろって。ムード作りが下手だな、お前」

 そして口を開くジークに顔を近付けて唇を掠る程度に寄せれば、躊躇いながら合わさる温度を直に感じた。

「…は、……っ」

 少し口を離せば追いかけて来る舌が見える。それから逃げるように背を逸らせば、いつの間にか体勢は逆転してジークが俺に乗り上げる形となった。
 布越しに肌を滑らせる手に、身体が高揚するのが分かる。



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(C)siwasu 2012.03.21


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