魔王様+竜=主従4



 結構優しく触ったつもりだったが皮膚が薄そうにも見える為、ここは刺激に弱いのかもしれない。

「痛かったか?」
「だ、大丈夫だ…」

 堪えるように肩を震わせるジークに悪いことをしたかな、と俺はそれから黙って背中を洗うことに集中した。
 羽周りの洗い方がよく分からなくて軽く石鹸を泡立てた手で揉んでみたが大丈夫だろうか。
 最後に湯を桶に入れて流してやれば、礼と共にジークが立ち上がって湯舟の中に…っておい待て。

「なんで勃ってんだよ」
「ユーリが弄るからであろう」

 振り返ったことで見えたギラギラと輝く金の目が、俺に情欲を向けてくるのを確認して思わず冷や汗が流れる。
 そうか、「痛かった」のではなく「感じてた」のか。

「…ここではヤんねーぞ」
「分かっておる」

 息を大きく吐いて深呼吸しながら湯の中に身体を沈めるジークの為に、俺は身体を浴槽の隅に寄せながらついでに距離を取ろうとしたが、残念ながら腕を引っ張られてしまう。
 そのまま逞しい胸の中に収められ抱き込まれてしまえば逃げることは困難だろう。
 それでも背中に当たる胸板と耳にかかる息に俺は思わず身をよじる。

「おいこらジーク。股間のブツが当たってんぞ」
「…最後までヤりはせぬ」

 最後ってどういうことだ、最後って。
 その言葉と同時にジークの手が身体を這い回った瞬間嫌な予感がしつつ、抵抗しようと腕を動かそうとしたが、ジークの二の腕がそれごと身体を抱えてしまっている上に湯の中という悪条件のせいで俺の上半身の身動きは完全に封じられていた。

「煽ったお前が悪い」
「あ、おっ…て、ねぇ」

 お前の羽が性感帯だって知らなかっただけだ!
 そんな思いも空しく、目的を意図した手は俺の太股や横腹を滑りそのまま胸の突起を摘み上げる。
 それと同時に鎖骨を強く噛まれてしまい、俺は思わず食いしばった歯の隙間から声が漏れた。

「ぃ…っ」
「ユーリの肌は、滑らかで美味そうだ」
「食、う…な…!」

 血は出ていないだろうが跡は絶対残っている筈だ。ジークはそこを労るように舐め上げ、口づけを落とす。
 ゾクリと痺れた感覚に眩暈を起こしつつ、俺は荒くなってきた息を必死に落ち着けようと短い呼吸を繰り返した。

「風、…呂場は、こんな、こと…するとこじゃ…ねぇ」
「だから触ってはおらんだろうが」

 言いながら喉を鳴らす、いつになく強気なジークに俺は漏れそうになる舌打ちを飲み込んだ。
 確かにペニスにはさっきから微塵も触れていない。しかし、上半身を弄る手や口は俺の性欲を刺激するには十分過ぎる程だった。
 さっき下手なんじゃないかとか思って悪かった、と心中で謝罪しつつ、首筋に這うジークの唇に抑え切れない息が漏れる。

「ユーリも勃ってきたな」
「…ったり前だ」

 俺は耳を甘噛みするジークの口から逃れるべく、上体を反らして広い肩に頭を預ける。
 視線を下ろせば言葉通り俺のペニスも湯の中で緩く主張を始めていて、「おあいこだ」と笑うジークを半眼で睨みつけた。俺の場合は不可抗力だろうが。
 このままやられっぱなしでは収まりがつかない俺は、そのまま緩くなった拘束の中から腕を無理矢理引き抜くと、ジークの頭を掴み自分の方へ寄せ唇を舐める。
 そのまま開いた口の中へ出した舌を差し入れ相手のものと一回絡ませるだけで逃げてやれば、案の定名残惜しそうな顔が視界に写った。

「な、ジーク?もう我慢出来ねぇ」

 掠れるような甘ったるい声を意識してねだってみれば、ジークはピタリと固まった。そして復活したかと思うと、予告なしに俺を抱えたまま勢い良く立ち上がる。
 視界の端で大きく波打つ湯舟に慌てたようなピグモとアラモが見えた。

「ちょ、ぅお…っ」

 急に抱え上げられた俺は驚いてジークの首に腕を回す。ジークはそのまま器用に腰と膝裏に手を差し入れ直し湯舟を出ると、一目散に飛び出し…ってちょっと待て!

「まずは身体拭け!風邪引くだろうが!あとあいつらも連れてけ!!」

 言いながら頭突きを繰り出せばよろめいたジークと共にこけかけたなんて情けない話があるか、普通。
 無事モグラ兄弟も一緒に上がり、ジークが俺達1人と2匹にお得意の風魔法みたいなもので強風ドライヤーのように水気を吹っ飛ばしてくれたのは良いが、その頃にはみっともなく焦る魔王様の姿に萎えてしまったとは…流石にこの状況で言えねぇよな…?
 あぁ、面倒臭ぇ。
 このムードのまま初夜(?)を迎えることが出来るのだろうかと、俺は一抹の不安を抱きつつ………来週に、つづく。(これも一回言ってみたかったんだよな)



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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