二人の結婚儀式3



 俺は出来たら楽に殺してくれねーかなぁと思っていると、突然サーヴァが喉を鳴らすように笑い始めた。

「くくっ。…おいロジ。この人間、ジークの涙を止めたぞ」
「は?」

 そう面白そうに笑うサーヴァに俺は首を傾げる。
 ジークが泣き虫なのは初対面で知ってるが、泣き止むことがそんな面白いか?普通放っておけば泣き止むだろ。俺はそれを待てないから嫌なだけで。
 サーヴァは笑うばかりなので視線をロジに向けると、苦笑いをしながら俺を見つめていた。

「あのさ、人間サン。知らないだろうから教えてあげるけど、ジーク様は一度泣いたら2年は泣き止まないよー?」
「2年!?」

 おい待て。2年っておかしいだろそれ。枯れ果ててミイラにでもなる気か。

「しかも泣き虫だからすぐ泣くし。泣いてない時の方が珍しいんじゃないかな?」
「まぁ、泣き止んで次泣くまでが1週間保たないな」
「それはサーヴァ様がいつも泣かせに来るからでしょう」

 そう言いながら溜め息をつくユイス。
 場の空気がここに来て和んだ気はするが、俺は頭の中は疑問でいっぱいだ。あと腹減った。

「ジーク様は見た目はそんなでも風と水の魔王様だから泣くと魔力の源が減っていくんだよねー。だから魔王の中では一番弱いって皆言ってるけど」
「本当はジーク様が一番お強いのです!」
「ふふっ、知ってるってー」

 ようやくユイスからの反応を貰えて嬉しいのかロジは分かりやすく目を細める。
 本当なら会話をまとめて考えたい所なんだが、腹が減って脳が動きそうにない。
 ジークを見ると、顔を真っ赤にさせて「ユーリには知られたくなかった」と俯いていた。いや、今更だろ。

「そこの人間、ユーリと言ったな。話してみたいが先に朝食を取ろう」

 サーヴァがそう言ってくれたことで、ようやく朝食にありつけるようだ。
 素早く狙っていたものを自分の皿に移していくと「はしたない!」と後ろから咎められたが無視だ、無視。

「久しぶりに泣き止んだと聞いたからこいつの泣き顔を見ながら朝食を取ろうと思っていたのにな」
「あんた…ドSだろ」

 会話して分かったのだが、サーヴァはどうやらジークが泣き止む度に泣かせにくる虐めっ子のようだ。
 先程の会話よりも幾分砕けた雰囲気で食事中何度か悪口を言って泣かせようとしてくるのだが、ジークは涙が浮かぶ度に俺に腹を小突かれて踏ん張っていた。

「こんなにつまらない朝食は始めてだ」
「そりゃどうも」

 少し不服そうに頬を膨らます顔は幼く見える。結局こいつのお陰で食事に集中することが出来なかった。
 俺はぐったりと疲れた顔で椅子に背を預けていたら「行儀が悪いですよ」とユイスに身体を起こされてしまった。面倒臭い。しかしその言葉から棘が減っているように感じるのは気のせいだろうか。

「人間で男か…ロジ、どう思う?」
「俺はいいと思いますよー」
「じゃ、東の国は人間がヨメになることに賛成ってことで」
「さっきのあれは何だったんだ…」
「からかっただけだ」
「面倒臭い奴だな…」

 からかうレベルじゃないだろ、あれは。笑みを浮かべるサーヴァに俺は溜め息を吐いた。

「ユイス、お前もいいだろう」
「…」

 サーヴァの視線を追って後ろのユイスを見ると、渋い顔で頷いている。が、納得は出来てないようだ。

「ユイスちゃんはプライド高いからね〜。上司のヨメが自分より格下なのが許せないんでしょ」
「じゃ、辞退するぞ?」
「えっ」

 俺はここで、と見計らったようにその言葉を口にした。当然だがジークは慌てたように狼狽えている。

「や、約束が違うぞ」
「いや、ヨメになれば面倒なことにはならないって言ったのお前だろ。十分面倒臭ぇじゃねーか」
「ぬぐっ…ユ、ユイス!私はこの者と以外子孫は残さぬからな!」
「いや、無理だろ」

 俺男だし。そう思っていたら「別に子孫は残せるぞ」とサーヴァに言われてしまった。どうやって子供産むんだ…面倒臭そうだし俺は絶対産まないぞ。



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(C)siwasu 2012.03.21


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