二人の結婚儀式2 俺は後でもう一回触らせてもらおうと心の中で決めていると、ジークが俺の手を引いて肩をまわして来る。体勢が辛いと文句を言おうとしたが、自慢したくてうずうずしていたのだろう。新しい玩具を自慢する子供のような顔をしていて諦めた。 「サーヴァ、この人間はユーリ。私のヨメになる者だ」 その紹介の仕方を聞く限りまだヨメにはなっていないらしい。ここでやっぱり…と言ったらやっぱ泣くんだろうか。それは勘弁。 そして離す気のない手を抓りながら払ってサーヴァを見ると、信じられないと言わんばかりの表情をしていた。俺もそう思う。 …ところでいつになったら朝食に手を付けていいのだろうか。 「お前は何を言ってる」 沈黙の中俺が朝食を見ながら手を付けるタイミングを見計らっていると、低い声が空間を響かせた。顔を上げると、サーヴァがジークを睨みつけている。 ちなみにユイス、「いけっ、サーヴァ様」とか小声で言ってるつもりだろうがしっかり聞こえてるからな。そんなに俺がヨメになるのは嫌か。 ジークを見ると、気押されているのか冷や汗が垂れていた。そうか、力はサーヴァの方が強いのかとぼんやりその顔を見ていると手を握られる。それ、相手には逆効果だと思うんだが。 「それは男、しかも人間だ」 「わ、分かっておる」 「分かってない!!」 声でけーよ、おい。当然予告がある筈のない怒鳴り声のせいで耳鳴りがする。 「魔王たる者が脆弱な人間と契約を交わすなど馬鹿か、お前はっ」 そう鼻を鳴らして笑うサーヴァにジークは身体がプルプル震え…おい、これ以上虐めるなよ。こいつ泣き虫なんだから。 そしていつになったら飯が食えんだ。そろそろ腹が限界を迎えてるんだが。 「大体お前は200年前からそうだ。争いが嫌いだからと人間と同盟を結んだ上自ら領土の3分の1を明け渡すわ」 「そ、それは土地が余ってたからで…」 「度胸をつける為に子供でも攫って来いと言えば孤児院に寄付し始めるわ」 「に、人間の領土には身寄りのない子供がたくさんいたのだ…」 「国王が旅行に行くからと子供を預かるわ」 「に、人間の王も休息ぐらい必要で…」 うん、確かに馬鹿だ。 流石の俺も人間だがサーヴァの味方をしたくなるほどのへたれっぷり。大体国王も何故魔王に子供を預ける。色々と間違ってるだろ。 だがここで俺も一緒になって口を開けば確実にジークは泣く、というか既に泣きそうだ。お前完全に俺との約束忘れてるだろ? 俺が静かに慌て出している中、サーヴァは追い討ちをかけるようにジークを責め立てている。 「そうやってまたすぐに泣くのか?だからお前はいつまで経っても魔王として…」 「う…」 あ、こいつ泣く。 そう思った瞬間、俺は反射的に空いている方の手でジークの顔を殴っていた。 「い…っ」 手加減したが、突然の衝撃に驚いたらしい。殴られた頬を押さえながら目を丸くさせて俺を見つめているジークの表情は相当間抜けだ。 「俺、泣く奴が一番嫌いって言ったよな?昨日といい今日といい約束守る気あんのか?」 「約束…」 やっぱりこいつ忘れてやがる。 「俺がヨメになる以上?」 「…あ、っ絶対に泣かん…!」 「だったら情けない面さっさと戻せ」 そう言うと、ジークは慌てて自分のマントで顔を拭い始めた。 ところで仮にも魔王を殴って大丈夫だったんだろうかと前を見れば、今度はサーヴァとロジが間抜けな顔を見せていた。ついでに後ろにいた筈のユイスも覗き込んで同じような顔をしている。 …やっぱ処刑でもされるのだろうか。面倒臭いな。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |