二人の結婚儀式1 翌朝。魔王のヨメになることになった(もうなってるのか?ヨメってのは口約束でオーケーなのか?)俺は、元々着ていた学生服をメイドさんに剥ぎ取られ、風呂に入れられ、この世界の礼服であろうものを着て応接間らしき場所で腰かけていた。 勝手に服は脱がせてくれるわ体を洗ってくれるわ、ついでに歯も磨いてくれるわで寝起きに弱い俺には素晴らしいサービスだ。 「で、朝飯は?」 「この人間はなかなか図太い神経の持ち主のようですね」 横に座るジークに聞いたんだよ、お前に聞いたんじゃねえ。 そう心中で思いながら俺は後ろで背筋を伸ばしながら立っているガミガミドラゴンもといユイスに舌打ちする。 「そう言えば、この男は一体何者なんだ?」 「…指を差さないで下さい。失礼ですよ」 「ユイスは私の側近だ。代々西の魔王の側近はドラゴン族の中から選ばれるのだがな、今回はどうやら一番面倒臭いのが当たっ「聞こえてますよ、ジークハルド様」たような気もしたが真面目でよく働いてくれるいい奴だ!」 「…お前部下に牽制されてどうすんだよ」 言いながら親指を立てるジークを半眼で見ながら、俺は椅子の背凭れに体を預けた。よく考えればヨメって重要な相手みたいだし、この側近や配下やその他もろもろに認められないとなれないもんじゃないのか?うわー思いっきり面倒臭えじゃねーか。今更ながら騙された感がする。ヨメにクーリングオフ制度は適用されるのだろうか。その前に俺ってもうヨメになってるのだろうか。 そんなことを悶々と考えていると、いつの間にやら目の前には運ばれてきた朝食と重厚な扉から入室してきた男がいた。いや、違う。猫男?というより黄色に斑模様の姿はどちらかと言えば虎男か?顔も服から覗く手も虎にしか見えない男は、「どうも〜、おはよーございまーす」とやけに所帯臭い挨拶とともにジークに向かって一礼する。その後ろから部下らしきフードを被った男が顔を覗かせた。この虎男が東の国の魔王なんだろうか。なんかチャラチャラしてる奴だな、と思いながら一瞥すれば虎男は俺の姿を見て目を丸くした後ニンマリと笑った。なんなんだ。 「遅れたな」 「いや、構わぬ」 部下らしき男はそう言いながらフードを取った。白い髪に右だけ見えてる白い眼の眼帯男は、色こそ奇妖だが見た目はこの部屋の中で一番人間に近くて少し親近感が湧く。顔も格好いいと言うよりは美人さん、って感じだ。 眼帯男はそのままドカリと魔王の正面の椅子に腰かけ、虎男はその後ろに立って…あ?ってことは… 「あ、こっちが魔王様だったのか」 ポロリと独り言が零れていたらしい。実は東の国の魔王だった眼帯男に一睨みされる。その時白い眼が青く輝きだした気がするが、それをじっくり観察する前に虎男さんに宥められ色は元に戻っていた。 「一応それ禁句だから気をつけてね〜人間サン?」 「あぁ、悪い」 座っているとは言え虎男と並ぶとその華奢な体が目立つ為よく分かる。素直に謝ると、眼帯男は鼻を鳴らしながら「躾ぐらいしっかりしておけ」とジークに小言を吐いていた。 「ユイスちゃんお久しぶり〜!元気にしてた?」 「…」 後ろに立つ虎男がユイスに声をかけるも返答はない。こっそりと振り返ると、首を明後日の方向に向けて無視を決め込んでいた。 表情を見るにどうやらユイスは虎男が苦手なようだ。 「ユーリ、紹介しよう。東の国の魔王のサーヴァスト・グレ「短く」…サーヴァとその後ろにいるのが、」 「俺はサーヴァ様の側近のロジだよーよろしくー」 「あー、よろしく」 何故かサーヴァではなくロジの方が後ろから手を出してきたので握手する。爪に少しビビったが思ったよりも柔らかい肉球にちょっと癒された。もふもふしている動物は好きだ。 ついでに肉球で遊んでいると、サーヴァに一睨みされたので俺は渋々手を離した。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |