05


「俺、初めてちゃうからすぐ入んで?」

 勿論嘘である。慣らしもせずにいきなりチンコが入るとか余程のクソゆるアナルだ。もしくは余程の租チンか。
 だが男は最後まで出来るか分からない庚より即席中出しが出来る俺で妥協する気になったようだ。ボクサーパンツの中に手を入れて尻を揉んでくる。
 俺は腰を上げてそれを受け入れながら、甘えるように男の首へ腕を回した。

「あんなに暴れてたくせに、そんなに会計に手を出されるのが嫌なのかよ」
「そりゃ、なあ。だって生徒会の仲間やもん。痔になったら可哀想やん」

 俺の冗談に男が笑う。そのままパンツを脱がそうとしてきたので、俺は尻を地面に押し付けることでそれを阻止して訝しむ男に甘えた声をあげた。

「俺な、セックスの時は絶対ちゅーしてほしいねん。してくれる?」

 よくもまあこんなに男たちが転がってる中でも勃起できるものだ。膨らんだ股間を押し付けながら唇を寄せてくる男に応えながら、俺は口を開けて舌を誘う。
 そして口内を漁る舌を絡めながら奥へと導いて、俺は勢いよく歯を食いしばった。

「ッ!?!?!?!?!????」

 抵抗をやめたことに警戒を見せないのは流石性欲に生きる雑魚キャラである。
 いや、逆に有り難かったけど。
 俺は血を吹き出す男の舌を逃げないように噛みしめたまま、最後の力を振り絞って勢いよく頭突きを食らわせると、よろめいた男の股間に容赦なく蹴りをお見舞いした。
 口から血を吹き出して悶絶する男を見ながら口の中の血を吐き出して、ふらつく頭を押さえながらゆっくりと起き上がる。
 すると何か鈍い音が聞こえたので視線を向ければ、また庚がパイプ椅子を持っていた。
 どうやら再起した男がいたらしい。俺の予想は間違ってなかったようだ。

「あかん、頭突きの連発でめっちゃ頭痛い」

 頭を駆使したので脳震盪を起こしている。それでも気力だけで立っている俺の根性を褒めてやりたい。
 だが、よろめきながら庚に近付こうとしても足は全く動く気配がない、というか進まない。
 これはあかん、と思ったところで顔に布が被せられた。

「……とりあえず服、着たら?」
「あー……ありがと」

 俺の体操服を持ってきてくれたらしい庚にお礼を言いながら、俺はドロドロになったジャージに袖を通そうとした。
 しかし上手く腕が入らない。もたもたしていると、見かねた庚が服を着させてくれた。

「全員相手にするとか、馬鹿じゃねえの」
「こんなアホども用意するお前も十分バカやろ」
「……泣きついたら許してやろうと思ったのに」
「身に覚えがないもん謝りようがないやろが」

 軽口を叩きながらようやく服を着て落ち着いてきた俺は辺りを見回す。男がひい、ふう、みい……十六人か。二年以上喧嘩してなかった割には結構頑張ったな、俺。

「庚、携帯持ってる?貸して」
「いいけど」

 俺があまりにも普通でいるものだから、庚もどうしていいのか分からないのだろう。
 ふてくされた顔を見せながらも素直に携帯を差し出してくれたことに感謝しながら俺は時間を確認する。
 午後の協議が始まるまであと十分もないな。
 俺はアドレス帳を開くと、風紀委員長の文字を見つけて通話をかけた。

「もしもし、委員長ですか。西崎です。二階の特別教室に数名連れて来ていただいてよろしいでしょうか。ああ、いえ。多分第二会議室です。争った跡がありまして、怪我をしている生徒の保護を頼みたいのです。はい、私?私は関係ありませんよ。ええ、全く関係ありません。それではよろしくお願いしますね」

 三亜が何か言っているが伝えたいことは伝えたので俺は問答無用で通話を切る。庚の手配で周囲に人がいないということは、急いできても三分弱はあるだろう。捕まる前に退散するか。

「ほな行くで」
「どこに」
「合羽のとこや。トイレにしては戻ってくるの遅いし、今あいつを一人にすると生徒が何するか分からへん。お前がどっかに匿ってるんやろ」

 そう言うと、庚はため息をついて隣の教室を指さした。
 マジでか。

「……嘘やろ」
「お前の泣き声でも聞かせてやろうと思ったんだよ」
「うわっ、趣味わるっ!キモ!」
「キモとか言うな!」
「それより庚、お前喋り方全然ちゃうけど」
「もういいよ、んなこと」

 だんだん話すのが疲れてきたのかおざなりになってくる返事を聞いて、俺は内心喜んでいた。
 これが庚の素なら、こっちの方が好感が持てる。
 方言男子ではなかったが、こいつもこいつで素を隠していたようだ。
 どいつもこいつも高校生の癖に自分を隠しすぎやろ。人のこと言えんけど。
 そのまま俺たちはそそくさとその場を退散すると、隣の教室に入って鍵を閉める。少しして足音が聞こえたので風紀委員が駆け付けたのだろう。「一星はいるか!?」と叫ぶ三亜の声を聞きながら、俺たちは教室の隅で蹲っている合羽に近付いて唇に人差し指を当てた。

「静かにな。風紀に見つかったらややこしなる」
「い、っせ」

 合羽は一人でずっと怖かったのか泣きじゃくっていて、それを見た庚も自分がしたことが合羽の望んでいたことではないと気付いたようだ。

「あんまり声、聞こえなくて。で、でも怒鳴り声、とか、大きな音聞こえて、俺、怖くて」
「ごめん、李九。こんなつもりじゃなかった、ごめん」
「悪いけど謝罪タイムとかは後でな。風紀に捕まるの嫌やから今からここ開けてダッシュで逃げるけど走れるか?」

 頷く合羽は問題なさそうだ。庚も足は怪我していないらしいし、問題は俺か。風紀委員はどうにかなりそうだが、三亜は本気で追いかけてきそうなので逃げ切れる自信がない。
 俺はもう一度庚から携帯を借りると「視聴覚室で襲われている助けて」とメールを送ってみた。
 こんなバレバレの方法で誤魔化せるか不安だったが、数秒後扉を勢い良く開けて走り去っていく音が聞こえたので騙されてくれたようだ。アホで良かった。

「よっしゃ、じゃあ行くで」

 怪我人を運んでいるらしい風紀委員の会話を聞きながら、今ならすぐ追いかけることが出来る奴はいないと踏んで俺たちは扉を開けると先ほどいた教室とは反対方向に勢いよく走り抜けた。
 気付いた風紀委員が制止の声をあげるが待つわけがないだろう。そのまま足を止めることなく、俺たちは無事に生徒会の皆がいるテントに辿り着いた。


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(C)siwasu 2012.03.21


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