「お前、気に入ったぜ。俺のもんになれよ」 (…何でこんなことなっとんねん) 俺、西崎一星(にしざき いっせい)は頭を抱えて溜め息をついた。目の前には何でか嬉しそうに目を細める会長。…頭吹っ飛んでまえ。 俺は関西にある極道一家の長男のおかげで子供の頃から虐められ続け、中学の頃にはすっかりグレていた。流石に親バカな両親もそんな俺には手を焼いてたらしい。 しかしそんな俺を更生したのが今の彼女、柊十瑠(ひいらぎ とおる)だった。十瑠にベタ惚れだった俺は 「今時ヤンキーとか古ない?生真面目美人の方が萌えるし」 と言う好きな人の期待に応えるべく更正し、結果彼氏として認めてもらえた。 が、その頃には高校から関東の全寮制男子校に通うことが決まっており(どうやら俺がグレていた時に話が決まったそうだ)勿論ごねたのは言うまでもない。 しかし宥める為に両親に呼び出された十瑠は 「ええやん、萌えるやん」 と大賛成。両親もそれに乗っかる始末。 そんなん長期の休みしか十瑠と会われへんやん、とか文句言おうとしたら 「今スカイプあるし。行けそうやったらうちもそっち遊びに行ったるし」 の一言で撃沈。十瑠の言葉には弱いからなぁ…。 そんな訳で俺は一人寂しく関東の男子校に。 …来たものの、入学式早々女みたいな可愛い先輩に襲われた。あかんやろ。…いや、あかんやろ。 校舎裏まで引っ張られた時は喧嘩か何かかと思ったら、急に乗っかってくるし。おまけに俺のチンコ舐めてくるし。流石に自分のケツの穴弄りだした先輩見て我に返ったからその隙にダッシュで逃げたけども! 初日からこんな目に合った俺は怖なって、悩みつつも「3度の飯よりホモが好き」らしい十瑠に相談したら(ヤる寸前やったとは流石に言わんかったけど) 「いや、あんた顔ええんやから当たり前やん」 ときた。そっから毎日聞かれるまま学校の内情を報告してたら 「おっしゃ!キたでこれ!!」 と、3日目ぐらいでJRAのおっさんみたいな歓声を上げ始めた十瑠。 詳しく教えてもらったらこの学校は「王道」らしくて、金持ちとホモがいっぱい生息しとるらしい。何やそれ。 それからこの学校で生きてく為の処世術を教えてもろて「標準語の真面目で冷たい男」を演じてたらいつの間にか副会長に選ばれてた。言った時の十瑠の反応?んなもんお前等分かるやろ。 そっからはひたすら隠して隠して、我慢出来ひん時は十瑠に泣きついて過ごした一年。学校にも今の俺にも慣れてきてあと2年ぐらい全然余裕やし、とか思っとったら5月に季節外れの転入生がきた。 俺は会長に言われて仕方なく転入生を迎えに行ったら、校門の前に突っ立ってるボサボサの髪で厚底メガネの見た目した変な男は 「俺は戎李九(えびす りく)いうねん!お前は何て名前なんや?あとその笑顔めっちゃ気持ち悪いで?」 と、明らかなエセ関西弁で人を馬鹿にしてきた。思いっきり殴りつけたい気持ちを我慢して理事長室に押し込んだ俺、偉い。生徒会の奴等に感想聞かれたけどあんなん思い出したくもないわ! …とか思ってたのは俺だけやったらしい。関西弁が珍しいんか見た目が面白いんか知らんけどキュウリにホイホイされてくアホ集団。俺以外の生徒会含む。 しかも生徒会の奴等に至ってはキュウリに付きっきりで仕事放棄。 なんなんあいつ等ほんまのアホなん?とか思ったけど、俺責任感強い方やし、親から「やることはやれよ」って言われて育ったし、あと生徒会やったら学食タダやし(それに一番食いついたんはおかんやったけど)仕方ないから一人であいつ等の仕事全部やってた。ムカつくけど! そんな感じで、俺はスカイプで励ましてくれる十瑠にも感謝しつつ毎日頑張ってた。 …ら、何でか風紀委員長の皇三亜(すめらぎ みあ)先輩に気に入られた。多分。だって油断しとったら毎回会う度にチューされるし。 溜まった仕事片付けてるせいで寝不足な為毎回それを防がれへん俺は、さっきも悲しくチュー攻撃を受けてたら今日に限って何故か俺からしろとか言われて…あかん、思い出しただけでも腹立つ。 委員長がいなくなってから、俺はもう我慢出来ひんと思った。悔しいけど辞めよ、あいつ等にここまでする義理ないし。なんて思ってたら、クローゼットから生徒会長の皇二亜(すめらぎ にあ)がジャジャンと登場。なんでやねん。 ちなみに会長は委員長の弟。見た目はあんま似てないけど偉そうな所だけはそっくりとか全然嬉しないし。 そんな突然現れた会長に俺がビックリしとったら、以下冒頭に戻る。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |