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「お前、いい加減に…っ」
「最後までヤらねぇよ、でも一緒にいてくれって言うまでは続ける」
「それ最後までヤる言うてるようなもんやんけ!…っぅ」

 やんわりと乳首を撫でられて腰がむず痒い。さっきまでヤり倒して身体は限界だというのに、感覚は今も俺の中で燻っている。薬の効果はもう切れてるはずだがまたじわじわと熱がこもってきた。

「いや、や、ほんまにあかんって。だ、大体俺と一緒にお前も休んだら生徒会の業務が滞るし余計に目立って変な噂立つやろ!」
「生徒会は2〜3日ぐらいあの3人でなんとかなるだろ。それに俺がこの顔で登校したら余計目立って休んでるお前に根も葉もない噂が立つと思うけどな」
「ぐ、ぐうぅぅぅぅぅ」

 しまった、勢いのまま顔面殴ったけど見えない場所にしておくべきだった。確かに天下の生徒会長が顔腫らして登校すれば一大事だし、そこへタイミング良く休んでる俺がいれば疑いをかけられる可能性だってある。いや、疑いも何もこいつの顔こんなんにしたん俺やけど。
 そうなれば二亜の顔面と身体だけを愛していることで有名なこいつの親衛隊長が黙っている筈がない。アレに目をつけられたらどんな目に合うかは前に郡から聞いたことがある。その内容を思い出してゾッとしながら二亜を見上げると偉そうな笑みを浮かべて首を傾げた。

「な?俺の顔が戻って、お前の肩もある程度動けるようになるまでは一緒にいた方がいいだろ」
「いや、一緒にいる理由には…」
「明日学校中にこの顔はお前にやられたんだって言いふらしてやろうか」
「脅迫すんなや!大体それは自業自得やろ!!」

 服の中の手を引っ張り出して睨みつければ二亜が首を傾げる。あかん、やっぱりこいつは反省してない。ため息をつけば、話は終わったと思ったのか空いた方の手で腰を抱き寄せて来た。

「言っただろ。俺はお前が好きだ。遊びでも冗談でもねぇ。だからお前がちょっとでも俺に気を許してるってなら、いくらでもつけあがらせてもらうぜ」
「う…っ」

 急にそんな真面目な顔で迫ってくるのはズルい。今までだって好きだとか俺のものになれだとか言われてきたが所詮軽口のようなもので、俺も真面目に相手にしてこなかった。だから急にそんな真っ直ぐに好意をぶつけられると茶化すこともあしらうことも出来ない。俺はよく分からない悔しさを感じて唇を噛み締めながら俯いた。

「お前の肩が治るまで手は出さないって約束する。だからせめて悪化した分の責任は取らせてくれよ」
「…もう出してるやんけ」
「じゃれただけだ」

 ダメだ、これ以上断る言葉が思いつかない。確かに抵抗を重ねた上にガツガツヤりまくったせいで肩は勿論体も悲鳴をあげている。手を出さないという言葉を信じていいのなら、こいつに甘えてもいいのかもしれない。

「あかん、絆されてる気しかせぇへん」
「……お前って一回ヤった女好きになるタイプだろ」
「うっさい」

 否定は出来ない。十瑠は一目惚れだったが、それまでの彼女は確かに体から始まった関係が多い。

「もう日付こえてるな。今なら誰も廊下いねぇだろ、ちょっと荷物取りに部屋戻るからお前はあいつらに俺らが2〜3日休むって早めに連絡入れとけ」
「何で俺が」
「指ぐらいは動くだろ」

 いや、俺とお前が休む理由絶対聞かれるやん。さり気に言い訳考える役押し付けとるやろ。
 恨みがましく半目で見ていると、二亜は俺を見ることなくそそくさと部屋を出て行った。あ、こいつほんまに押し付ける気や。
 ようやく一人になった部屋で、俺はソファーにうつ伏せで寝転がりながら怪我をしていない方の手で頭を抱えた。
 今まで守り続けてきた貞操を奪われたってのに告白されて揺らぐ自分が嫌になる。いやいや、俺は十瑠一筋やし。一番好きなのは十瑠やし。
 言い聞かせる必要もないぐらい十瑠への気持ちは変わらない。変わらないのに二亜のことも強姦されて許せないけど嫌いになれないぐらいには好意を抱いているのが分からない。
 どっちが好きかと聞かれたら勿論十瑠だ。じゃあ二亜をきっぱりはっきり振れるのかと考えたら、以前はそうだと答えられた気持ちが傾いている。

「あかん、これはあかん…」

 気を強く持て、俺。そんなどっちつかずの中途半端な反応で二亜を困らせるわけには…いや、あいつは困らせてもええ。
 でも十瑠に申し訳が立たない。いくら向こうが構わないと言っても誠実じゃない。

「男を見せろ一星」

 例え拒絶しても本気になった二亜は諦めそうにない。こうなったら面倒見てもらってる間冷たい態度でも取って諦めてもらおう。
 そう固く決意して俺は横に置いていた携帯に手を伸ばすと、生徒会メンバーのグループメールに「風邪ひいたから悪いけど治るまで休む。業務はヤバいやつだけ頼むわ。会長もいぼ痔で座られへんから2日ぐらい休むらしい。恥ずかしいから代わりに伝えとけって言われた」と送っておいた。グループメールなので今頃二亜のところにも通知が届いている頃だろう。
 双子からは起きていたのかすぐ「いぼ痔wwwオッケー」と絵文字付きで返信がきた。今気付いたけどそういえばこれ、庚にも届くやん。
 俺への襲撃が未遂で終わったことはもう知られているだろう。今頃隠蔽に必死になっているか、一層開き直っているか。
 どっちにしろ肩が治ればぶん殴りに行く予定なのでどっちでもいい。
 玄関のドアが乱暴に開けられ、近付いてくる怒りを滲ませた足音を聞きながら俺はソファーに突っ伏して寝たフリを決め込んだ。


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(C)siwasu 2012.03.21


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