08


『いや、そういうわけちゃうけど。別にうち、そういう刹那的な恋愛の意味で一星と付き合ったわけちゃうからさぁ』
「え、じゃあどういう意味なん」

 恋愛以外の意図で付き合う理由ってあるんか?
 相変わらず十瑠の言う話は半分も分からん。首をかしげると、十瑠は頬をかきながら珍しく照れ臭そうな表情を浮かべて視線を泳がせた。

『ほら、一星って最初、結婚してくれって言ったやん?で、うちが突然無理って言うたらじゃあ付き合うとこからはじめて最後は結婚してくれって言ったやん』
「おう、もう十瑠は俺ん中で墓まで一緒やと思てるからな」
『いや、だからうちも一応同じつもりでおるっていうか…』

 そう言って顔を伏せた十瑠に、俺は目を輝かせてパソコンに飛びつこうとしたが画面を塞ぐように二亜がドアップで迫ってくる。
 そして機嫌の悪さをこれっぽっちも隠そうとしないでため息をつくと、頬を両手で隠して恥じらう乙女のような仕草を見せる十瑠を半眼で見つめた。

「で、本音は」
『ヤクザには嫁ぎたくないけどカイチョーさんと養子縁組した後結婚するならアリかなって。大企業に玉の輿な上死ぬまで間近で萌えを堪能出来る上に男と付き合ってる負い目から自由な生活させてくれたらラッキー』
「…………なあ、お前って俺のこと好きなん?ほんまに好きなん??」

 思わず涙が出そうになるが、まだ耳が赤い十瑠を見ていると照れ隠しなのは分かる。最初にアタックした時からヤクザは嫌だと何度も言われ続けていたので、確かに俺がこいつとくっついて家族になれば俺たちの障害はなくなるわけで……。

「って違ううぅぅぅぅ!!!言いくるめられそうになってる自分が嫌!!」
「お前ら関西人ってコントしないと死ぬ呪いでもかけられてんのか?」

 そう言って呆れた顔を見せる二亜に俺と十瑠揃って「「そうかもしれん」」と返すと噴き出すように笑われた。悪かったな、別に関西人全員こうってわけちゃうねんぞ。

「俺としては正直お前らの都合はどうでもいいんだよ、一星が俺のモンになるならな」
「俺は十瑠のもんやっつーに」
『じゃあ私が一星のもんになって一星がカイチョーさんのものになればええんちゃうの?』
「なぁ十瑠、頼むから話ややこしくせんといてくれ」

 一向に話が進まない会話に頭を抱える。いや、そもそもこれは何の話をしてたんだ?
 訳が分からなくなってきて首を傾げていると、二亜が大きくため息を吐いて十瑠が映る画面を睨みつけた。

「お前の彼氏にやや強引に手を出したことは謝る。名前を勘違いしたことも謝る」
「いや、まず俺に謝って?」

 まだ謝罪を聞いてないんですけど。そう言って半眼を向けるが、二亜は俺を一瞥もせず、黙っていろと言わんばかりに手で制すると蹙めた眉をより一層険しくさせた。

「そもそもお前、なんで俺とこいつをくっつけたがるんだよ。いくら男同士の恋愛が好きって言っても普通彼氏取られるのは嫌だろ」
『いや、あげる気は全くないから。一星はうちのやから。それを前提として一星には素敵な恋愛して欲しいって思ってるだけやで』
「……分かんねぇ…こいつの言ってることマジで分かんねぇ……」
「その気持ちめっちゃ分かる」

 頭を抑えた二亜に仲間意識を感じて優しい目を向けてると、十瑠は二亜を指差してぐっと画面に顔を近づけてくる。

『ていうかさ!』
「な、なんだよ」
『カイチョーさんこそどうなん?一星のこと、面白い奴やから構ってるだけでヤれたらもういいとかそうゆうこと考えてるんちゃうの?遊びなら今すぐそっち行ってその顔面誰も相手にしなくなるぐらいしばき倒すけど』

 その言葉にグッと二亜が口を結ぶ。俺も同じこと考えていただけに答えが聞きたくて身を一星と画面の十瑠の方に近付けた。
 これで飽きてくれたら楽っちゃ楽とはいえ、ヤり逃げされるのはプライド的に許せない。もし一発ヤりたかっただけなんて答えたら俺の処女奪った分の対価をその身体に支払ってもらうからな。
 そう決意しながら沈黙を続ける背中を見守ってると、二亜が急に振り返ってきて俺を真っ直ぐ見つめてきた。

「…遊びなんかじゃねぇよ」

 低い声音に思わず唾を飲む。俺の表情で気付いたのだろう、全て分かったような顔を見せる十瑠がにやけ顔を隠さないまま後ろから口を出す。

『やったら?』
「好きだよ……ああ、好きだ。つか、今日マジのガチで好きだって気付いた。一星に何かあったって知って頭真っ白になったし、焦ったし、本気で好きだって気付いてからは彼女いることに嫉妬したし、でも勝てるわけねぇから失恋したって思った」
「ちょ、二亜っ」

 言いながら真剣な眼差しを見せる二亜が徐々に近付いてくる。思わずガードするように両手を前に出すが、掴まれて引き寄せられてしまった。

「勝手に勘違いして頭に血が上ったからって無理矢理ヤって悪かった。でもな、それで確信した。俺は絶対一星を諦めねぇ」
「っ」

 ど直球な告白に耐えられず目を逸らす。いやいやいや、何で照れとんの俺。


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(C)siwasu 2012.03.21


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