扉の前ではコンドーム片手に無表情の二亜、ベッドの上ではケツに指を突っ込んで固まっている俺。最悪の状況だ。 「何止まってんだ、続けろよ」 指を引き抜こうとした俺に、二亜が冷たく言い放つ。いやいや、この状況で続けるとかどんな強者やねん。 『一星?どおしたん?』 「悪いけどまたかけなおすわ」 近付いてくる二亜に警戒しながら、急いで電話を切る。切る寸前十瑠が何か言っていたが、俺はそれよりもベッドに乗り上げる二亜を蹴り飛ばす準備に忙しかった。 「続けろって言ってんだろ」 「アホかッ、萎えまくってそんな気起きんわ!ていうかなんでおんねん、郡と帰ったんちゃうんか!!」 「お前のこれ、俺のポケットに入れっぱなしだったから一応返しておこうと思ったんだけどよ、よく考えればなんでこんなもん持ってんだよ。男に興味ないんじゃなかったのか?」 「親衛隊や親衛隊!」 そういえばコンドームの存在を完全に忘れていた。郡の気配が無いということは先に外で待っているか帰ったか。いや、待っていてくれ。オートロックなので一度部屋を出てしまえば中には入ってこれないが、大声を出せば助けぐらい呼んでくれると信じたい。……信じたい。 とりあえず情けない格好をどうにかしようと俺は慌ててズボンに手をかけるが、無理に動かしたせいか左肩に痛みが走って思わず眉が寄り、その隙に二亜が下着ごと脱がせて遠くに放り投げた。俺は頭に血が上って思わず怒鳴ろうと口を開いたが、今までにない怒りを見せる二亜と視線が合ってそのまま固まってしまう。 「な、なに――」 「お前がんな糞つまんねえ嘘で誤魔化す奴だとは思わなかったぜ」 「……は?」 「何が『彼女』だ、男じゃねえか」 「え?」 「しらばっくれんなよ、最初から彼氏がいるならそう言えばいいじゃねえか」 そう言いながら俺の腕を取ってベッドに押し倒す二亜に、いつもなら迷わず股間を蹴り上げる俺も一体何の話なのか分からず頭上に疑問符を浮かべて首を傾げる。 「名前呼んでケツ弄ってるところ見られてもまだそんな顔出来んのかよ」 「い、いや、う、それは――」 ケツでオナってる姿は出来れば今すぐ忘れて欲しい、と言うか物理的にこいつの記憶から消し去りたい。 「経験ないです、なんて顔しときながらしっかり開発済みなんじゃねえか、そんなに『トオル』のチンコが恋しいのかよ」 「は、はぁっ!?」 十瑠にチンコとかお前、人の彼女を侮辱するにも程があんぞ! 俺は一方的に怒りをぶつけてくる二亜に反論しようと口を開いたが、それよりも先に唇で塞がれて思わず息が詰まる。 「ん、ぐぅっ」 舌を入れられたのですぐに噛んで抵抗を示したが、二亜は止まることなく人の腔内に侵入してくる。 う、うげえっ、血の味がする…っ。 「ん、う、うむぅぅ…っ」 必死に身体を押し返すが左肩に力が入らず上手くいかない。ていうか、前にされた時もそうやったけどこいつのキスは激しくてしつこいから駄目だ。口内でこいつの舌が触れてない所はないんじゃないかってぐらい舐め尽くされる。ついでに血の味が充満する。 まだ熱の燻る身体にはあまりにも毒で、萎えた下半身も元気に――って頼むからやめてくれ! 「む、ぐぅぅぅ…!」 首を振れば顎を掴まれる。代わりに空いた手で押し返したり殴ったりするが力が入らず全く効かない。身体がこの熱を受け入れる前にどうにかしなければと俺は必死に足をばたつかせていたが、浮いた右足を二亜に掴まれてしまう。 「っ」 唇が離れて見えるようになった二亜の表情は相変わらず冷たい。そういえば俺が副会長として演技していた時はいつもこんな人を見下したような、冷めた視線を向けてきてたな。最近ずっと甘えてくる姿ばっかりやったから忘れてた。 そんなことを考えながら燻った熱に浮かされていると、足を持ち上げられて反対の手でケツの穴を――って、 「あか……っ!!」 ん、まで言い切る前に侵入してきた指は、今まで十瑠に突っ込まれてきた道具よりも生々しさがあって俺は息を飲んでシーツを握りしめた。 「なに初心な反応示してんだよ、中はしっかり締め付けてんじゃねーか」 と、十瑠にも指突っ込まれたことないのに…。半泣きになりながら身体を震わせていると、二亜が馬鹿にするような笑みを浮かべて見下してくる。その視線に俺は頭に血が上って右手を振り上げるとそのまま二亜の頬に拳を叩きつけた。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |