05


 ようやくアリバイ作り(被害者役の子がレイプ魔達のスマートフォンで襲われている最中のような写真を自撮りしているのが変に手馴れてて微妙な顔になった)や辻褄合わせの打ち合わせも済んだところで、俺は何故か困ったようにお互いを見合わせる親衛隊に首を傾げた。

「どうかしましたか?」

 時刻は襲われてから一時間近くたったのだろうか。
 そういえばそろそろ生徒会の方にも連絡を入れないと、今頃帰って来ないことに心配しているだろうとスマートフォンを取り出したところで一人の親衛隊がそれを制した。

「あ、あの、実は……郡様、いい加減起きて貴方から言ってくださいよっ」
「う、ううん……お、お前ら、人を縛っといて言いにくいことは人に押し付ける気か…」
「それが親衛隊長の仕事みたいなものでしょう」
「早く乗り込まれる前に伝えて下さいよ」

 俺を置いて話し始める親衛隊たちの会話が理解できず余計に傾げた首を下に落とす。
 郡が言い辛そうに口をもごもごと動かして、ようやく諦めたように大きく息を落とした。

「実は、ここに向かう途中です――」
「遅ぇぞ!一星は一体どうなってんだ!!」

 郡の言葉と同時に開いた扉から現れた二亜に、俺は全てを察して現実逃避をすべく縛られて転がっている郡の顔面を踏んづけた。

「どういうことですか」
「ぼぶはばびもばぶくあびばぜび」
「日本語を話してください」

 まぁ俺が踏んでるから話されへんねんけども。
 入口で俺の無事を確認するなり安堵の息を付きながら視線を外して欲望に耐えている二亜を半眼で見ながら、一番知られたくない奴に見つかったと落胆のため息を吐く。

「この通り無事ですので」
「皇会長、あまり騒がれては周囲に気付かれてしまいますのでもう暫く、もう暫くお待ちを」

 俺の親衛隊に宥められて、二亜は何か言いたそうにしながらももう一度俺を見て大きな息を吐くと、素直に従って背中を向けると扉を閉めた。

「と、いうわけでして」
「こういった事態を避けるのが親衛隊長の仕事ではないのですか?」
「痛い!頬を抉るように踏みつけるその角度が痛い!けど紅潮した西崎様に冷たい視線を向けられながら踏まれるとまるでSMごっこしてるみたいで美味しい!!」

 こいつには何をしても喜ばれるのでいい加減何もしない方が堪えるのではないだろうか。
 何とか副会長というキャラクターを演じることでギリギリの理性を保っているが、こいつのせいで余計疲れてきた。
 俺の苦労を察した親衛隊から受け取った水を飲んで頭を冷やしながら、下で悶えている郡よりは話の通じる親衛隊に事情を聞く。

「その、西崎様が視聴覚室で三十分近く動かないことを確認した柊様が隊長にご連絡して我々もすぐに動いたのですが、同じく『十五分以上経っても帰って来ない』という理由で西崎様を探しておられた皇会長に出会ってしまい……」
「成る程、隊長含むこの人数の親衛隊がただならぬ空気で移動していれば、流石にあの馬鹿も気付くでしょうね」
「申し訳ありません」
「いえ、貴方は悪くありませんよ。悪いのは足元で往生際悪く生きている虫の方ですから」
「虫!?西崎様にとって僕は虫なんですか!?」

 大袈裟に悲しそうな表情を見せる郡には大きなため息を一つ、落としてやる。
 とはいえ、先に二亜を入室させずに郡が一人で乗り込んできたのは正しい。俺の本性を他の親衛隊に知られることも防げるし、もしまだヤられいている最中であっても二亜と違い騒ぎにならない程度に助けてくれたはずだ。
 こう見えてこいつのブレザーの中は犯罪すれすれの道具がアホみたいに入ってるからな。それが全部腐男子ライフに必要なものだと喚いているが、いつか風紀にバレて連行される未来の想像は容易い。

「分かりました、これ以上はここに長居する必要もないでしょう。私は郡くんと一度寮に向かいますので、後はよろしくお願いします」
「任せてください!」
「西崎様、お大事に!」

 背筋を伸ばし頭を下げる親衛隊の一人一人に俺は感謝の意味も込めて頭を撫でていく。
 何故か一人にコンドームを渡されて首を傾げたが、後で体を処理する時に使えということだろうか。確かに手やティッシュに出すよりはいいかもしれないが。おそらく気遣いによるものだろうと判断して、素直にありがとうと言うとブレザーのポケットの中に適当に仕舞いこむ。


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(C)siwasu 2012.03.21


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