「え、会長…今なんて?」 「会長が大嫌いな副会長の名前、呼び捨てにしてた気が…」 「なっ、何するんだよ二亜…!」 「だから、これは俺の」 「いつから私は貴方のものになったのですか」 こいつは最初の約束を忘れたのだろうか。すっかり当然のように公衆の前でも名前を呼び捨てされることには慣れたが、この面子の前で出すのは初めてらしい。驚いた5人が目を丸くさせていた。 「え、え…どういうこと?」 「おい、六実七実」 「「え?」」 今だ動揺が冷めぬ状況で、二亜が双子書記の名前を呼んだ。声色から察するに、悪戯っ子のような表情が伺える。 「理由、教えて欲しかったら生徒会に戻ってこい」 「「うん戻るー!」」 早いなおい! そういえば会長を筆頭に、この3人組は3度の飯より面白いことが大好きな悪戯トリオなんだった。昔の生徒会での関係を思い出して治りかけていた頭痛がする。元々個々を当てられたこともそうだが、会長に乗ってカッパ巻きについた二人は早々に会長側についた。 それを絶望した表情で見つめるのはカッパ巻きだ。 「六実七実!なんでやねん!」 「ごめんねー何かこっちの方が面白いって」 「会長が言うからー」 そうこちら側に近寄った二人は満面の笑みでカッパ巻きを見つめる。哀れ、キュウリ。 「おっ、お前らなんか嫌いだ―!」 「あっ、李九!」 「待って…っ」 目を潤ませながら関西弁を忘れて走り去るカッパ巻きに、気付かないのか慌てて追いかける会計二人。 ようやく元の静けさを取り戻した生徒会室で、俺は安堵の溜息をついた。 「どうだ?俺のヒーローっぷり」 「アホちゃうか、死ね」 「そこは『ありがとうございます二亜様、どうか俺と付き合ってください』だろ?」 「寝言は寝てから言え、仮性包茎」 ドヤ顔で俺を見つめる二亜に半眼を向けてから、そういえばと二亜の後ろに隠れて様子を伺っていた二人組に視線を下した。何故か凄く目を輝かせている。 「な、やっぱ本物の方が面白ぇだろ?」 「「うん!」」 「おい待てコラ。お前こいつ等に言うたんか」 約束はどうした。と怒りを抑え込みながら声を震わせれば、「どうせお前ここでは素なんだしバレるだろ。ちゃんと戻ってきたからいーじゃねーか」と返されて確かにその通りなので黙っておいた。 次いで警戒心が解けたのか、俺に近寄って両の裾を引っ張る二人に「「もっと喋って!」」と強請られる。演じていた頃はあんなに俺と距離を取ってたくせに…と呆れた視線を送れば、「「今の一星の方が好きだよ!」」と満面の笑顔を向けられたのが可愛いから許す。 「これからちゃんと仕事してなー?」 と、二人の頭を撫でれば元気のいい返事が返ってきた。成程。この双子は懐くとこんなにも可愛いのか。知らなかった。 「これでお前が俺のもんになるまであと3人どうにかすりゃいいんだろ」 「待て。誰もなるとは言ってへんから」 「「頑張ってね会長ー!」」 「任せろ、俺に不可能はない」 何故か外堀から埋められている気がするのは…気のせいだ、気のせいだと思いたい。 end. [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |