01


 逃げ続けて1か月。遂に……遂に逃げられない状況へと追い込まれてしまった。

「なぁ、一星。そんな俺のことが、嫌いなん?」

 下手過ぎる関西弁に思わず鳥肌が立つ。その当たり前のドヤ顔で話す変なイントネーションの関西弁が関西人は……っていうか俺は死ぬ程嫌いやねん!やめろ!

「別に嫌いだなんて思っていませんよ」

 言いながら近づいてくるマリモ頭に合わせて一歩後ろに下がる。が、邪魔な机にそれ以上下がれない状況に追い込まれた。ちなみに邪魔な机とは生徒会室のど真ん中に置いてある生徒会長様の豪華で広い机だ。こんな所で足引っ張るとかやっぱ二亜ホモ死ね。

「じゃあなんで俺と遊んでくれへんの?」
「…生徒会役員としての執務があるので」

 言いながら俺は転入生の戎李九(えびす りく)、もといカッパ巻きの後ろにいる生徒会のメンバーを一瞥した。嫌味のつもりで言ったのだが伝わっていないらしい。白々しい表情を見せる4人に内心舌打ちをしながら俺を見つめるカッパ巻きに視線を戻す。

「なんでそんなんせなあかんのん?皆おんなじ生徒やろ!お前らだけがそんな辛い思いする必要あらへんやん!」

 いや、やりたくてしてる訳やから。別に任命拒否とかも出来るし。
 とか言ってもこの馬鹿には通じないだろう。どうしたらいいものか…と悩んでいると、生徒会の扉が荒々しく開いた。そんな入室の仕方をするのは一人しかいない。舌打ちをしながら紙束を抱えて悪態つく二亜を室内の全員が食い入るように見つめていた。

「ったく、何だよあの態度は。一星は風紀にやらねーっての」
「二亜!」

 嬉しそうなカッパ巻きの声に反応して、気怠そうな動きで目線を室内に向けた二亜は、俺達の姿を捉えると暫く固まってから、

「あ?……………あぁ、」
「待て待て待て待て待てぇぇぇぇぇ!!!」

 そのまま踵を返したので思わず突っ込んでしまった。いや、この状況見たなら助けろや!
 そんな俺に驚いたのは生徒会メンバーとカッパ巻きである。視線を感じて思わず口を塞ぐ。しまった。最近二亜の前や生徒会室では素を出していたので、ついノリで突っ込んでしまった。

「副会長が大声出すなんてめずらしー」
「ね、槍でも降るのかな?」

 最初に反応したのは生徒会書記を務める椿六実(つばき むつみ)と椿七実(つばき ななみ)だ。双子のこいつらは明るく染めたピンクの髪色もさることながら顔のパーツから仕草癖までそっくりなドッペルゲンガーのような二人で、十瑠曰く「自分たちを見分けてくれる相手に過剰な好意を寄せる」らしい。確かにそれが理由でカッパ巻きに懐いたのは確かだが。

「な、やっぱり一星疲れてるんやって!もうこんなことやめて俺と遊ぼう?」

 そして一番俺に近かったカッパ巻きが最後の一歩を踏み出して俺とゼロ距離になると、袖を掴んで引っ張りながら媚びてきた。
 思わず気持ち悪さに振り払おうとするが、そんなことしてみろ。副会長が暴力を振るったなどと吹聴されて自分の立場が悪くなるだけだ。今この場にいるのは残念ながらカッパ巻き一派だけやし。

「なぁ、一星…!」

 そして遂にカッパ巻きが俺の腰にしがみついてきた時だった。勢いよく後方に押されて目を見開くと、目の前には不機嫌そうな二亜の顔。
 と、俺から引き剥がされた勢いで転んだのか床に腰を落としたカッパ巻き。

「俺の一星に軽々しく触ってんじゃねーよ」
「なっ、誰が…っ」

 いつもの調子でカッパ巻きを牽制する二亜に、思わずまた大きな声が出そうになって焦って喉を締める。
 二亜の守るように出された腕の向こうで、生徒会メンバーとカッパ巻きが目を見開いて二亜を見つめていた。


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(C)siwasu 2012.03.21


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