02


「いえ!!!むしろ知って頂きありがとうございます!本当西崎様ったらガード固くって精々皇委員長のアプローチを見ることぐらいしか楽しみがないっていうか…あ!でも西崎様の気持ちを尊重したいので皇委員長を応援してる訳ではないですよ?ところで皇会長様の先程の発言の一部を聞く限りお二人の間に何か進展があったのではないかと僕今とても気になって鼻血が出そうなのですが!それに西崎様があんなに知られるのを嫌がっていた本来の性格や口調を知ってる上に下の名前で呼び合う関係とかあの西崎様が心を許しているとしか思えない…!あっ、ちょっと今脳の血管一個切れたかも。え?え?ちなみに皇会長はあのマリモのせいで心身ともに疲れた西崎様を見て心が揺らいだとかですか?マリモへの興味はもうなくされたのですか?一体僕の見てない生徒会室で何があったのですか?出来れば一部始終をこと細かに教えて頂き…って痛い!痛いです西崎様!僕ちょっとM入ってるんでそうやって足踏んで見下ろされるとゾクッとしちゃうんですからね!そう!そうですよ!西崎様の足が!僕の足に!なんて美味しいシチュエーション…!」
「おし、次はこの腐った脳みそを洗濯機で洗おか」
「西崎様!頭を全身全霊の力をもって掴むのは駄目です!か弱い僕の頭蓋骨がミシミシ悲鳴を上げてます!!!」

 …そおやった。こいつの興奮した時のマシンガントーク忘れとった。
 俺は郡の左足の甲に全体重を乗せつつ一層割れて欲しいと願いながら頭を掴む握力に力をこめる。
 痛みのせいかそろそろ無駄口を叩けなくなった所で、見兼ねた二亜に制止され渋々郡から離れた。

「で、こいつは結局何が言いたかったんだ?」
「俺に聞くなや…」

 久しぶりの頭痛に頭を抱えていると、復活した郡が俺の顔を伺いながらも口を開く。

「あの、不躾な質問その2をお願いしたいのですが、皇会長は西崎様に彼女がいることを御承知で…?」
「おう。まとめて面倒見るつもりだ」
「はうっ!包容力がある上に男前…!」
「おい待てやコラ。んな話一回も聞いとらんぞ。大体お前に面倒見てもらうなら南港の海にコンクリ縛って飛び込んだ方がマシや」

 後ろを睨みつけるが、二亜はそれに対し不思議そうな表情をしながらむしろ「何か悪いこと言ったか?」と聞き返してきた。
 あかん、話にならん。

「あの、皇会長。西崎様のこと、彼女も含め是非ともよろしくお願いします!!」
「何だお前話分かる奴じゃねーか。任せとけ」
「勝手に二人で話進めんな!!!」

 最悪や。最悪のタッグを組ませてもーた。
 二亜は自分の味方と知るや否やさっきまでの不機嫌さはどこへ行ったのか、満面の笑みで郡と握手している。
 俺は酷くなる頭痛に眉間の皺を寄せた。

「僕、西崎様にいいお相手が見付かればと常々思ってたんです」
「俺もう彼女おるんやけど」
「それとこれは話が別ですよ!…はっ!そういえばどっちが女役なんだろう…西崎様の場合どっちでも美味しいけど…」
「俺が上に決まってんだろ」
「決まってないわ!」
「なんてことですか…!…皇会長、是非初めての日は教えてください!いつか来るであろうこの日の為に練習を重ねに重ねてきた僕が腕によりをかけて赤飯を作り「隊長見つけましたよぉぉぉぉぉ!!!」ぐぇぼ…っっっ!!」

 はっきり言って一瞬のことだった。
 まくし立てる郡の後ろの廊下から曲がってきた生徒二人がその姿を捉えるや否や目にも留まらぬ速度で走ってくると、そのまま郡に突撃した。勿論小さい郡はそのまま前に倒れ込んだので俺は瞬時に避けたけど。
 俯せのままピクリとも動かない郡の背中で、突然現れた二人の生徒は何やら携帯を取り出すとどこかにかけ始めた。
 俺と二亜はと言うと現状についていけずそのまま呆然と立ち尽くしている。

「副隊長!郡隊長を確保しました!」
「はい、やはり西崎様の所にいました!」

 どうやらこの二人は俺の親衛隊らしい。
 電話を終えると俺に恥ずかしそうに頭を下げ「大変失礼致しました」と謝罪しながら郡の襟首を掴んで元来た道へ向かって引っ張って行く。

「離して!離してってば!僕は今西崎様と会長のカップリングを楽しんで…」
「隊長…会議中にマリモの話してて苛立ったからって逃げるのはよくありませんよ」
「副隊長が頭に角生やしながら待ってるので行きましょう」
「いやぁぁぁ!!!僕はまだ西崎様とお話するのぉぉぉぉぉ!!!!!離してぇぇぇぇぇ」

 暴れる郡に親衛隊は一切動じず、むしろ「一回気絶させた方がいいかな?」などと物騒な会話をしている。
 それを聞きながら郡は顔を青ざめさせて俺に助けを求めてきた。

「西崎様…助け…っ」
「副隊長が待っているのでしょう?残念ですがまたの機会にお話しましょう。…そんな機会二度と来て欲しくないですが」

 勿論お断りに決まっとるやろ。
 極上の笑顔で手を振ってやれば、裏切り者と叫びながら郡はそのまま二人の手によって視界から姿を消していった。
 親衛隊もなんであんな奴を隊長にしようと思ったんだ。
 ようやく廊下に平穏が訪れた頃、後ろで黙って様子を見ていた二亜がポツリと呟いた。

「…お前んとこの親衛隊長、面白ぇな」
「やったらお前んとこの親衛隊に預けてええか?」
「……………遠慮しとく」

 脳裏でその光景を浮かべたのだろう。苦虫を噛み潰したような表情で呟く二亜に、俺は溜め息をつくしかなかった。



end.


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(C)siwasu 2012.03.21


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