06


「アホちゃう?」
「んぐっ」
「本性バレてチューされて名前呼び?もうそれケツ掘られる5秒前やで。いや、むしろ今から掘られてこい」
「ちょっと待てぃっ!!」

 散々な言われ様に俺は半泣きでパソコンの画面に乗り出した。平面に映るキツイ目をした彼女は今日も今日とて絶好調のようである。

「そこは彼女として心配するとこちゃうの!?」
「いや、だって会長さんの希望は彼女じゃなくて彼氏なんやろ?あたし一星の彼氏には流石に…」
「お願いやから本気で困った顔せんといて!俺彼氏とかいらんから!!」

 俺の彼女である十瑠は普通の人とは少し変わった思考の持ち主だ。フジョシとか言う男性同士の恋愛が好きな性癖?趣味?を持っている。
 始めこそ些細な時に表れる言動に疑問符が浮かんだものの、今年の正月明けにカミングアウトされてからはこうして遠慮なく男性との恋愛を推奨されているという訳だ。
 いや、十瑠一筋だけれども。

「俺、十瑠以外好きになるつもりないから…っ!」
「そう言うけど一星って押しに弱いやん?あと懐に入れた人大事にする方やし?話聞く限り十分落とされる可能性あると思うんやけど」

 肩を竦めながら言う十瑠に、俺は一瞬言葉を詰らせる。

「それに一星って結構寂しがりやん?そやから会長さんに優しくされたらコロッといってまうかも…ええな、それ」
「良くないわ…っ」

 にんまりと笑う彼女に半泣きになりながら俺は相談する相手を間違えたと頭を抱えた。
 しかしこうやって素で話せる数少ない人間の中で、これでも十瑠が一番マシな方だ。

「まぁどっちにせよくっついた時は教えてな!」
「くっつきません!」

 今日はこれ以上話しても同じ応酬を繰り返すだけだと気付いた俺は、(多分フジョシとして)まだ話したりないのか文句の流れるPCの電源を早々に落とす。
 が、携帯に「明日覚えてろよ」とメールが来て背筋が凍った。明日は金曜なので、経験上これは確実に朝まで付き合わされるパターンだ。

「勘弁してやほんま…」

 今日既に何度言ったか分からない言葉に、俺は痛み出した胃を押さえつつ薬を飲んで早々に就寝につくことにした。
 しかしこれからのことは明日から考えればいいや、と思考を放棄した俺に言ってやりたい。
 もっと良く考えろと。


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(C)siwasu 2012.03.21


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