Act.03 和真(かずま)は俺のものなんだから、誰かと二人きりで会うなんて過ごすなんて話すなんて、絶対許さない。 ■ スクリーンに死す (side 広貴) 見積り書の提出も終わり、秋人(あきと)と別れた俺はようやく自由な時間が手に入るとホッと一息ついた。ついでに貰ってきた外出届を片手に時計を見れば18時10分。うん、間に合いそうだ。 携帯を取り出し家に電話を繋げば、聞こえてくるのは無機質な声。俺もそれに合わせる様に淡々と車を寄越すよう要求した。 ようやく仮眠室に向かい扉を開ければ、ベッドに寝そべる和真の姿が見えた。なんて無防備な。 近付くと腕を抱きながら丸くなっている和真。虚ろな目と紅潮した頬が俺の予想通りで思わず笑みが漏れる。和真は俺の姿を目で捉えると少し怯えたように泳ぐが、すぐに気丈に振る舞うとゆっくり体を起こした。 「広貴(こうき)、見積り書、どうだった、んだ…?」 「ん、オッケー。通ったよ」 「あぁ、それなら、良かった」 俺の言葉にホッとしてまた体をベッドに預けようとする和真。俺がその腕を掴んでそのまま引っ張りあげれば、驚いたように目を丸くさせた。 「な、なに」 「なにって…行くんだよ」 「どこに」 「映画」 先ほどの会話がまさか本気だとは思っていなかったらしく、硬直したまま動かなくなった。俺はそれを見なかったことにして無理矢理立たせると彼を置いて部屋を出る。少し歩いて振り返れば、少しよろつきながら追いかけてくる姿が見えた。 「早くしてよ」 「ちょ、待っ、」 体が熱いせいか呼吸が荒い。それを放って先に入り口まで向かい門にいる警備員に外出届を渡し既に待機していた車に乗り込んで暫く待てば、追いついた彼は戸惑いの表情を隠せないまま車内の俺を見た。 「早く乗ってくれない?」 「…」 沈黙したままの和真にわざとらしく溜め息をつくと体がビクリと震えるのが見える。 「映画」 「?」 「チケット、今日までなんだ」 そう言ってポケットに忍ばせていた前売り券を見せると、揺らぐ目が諦めたように伏せられた。 「…それなら、もっと早く、言え」 「ん」 本当は、和真の他からの誘いを奪う為に用意したもの。使わなくてもよかったんだけど使わせたのは和真だよ? 車内の中で和真は辛そうに両足をもぞもぞと動かしていたが、それは無視してやった。狭い空間の中を無言のまま走る車は暫くして一番近い映画館のビルの前で止まる。まさかこの状態のまま行動するとは思っていなかったようだ。絡みそうになる足を引き摺っている姿は少し滑稽だった。 仕方がないので先に向かいチケットを渡して席番のチケットの方と引き換える。後から追いついた和真を待つとそのまま目的のシアターに入った。それにしても本当に遅い。 「一番後ろに、したのか…?」 「だって後ろに人いたら集中出来ないじゃん」 広貴らしいな、なんて微かに笑う姿に余裕を感じて俺は何だか癪に触った。ようやく数時間ゆっくり出来ることを安心しているのか、座ると大きく息を吐き出し鞄から眼鏡を取り出す。 そんな和真の姿に本当に薬が効いてるのか怪しく思った俺は、彼の内股に手を添えてみた。 「なっ…?」 案の定ビクついて逃げようとする和真。それでも目が欲に濡れていて、我慢しているのが分かる。 「薬、ちゃんと飲んだの?」 「あ…っ?…の、飲んだ」 「一錠?半錠とか言わないよね?」 目が一瞬、泳いだ。 それだけで彼の全てが分かるほど俺はその目をずっと見つめ続けている。立ち上がり、不思議に思っている和真を無視してシアターを出てドリンクを買いに行く。戻ってくると、意図を察したのか彼の顔は引きつっていた。 「はい」 何も言わずただドリンクと先程渡した薬をもう一度彼の手に置く。 「こ、広貴…」 「飲まなきゃ辞めるよ?」 嫌がっている彼の髪を強く引っ張って囁いた。あれ以来この言葉に弱い和真は怯えながらも震えた手でそれを飲む。俺はようやく満足感を覚えると、ちょうど映画がスタートするのか館内が暗くなった。平日のレイトということもあって俺たちの列に人がいないのをいいことに暗い中で和真の内股をさする。 「こ、うき、…っ」 小声で抗議を示すのを俺は無視して前を見れば、諦めたのか仕方なく前に集中したようだ。だが暫くすれば横で荒い息遣いが聞こえる。アクション映画なので声はかき消されるがそれでも和真の矯声は耳に入ってきた。必死で歯を食いしばっている姿に俺の中の優越感は満たされる。 スクリーンがエンドロールを流すまで、俺は彼のギリギリまで下半身を弄ぶことを止めなかった。 結局和真はずっと下を向いたまま映画を見ることはなかった。俺は終わるとすぐに立ち上がり、先に時間を指定して待つように指示していた車に乗り込むべく映画館を出た。後ろで呼ぶ声が聞こえるが無視。一度も振り返らず車に乗り込み入り口を見れば、和真はまだ来なかった。仕方がないので焦らず待つことにする。 和真が大雅(たいが)と笑ってるのを見た時、俺は何故か酷い苛立ちを感じた。俺が和真を手に入れて以来、和真は俺にほとんど笑いかけてくれない。あっても苦笑程度がせいぜいで、俺のものの筈なのに手中に収めた気がしなかった。言うことは聞くのに思う通りに動いてくれない。それに酷く苛立ってたまに暴力もふるった。それが大人気ないことだって知っているけどその時すらも和真は黙って受けてるから、悪循環の繰り返し。 「広貴、ごめ…」 ようやく和真が来た。最早思考が鈍っているのか、子供のように泣きそうな顔をしている。 そして車内に入ればもう我慢が出来なくなったのか、バックルを焦るように弄りだした。いくら俺の家の者とはいえ前に運転手がいるのに馬鹿じゃないの。いつもならプライドが高い彼の珍しい行動に、俺はそれを窘めるように股関を手のひらで押し潰す。 「あっ」 「人の車で何してんの?」 「た、たのむ、広貴、おねが…ッ」 耐えきれないように絞り出される声に興奮を感じて一層ここで犯してしまいたい気持ちになるけれどまだ我慢。 「こんなとこでするつもり?」 「それは…!」 切羽詰まってるのか必死で俺の手をひっかく和真。きつく爪痕をつけるので、痛くなってきた俺は和真の頭を握り拳で思いっきり殴ってやる。受け身を取れなかった彼はそのまま頭をフロントガラスにぶつけた。 「寮までぐらい我慢してよ」 そう言うと、和真はこぼれそうになる涙を必死にこらえながら膝の上でギュッと拳を握る。それを横目で見ながら、俺は車をいつもより早く走らせるよう指示した。 和真は寮に着くなり自分の部屋に俺を押し込んで、我慢が出来ないとばかりに玄関で押し倒してきた。乱暴な行為に苛立ったがすぐに上からのしかかる和真に唇を塞がれ、驚いた俺は一瞬動きを止める。 その間にも和真は俺の立てた膝に自分の股関を擦り付け、勝手に自慰行為を始めていた。 「んっく、は、あっ、」 積極的に舌を絡ませてくる和真。俺は珍しい行動に戸惑いを隠せないながらも興奮して、膝をグイグイと押し当ててやった。 「うあっ!あ、あ、ッ」 「和真ったらエロいなぁ…」 「い、ん、も…っ」 伏せられる目が扇情的だな、なんて思っていたら和真が欲を吐き出したのか少し震えて息を大きく吐きながら動かなくなる。 「はっは、は、」 「あっは!なに、服の中でイったの?」 染み出すズボンを見ると赤くなる顔。正気に戻ったのか慌てて身を起こすも、俺が腕を引っ張り体制を逆にしてやった。下で和真がもがくように肩を揺らす。 「たのむ、先、風呂…」 「は?勝手にイっといて何言ってんの?」 捻る体を押さえつけてバックルを外し、無理やりズボンを脱がすと和真の股関周りはベタベタに汚れていた。それを掬いながら後孔に指を伸ばす。ひくつくそこはまだ薬の効果があるのかすぐに飲み込んで、和真も拒絶は見られずただギュッと目をつぶって俺のシャツを握りしめてきた。 「なんだ、気持ちいいんじゃん」 「う、あ、あっ」 「はっ!男の癖に後ろ開発されて恥ずかしくないの?」 耳元で囁けば顔を赤くしてそれでもいや、とかやめて、なんて言葉が漏れないということは本人も望んでるのだろう。 「う、んぁっ、こーき、」 「なに」 「はや、はやく…っ」 和真は指だけで弄られているのがじれったいのか、手を伸ばして俺の手を掴んでくる。よっぽど欲しいのか欲に濡れた目が俺を捉えた。こんな和真の姿、初めて見る。 「そんながっつかなくてもいいじゃん」 「たのむ、おねがっ」 こぼれる涙は嗚咽を作って、その姿に余程辛いのが分かった。もがく姿はまるで芋虫みたい。 「じゃあさっさと足広げてよ」 そう言って指を引き抜くと、和真は困った顔をした。 「ほら、欲しいんでしょ?」 そう聞けば苦しそうに俯いた。俺は髪に隠れる目を見ようと手を伸ばすが、急にその手を掴んで和真が起き上がる。 「っ!」 その反動で倒れた俺に反し、立ち上がった和真はそのままズボンを引き上げ目の前の扉まで向かい逃げようとした。俺はすかさず横にあった和真の鞄を彼の頭に向けて投げつける。 「痛っ」 予想通り怯む和真をすぐに蹴り上げて床に倒した。そのまま全体重を和真の肺の上に乗せるよう座ると、苦しそうに呻く。 「あんた何やってんの」 「っつぁ…っ」 一発こめかみのとこを殴って髪を勢いよく引っ張った。目を見れば程良く濁った迷いだらけの色をしてる。本能が反発しあって最早自分でも何をしているのか分かってないのだろう。和真は惜しみなく涙を流す。 「ごめ…っごめっ広貴、たのむ、も、ゆるし…」 ズボンを下ろすと子供みたいに泣く姿からは想像もつかないぐらい勃っていた。アンバランスな光景に興奮しながら、和真の髪を引っ張ったまま立ち上がりそのままリビングまで引きずっていく。和真が叫びながら何か言ってるが無視。 「痛っ…広貴っ!広貴っ」 「…変態」 暴れる体を俯せにして腕を背中に回し縛り付ける。そして散々焦らされて苛々していた俺は、和真の下半身のもの全て脱がしてそのまま自分のものを突っ込んだ。 「いっ…!」 指で慣らしていたとはいえ、先程でまた緊張したのか固まってる。和真は痛いのだろう、体を仰け反らせるとすぐにまた床に倒れ動かなくなった。 とりあえず呼吸はしてるので腰を動かしてやる。和真の目を見たら虚ろだった。 「俺のものなのに勝手なことしちゃダメでしょ?黙って言うこと聞いてたら優しくしてあげるのに」 和真の髪を優しく撫でて言い聞かせるようにゆっくり話しながら、俺は満足するまで腰を動かし続ける。 返事はなかったが、乾いた頬にまた一筋の涙を零していた。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |