***** 朝日の眩しさに思わず眉が寄る。 俺はゆっくりと目を開いて、サイドテーブルにある時計を確認すると、もう一度目を閉じた。 まだ起床時間まで余裕がある。二度寝しても問題無いだろう。 「…………問題ある!」 俺は勢い良く体を起こして頭を覚醒させる。 ゴリラ、ゴリラはどこだ! 慌てて周りを見渡すが、ソファーで寝落ちたはずの体はベッドにいて、リビングを覗いてみてもゴリラの気配はない。 もしかして夢だったのだろうか? 首を傾げて、片付けられたテーブルの上に置いてあった携帯電話を手に取る。 確かに俺は、昨晩ゴリラに飯を食わせて一緒に寝てしまったはずだ。 しかし、考えてみればゴリラが自分の部屋に来て、飯を食って更には一緒に寝るなんて、あまりにも非現実的過ぎる。 実は寝ぼけた昨夜の俺が残り物を食べてしまい、そのまま片付けまでした可能性も……ゴリラのことは全て夢だったんじゃないか、いやそうに違いない。 「でもなんでゴリラの夢なんかみたんだろうな」 寝る前よりも綺麗に片付いている部屋や、ソファーに残った黒い毛も気のせいだと思いながら、携帯電話を開いて誰からも連絡が来ていないか確認する。 そういえば、朝の会議の集合場所を聞いていなかったことを思い出して、この時間なら既に起きていそうな副会長に連絡を取ろうとアドレス帳を開いた。 「か……く……」 名前が小林なのでこの辺りだと探しながら、見覚えのないアドレスに首を傾げる。 「誰だ、これ――ゴ、ゴリラ? ……いやまさか」 電話番号しか載っていない、ゴリラという名前で登録されたアドレスに、俺はまさか――と、携帯電話を持つ手が震えた。 ゴリラがアドレスを打ち込んだ……? いや、しかしそもそもゴリラって携帯電話を持っているのか? 様々な疑問と受け入れがたい現実に脳が混乱しつつ、俺はとりあえず見なかったふりをして、携帯電話をそっとテーブルの上に戻した。 うん。どうやらまだ夢の続きらしい。 寝て起きたらきっと現実に戻っているだろう。そう考えてカーテンを閉めると、ベッドに潜り直して瞼を下ろした。 二度寝って素晴らしい。 数時間後、朝の会議に来ない上、電話しても繋がらないと怒り狂った副会長が、鬼のようにインターフォンを鳴らすまで――俺は心地いい眠りをたっぷりと満喫していた。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |