「もういっかい」 その言葉と共に、腰を大きく揺らされる。短い抽送だが、重力で深く奥へと打ち付けられるせいで、前立腺を奥の方へ押すように刺激されて、陰茎が震えた。 「んあっ、ア、あ、ッ」 後ろに倒れそうになるので、佐藤の首に腕を回して必死に支える。体勢のせいか、さっきよりも結合部分が広げられて悲鳴があがる。 「アァッ! や、ああ、あっ」 佐藤の首筋に顔をうずめて、深い繋がりに響くような快感をやり過ごそうとするが、半勃ちの俺の陰茎に手が添えられて、背筋が粟立った。 上下に揺さぶられて、脳がまた思考をなくしていく。 「は、ん、んぅ」 自分で自分の状況がわからなくなってくる中、佐藤は陰茎に触れていた手をゆっくりと下げ、俺の睾丸を揉み込むように掴んできた。蟻の門渡りを指の腹で押しながら、睾丸を持ち上げるように愛撫する。 「あ、それっ、や……っ」 俺は、唐突に訪れた射精感に近い何かに身体を震わせた。 また知らない昂ぶりが身体を這いずり回って、ゾクゾクする。 「トコロテンって知ってる?」 佐藤が、俺の耳元で囁く。 「し、知らな……っ」 「だしてみよ?」 言いながら、前立腺の奥を突き上げられて、睾丸を押し出すように刺激された。快感を引きずり出されるような支配感に、背筋が粟立つ。 「や、いや、だ……ァ!」 逃げるように腰を引くが、あっさりと捕まって引き寄せられる。 徐々に迫ってくる、射精に近いがそれよりも深い感覚に、俺は溶かされる脳の中、死に物狂いで佐藤の首にしがみついた。睾丸がきゅっと縮み上がる。 「あ、ンっ、んぅ〜〜ッ!」 熱が弾けて、放たれる。射精とは少し違う、ドロリとした体液が二人の間を飛び散った。まだどぷどぷと溢れる亀頭は俯いていて、完全に勃起していない。 勃ってなくてもイけるのか。そんなことを放心した頭で考えていると、佐藤が勃起したままの陰茎を引き抜いた。 「んっ……」 ずるりと結合部から離れ、ようやく中は開放されたが、少し寂しさを感じてしまう。 俺は誤魔化すように、佐藤の膝からおりて声をかけようとしたが、顔を見る前に強引に肩を押されると、背中を向かされた。 「な、なに――」 そのまま背中を倒されて、嫌な予感がする。 「もういっかい」 聞こえてきた甘い声は予想通りで、俺は慌てて身体をひねった。 「きょ、今日はもういいだろう! 俺の身が持たな――っ」 しかし、佐藤は臀部に指を這わせると、まだ締まりきってない窪みに指を二本挿入した。急な異物感に背筋が震える。 「あうっ」 内壁をかき回されて、前立腺を刺激される。勢い良く差し入れて、ゆっくりと抜く瞬間快感に臀部が震えた。 けれど、さっきまで挿入っていたものより弱い刺激に、俺は物足りなさを感じて佐藤を振り返る。 優しい目が、首を傾げて俺を見た。 「入れていい?」 なんて男だ。 唇を戦慄かせて、噛みしめる。羞恥に涙が滲んだ。 「いいから、入れていいから……っ!」 絞り出すように吐いた言葉に、佐藤は満足したのか指を引き抜くと、勃起したままの陰茎を窪みに当てて、躊躇うことなく俺を貫く。 既に熱で燻っていた身体は難なくそれを受け入れ、悦びに内壁が収縮した。 「ア……っん!」 揺すぶられて、されるがままに腰が動く。必死でシーツを掴めば、残っている理性を奪うように、激しく抽送が繰り返された。 「は、あ、ア、ああっ」 今までの中で一番深い挿入に、奥を突かれるたび女のような嬌声が何度も上がる。あれは、気持ちいいから出る声っていうよりも、奥を突かれて上がる悲鳴のようなものなのか、と俺は実感した。 「ア、ぅあっ! あぁ、ア、ア……」 最早母音しか出てこない喉は、連続で酷使したせいで痛みを伴ってきている。 「あ、ぃあッ!」 快感を逃すように声を上げた。シーツに額を押し付けて、固く目を閉じる。耐えきれないが、開放することも出来ない快感に、最後の理性はもう限界だ。 そんな俺をどこまで追い詰めるのか、律動を繰り返す佐藤が俺に体重を乗せてきた。首筋に鼻を近付けると、そのままうなじを勢い良く噛まれる。 「アァッ! い、あ……っ」 痛みに背中を仰け反らせると、今度は浮き出た肩甲骨に強く歯を立てられた。 最早痛みなのか快楽なのか分からない状況で、俺の陰茎は徐々に首をもたげる。それに気付いた佐藤が手を伸ばして、扱いてくれた。 「気持ちいい?」 耳たぶを噛まれながら囁かれて、泣きそうになりながら首を縦に振る。 「き、きもち、い……っ」 訪れる絶頂に肩が震える。そして、佐藤の手淫に促されるまま、俺は熱を吐き出した。 「あ、アァっ!」 何度目か分からない絶頂に、精液は尽き果てたのか、パタパタと数滴零れるようにシーツを汚す。 俺は、熱を吐き出しても頭がぼんやりしたまま、後頭部に落ちてくる佐藤の口付けを受け止めていると、陰茎を握り込んでいた手が、まだ上下に動いていることに気付いて、我に返った。 手淫を続け、腰を突いてくる中で訪れる感覚には、覚えがある。 「や、いやっ、だ! それ、それはぁ……っ」 手淫を続ける佐藤の手を必死で引き剥がそうともがくが、後ろから突かれる快楽に力が入らない。 膝がガクガクと震える。排泄感に近いそれは、既に経験済みだった。 あんな羞恥を二度と味わってたまるものかと歯を食いしばっていると、佐藤が俺の首筋に歯を突き立てる。 「ひっ」 「これ、アイツとしたんだ?」 それは確信に近い質問だった。 返事をせず俯いていると、陰茎への愛撫が徐々に激しくなってくる。 「ア、あ、ああ」 「噴いちゃうとこ、見せて」 佐藤は、そう言いながら俺の片足を持ち上げると、自分の肩に乗せて抽送を繰り返した。陰茎は既に限界が近く、先端は体液が溢れようとしている。 「も、ほんと、ムリ……ッ」 俺は、持ち上がった足をひくつかせながら、強制的に促される排泄感に、顔を両手で覆った。 「ひっ、ん……ひあ――ああぁぁ〜っ! アッ、あぁっ」 悲鳴と同時に、亀頭から勢い良く透明の体液が溢れ出す。 「み、見るなぁ……っ」 まるで漏らしているような錯覚に、あの時と同じ耐えきれない羞恥が襲ってきて、せめてもの抵抗代わりに、俺の股間を凝視する佐藤の胸を叩いた。腰を震わせて何度も飛び散る体液は、俺の腹を濡らしていく。 「恭平、かわいいよ」 顔を覆う手の甲に口付けが落とされる。そして、何度か抽送を繰り返した後、佐藤は俺の中で二度目の射精をした。 「は、あ……」 全て出尽くした後、ようやく俺は呼吸を整えてシーツに全体重を預けた。精子と体液に塗れたベッドの上は、もう不快感しか残らない。 完全に燃え尽きた気分を味わいながら、俺は顔中に口付けを落とす佐藤に応えるように口を開いた。深い口付けをして、お互い笑い合う。 「いくらなんでも濃すぎるだろ、もう動けねえよ」 そう軽口を叩きながら、俺はシャワーでも浴びようと身体を起こした。中に残っている陰茎を抜こうと、腰を引く。 けれど、引いた腰はまた奥へと沈められて、俺は顔を引きつらせた。 「俺、まだ二回しかイってない」 唇を尖らせて拗ねる佐藤は、最早悪魔にしか見えない。 「おっ、俺はもう限界だ!」 「全然動いてないじゃん」 「それ以外が酷かっただろうが……っ」 まるで何もしてないと言いたげな顔に、俺は顔を真っ赤にさせて抗議する。 しかし、佐藤の中でまだ終わる気はないようだ。 腰を進める動きに、俺はまた流される前にと、足で身体を押し返した。 「せ、せめて休憩! 一度休憩を入れさせてくれ!」 佐藤が、不満げに眉を寄せる。 「休憩?」 「そうだよ! ほ、ほら、さっき珈琲飲んだからトイレ行きたいし――」 言いながら、忘れていた尿意が迫ってきて、俺は逃げるように腰を引いた。 「うあっ」 けれど、その腰を掴まれると深く挿入されて、俺の上半身を抱えた佐藤が向きを変える。ベッドから足が下りて浮き上がる身体に、慌てて目の前の首に手を回した。 「や、な、なん……っ」 腰を支えて、いわゆる抱っこ状態で俺を抱え上げる佐藤は、そのままずんずんと歩みを進める。 繋がりあった結合部分から伝わってくる振動に、上げそうになる声を必死に押し殺した。 「ん、んぅっ」 そして、ようやく立ち止まった佐藤に、俺は最悪の状況を脳裏に過ぎらせながら振り返って、息を呑んだ。 「はい、どうぞ」 「どうぞ、じゃねーよ!」 連れてこられた便器の前で、佐藤が俺を下ろして首を傾げる。 「おしっこ、したいんでしょ?」 「し、したいとは言ったが――くそ、とにかく出てけよ!」 しかし、便器を見た瞬間尿意の波が襲ってきて、俺はさっさと用を済ませるためにも、佐藤を退出させようとした。 なのに、佐藤が出て行く気配は全くなくて、既に佐藤の変態性を嫌というほど見せられている俺は、大きくため息を吐く。 「恭平から離れたくない」 「お前は俺のプライドをどこまでめちゃくちゃにする気だ」 予想通りの返事に頭を抱えた。 「してるとこ、見せて」 「さっき見ただろうが」 「それとこれとは全く別物だよ」 しれっと答える佐藤に若干の苛立ちを感じつつも、尿意は既に限界だ。 どうやって一人になろうかと考えていると、ふいに後ろから俺を抱きしめた佐藤が陰茎に手を伸ばした。 「お、い! やめ、ろっ」 「手伝ってあげるね」 陰茎をつまんで、便器の方に先端を向ける。しかし、尿意は感じるものの、見られている緊張で上手く出せない。 「た、のむから、出てけよ、ぉ」 放尿を促しているのか軽く上下に擦るが、陰茎は一向に反応を見せない。それに不満そうな表情を見せた佐藤は、一度手を離すと俺の臀部を掴んで割り開いた。 「や、う、うそ、待っ」 そして制止も聞かず、そのまま窪みに陰茎を突き入れる。 「は、ぁ!」 掴むものがなくて、咄嗟にタンクに手をついた。一気に最奥まで貫かれて、中に佐藤のものを感じる。 「あ、ンぅ」 「出ないなら続き、してもいいよね」 いいわけない! そう言いたい声は、突かれるまま嬌声を上げた。 抽送に合わせて聞こえてくる卑猥な水音は、佐藤が中で出したものだ。鼓膜まで犯されているような気になって、俺はまた身体が昂ぶっていくのを感じた。 奥を強く刺激するような快感に、陰茎が震える。けれど、射精よりも尿意が強いそれは、感じていても勃ちあがることがない。 それどころか、揺すぶられる刺激に今にも漏れそうだ。 「お、おねが、も、漏れそ……っ」 最後の頼みは、佐藤に届かなかったらしい。陰茎を握った手が、亀頭に爪を立てた。 「アッ! ぅあ……っ」 「恭平の全部、見せて」 耳に舌を這わせながら囁かれる声に、背筋が粟立つ。膝がガクガクと震えて、俺は耐えきれず、亀頭から小さく尿を零した。 「あ、あ、アァ――」 ちょろちょろと便器に落ちていく尿は、少しずつ量を増して、じょぼじょぼと大きな音を立てていく。目を閉じていても、狭い個室の中に漂うアンモニア臭と響く水音からは、逃れることが出来ない。 全ての自尊心を剥ぎ取られて、侵される。それに心が酷く落ちそうになって俯くと、佐藤が俺の顔を覗き込んで顎をすくった。 「かわいい」 嬉しそうに瞳が揺れて、頬が緩む。そんな表情を見てしまえば、俺の胸は心地いい温度に包まれて何もかもが許せてしまう。 本当に、惚れた弱みというのは厄介だ。 深い口付けに応えながら、抽送を始めた佐藤が一際大きく腰を打ち付けて注ぎ込む欲望を、俺は内壁で受け止める。 それからまたベッドに戻って続く行為に、俺は意識ある限り受け入れて、抱きしめた。 何度も「好き」を繰り返す佐藤に、俺も「好き」と返して唇を寄せ合う。 あの日と同じ、苦しいほどに満たされる幸せに、どうしようもなく涙があふれた。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |