04


「これでフェラよりもセックスの方が効率的ということが分かったわけだ」

 シスのアイテムステータスは現在レベルが72のAランク。
 AAランク到達レベルは100で、それまでに必要な経験値は今までの取得分を合わせても倍以上ある。
 口淫のみでAAランクに上がることは、毎日奉仕したとしても厳しいだろう。

「と、いうわけで、これからはガンガンセックスもしていこうぜ! ってことで」
「……納得はしたが、そう簡単に割り切れるものではない。それに、このアビリティはなんだ? 僕は初めて見るぞ」

 そう言って険しい表情で指したのは、昨日獲得したアビリティスキルだ。
 シスは半ば諦めているのか覚悟を決めたのか、幾分か警戒心が緩んでいる。その様子を見ながら、マオは優しい声音で言った。

「さっきも効果、出てたじゃねえか」
「は?」
「……あー、もう乾いてるな。コレ、そんなに持続時間長くねえよな。ずっと濡れっぱなしも不便だからか?」
「はぁ」

 半分独り言のように話すマオは、意味が分からないと言いたげに眉を寄せるシスに、笑みを向ける。
 そしてその頬を両手で掴むと、顔を近付けた。

「言うより実践の方が早いだろ。口、開けろ」
「ほうか?」

 普段は慎重なくせに、こういう時のシスは何故か疑うことを知らない。
 彼の中で警戒に対する線引きがあるのだろうが、マオにはその基準がよく分からなかった。
 しかし、素直なシスは好きだ。その無防備な表情が可愛い。
 マオは呑気に口を開いたシスに唇を合わせて、性急に舌を絡ませた。

「んっ!? ん、んぅっ!」

 予想しない口付けに焦ったシスが、慌ててマオの背中を叩く。
 マオは舌を伝って自分の唾液を絡ませながら、シスの中に自分の体液を吸収させていった。
 まだ二回しか試せていないが、少量だと効果は弱いはずだ。
 アダルトアイテムとしてのアビリティだと考えれば、回し飲みだけで濡れるわけにもいかないだろう。
 シスの喉が苦しそうに動く。意図的に多く含ませた唾液を飲み込むことには抵抗があるようで、頬が引き攣っていた。
 だが、それに比例してシスの内壁はじわじわと湿気を帯び、粘り気のある体液を漏らし始めていく。そうなると、中で身動きが取り辛かったマオの逸物もすべりが楽になる。
 違和感から無意識に動く内壁に、マオは少しずつ中を擦り始めた。すると、生殺し状態で項垂れていた逸物は、ようやく自分の出番がきたのかと張り切って首をあげる。
 圧迫感が増し、シスの腰が逃げるように浮く。
 流石に違和感の正体に気付いたのだろう。
 首を逸らしてマオの口付けから逃げると、自身の下腹部に視線を向ける。

「な、まさか、前に言っていた合成スキルを……っ」
「なんでだよ、実践って言ったろ。これがAランクのアビリティ。合成いらずでケツが濡れてくれるなんて、最高だよな」
「うあっ!」

 そう言って揺さぶると、シスはびくっと体を跳ねさせてマオの腕を掴んだ。
 次に出る言葉は怒りか、拒絶か。
 そんな予想を裏切って、シスは掴んだ腕を引っ張ると、何故か困ったようにマオを見上げてくる。

「こ、これは、今から、その……する、流れなのか?」
「は? この流れでしないっつう選択肢があるとでも思ってんのか?」
「いや、そうではなく、勿論きさ……君の言い分は分かっている」

 ここでマオは、シスの様子に目を瞬かせた。
 普段の彼はマオに対してのみ口煩く、言葉遣いも荒っぽい。
 一度だけ、初めて謁見の間で会った時に「貴方」と呼ばれたことはあったが(その数分後にはマオのよく知るシスの態度となったが)今まで「君」と呼ばれたことなど一度もなかった。
 シスは口をもごもごと動かしながら、少しして躊躇いがちに言う。

「……正直に話そう。実は今、僕はマオとこうして繋がっていることに、強い安心感を抱いている」
(うん、昨日も言ってたから知ってる)

 流石にそれを言うと、一晩中突っ込んでいたことがバレて怒られそうだったので、マオは頷きながら胸中で返事をする。
 シスは続けた。

「そこで提案なんだが、わざわざ動いて余分な体力を使うよりも、こうして今のような時間を楽しむといった方法はどうだろうか。これだけでも、口淫以上の経験値を得ることは出来るんだ」
「…………」
「君の性欲は口や手で解消しようじゃないか。そうすれば、お互い十分な満足を――」

 ずりゅうぅぅぅぅ、ずぱんっ!

「んあぁぁッ!? 待っ、あっ……へ、ぐうっ、あぅっ! ま、マオ、貴様、僕の譲歩、を……ッ……んぁぁっ」
「なーにが譲歩だよ。お前、こんだけちんこに『待て』させといてそれが言えるってことは、絶対童貞だろ」
「け、経験、は、ある……んっ、あ、あっ、あ、あうっ」
「はいはい、シロートドーテーシロートドーテー」

 じゅぽっ、ぬぽっ……ぬぼぼ、ぱちゅんっ!

「ひんっ! アッ、アッ、は、ぁっ……んぁっ、ひへっ」

 これでもマオは、自分なりにシスに気を使ったつもりだった。
 いつもなら「勃起イコール挿入イコール射精」という思考しかない男が、シスの気持ちが固まるのを辛抱強く待って、説得まで試みたのだ。
 その結果、拒絶ならまだしも意味の分からない生殺しを提案されて、それ以上の我慢など出来るはずがない。


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(C)siwasu 2012.03.21


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