「弱ってんなら、ちゃんと弱っとけよ……」 「うる、さ……」 そもそもマオが夜通しシスの体を弄ばなければここまで悪化することもなかった。しかし、そこは棚に上げさせてもらう。 強情な姿に呆れながら、マオは仕方なく水を含むと、口移しで水を飲ませた。戻そうとする舌を押さえ、奥まで流し込めば、ようやく喉が動いて水を胃へと運び始める。 「げふっ、げはっ」 「もうちょっと飲んどけ」 「ん……っ」 マオは同じやり方で水を与え続け、ようやく喉が力強く動き出したところで解毒薬を流し込んだ。 解毒薬のランクはそれほど高くない。プラントーブの毒に効くかは分からないが、ないよりはマシだろう。 少なくとも青い顔は落ち着きを取り戻しているので、マシになっているはずだ。 本当なら日中に村まで移動する予定だったが、馬を失った上こんな状態のシスを抱えながら移動するのは難しい。 アイテムボックスに収納することも考えたが、ボックス内の様子をマオが見ることは出来ない。悪化し、着く頃に出したら死んでました、では悲惨すぎる。 そうなると、まずはシスの回復を待つしか方法は無かった。 解毒薬を与えたあとも、はくはくと開く口に水を飲ませ続ける。 すると、ぐったりしていたシスが徐々に動きを見せた。足を擦り合わせ、マオの腕に縋りついてくる。 「おい、大丈夫か?」 「ん、んぅ……」 苦しそうな声が、艶のある音色に変わる。眉を寄せて悶えるシスに、マオは怪訝な目を向けて外套をめくった。 もぞもぞと動く足を掴んで持ち上げれば、股座部分に染みが出来ている。 「脱がせるぞ」 そう言って、マオはシスの下衣を勢いよく脱がせた。下着を剥ぎ取り、股間を確認すると、濡れた窪みを見つけて足を割り開く。 「ンッ」 肌が外気に晒されてシスがぶるりと震えた。マオは眉間に皺を寄せ、その異常な場所を凝視する。 「なんだ、これ」 「んぁ……」 シスの孔から透明な液体が溢れている。指ですくってみると、粘り気があった。覚えのある匂いを嗅ぎ、舐めてみる。 やはりそうだ。マオは確信した。 シスの窪みから垂れるそれは、間違いなく女性の愛液だ。 おもむろに指を入れてみると、中は熱くぬめりがある。吸いつくように収縮し始める内壁に思わず唾を飲みこみながら、マオはシスを見つめた。 「おい、これ……」 「ん、んぇ……あっ、あつ、ぃ……」 シスは顔を赤くさせてマオの外套を握りしめるが、体調が悪そうな素振りはない。どちらかと言えば、昨夜の行為に似た反応だ。 自身で腰を動かして指を奥へと招きいれる様子は、まるで性交を誘っているかのようだった。 マオはそれに反応した自身の下腹部を鎮めると、指を引き抜く。 そしてシスのステータスを開き、今朝見つけた〈分泌液製出〉という文字に目をつけた。 「これか……?」 プラントーブの毒とも考えられるが、それにしては出来過ぎている。だとすれば、おそらく会得したアビリティの効果だろう。 だが、何故このタイミングで発動したのか。 マオは昨夜からの記憶を手繰り寄せて、思い当たったポップアップ画面に「あ」と声をあげた。 試してみれば分かること。シスに顔を近付けると、頬を掴んで幾分か光の戻った瞳を見つめる。 「は、ぇ……」 「シス、ちょっと口開けろ」 「あ……」 はっきりしない意識の中で自分の状況が理解できていないのか、素直に唇が開かれる。マオがその中にあえて作った唾液を流し込むと、少ししてシスは熱い吐息を零し始めた。 「あ、あ……んあっ」 「なるほど、そういう仕組みか」 じゅわり、と新たな蜜を漏らす窪みを見つめながら、マオはアビリティの発動条件に納得する。 昨夜現れた登録画面は、このアビリティが関係していたようだ。 登録したマオの体液を摂取すると、濡れるはずのない孔は性器を受け入れる準備として愛液を作り始める。 どうやら、飲ませた水に含まれていたマオの唾液に反応して濡れ始めたようだ。 都合が良すぎるとも思ったが、そもそもシスはオナホアイテムなので、アイテムとしてその性能が上がることは何も間違っていない。SSランクまで上がった時はどうなるのだろうか。マオは複雑な表情を浮かべた。 慣れない感覚が気持ち悪いのか、シスは眉をしかめてずっと両足を動かしている。意識はまだはっきりしていないようで、熱い熱いと、うわ言のように繰り返していた。 額に触れてみる。熱は少し引いたようだ。解毒薬は、プラントーブの毒素を上手く中和してくれたらしい。 マオは安堵の息をつく。同時に、シスを心配していたことを自覚して、引きつった笑みを浮かべた。 動揺のまま髪をかき上げる。 「いやいや、折角育ったオナホが無駄になったら困るだけだし」 誰にともなくそう言い訳して、ぐったりとしているシスを転がし距離を取る。愛液は治まらないのか、シスの下腹部は寝袋を濡らしていた。 この状況は、昨夜以上の据え膳だろう。今なら慣らす必要もなく挿入が可能なのだから。 けれど、マオはシスに近付くどころか距離を取る。その顔は、どこか警戒しているようにも見えた。 マオは、自他ともに認めるクズだ。 だが顔だけは良かったので、好意を寄せられ、体目当ての付き合いを繰り返してきた。 自分の好きなように行動し、他人への気遣いなど勿論皆無。それで相手が離れても、また新しい者が顔に惹かれてやってくる。 だから体調不良や生理を訴えても、だからどうしたと言わんばかりに性欲を吐き出したし、スキンを付けなくても「じゃあアフピル飲めば?」と笑顔で言うような、そんな男だった。 なのに、シスの具合に右往左往し、据え膳の今も体調を気遣ってその気が起きない。 マオ自身、そんな自分に戸惑っていた。 今朝ぶりの苛立ちが募っていく。胸の中をかき回されているような不快を覚える。苦しそうなシスを見て、高揚だけではない、ざわついた感覚がとぐろを巻く。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |