「あいつなら防具屋へ向かった。会いたいなら行ってこいよ」 「……」 突然素直になったマオに少年は胡乱な目を向ける。しかし、それよりも早くシスに会いたいのか、マオを気にしつつも表通りの方へ走り去って行った。 ようやく人気が無くなった路地裏で、シスは肩の力を抜く。 「おい、さっさと終わらせろ」 「んぐっ」 少年が現れたことで少し柔らかくなったとはいえ、シスの口内を行き来するとすぐに逸物は元の硬さに戻っていく。 「ん、んぐっ、じゅっ、ふぅ〜〜っ」 じゅぽっじゅぽっ、じゅるるるるるっ。 びゅっ、びゅるるる〜〜〜〜〜ッ……とぴゅっ。 シスはいつものように唇で扱きあげると、およそ十秒でマオを射精へと導いた。 いつもよりは若干遅いことにプライドが刺激されるが、この状況だ。集中出来なかったのだろうと、自分を納得させる。 無言で下衣を戻してやれば、すっきりした表情のマオが厭らしい笑みを浮かべた。 「随分好かれたじゃん。まぁ、あいつらの噂もあながち間違ってなさそうだけどな」 「……は?」 立ち上がり口元を拭っていたシスは、何が言いたいんだと眉を寄せて睨みつける。マオは下卑た笑みを浮かべたまま、舌を出してその場所を指さした。 「口まんこで、勇者のちんこをたらしこんでるじゃねえか」 「はぁっ!? どこまで人を侮辱する気だ……!」 シスは怒りで顔を赤くさせる。だがマオは気にも留めず、大げさに肩を落とした。 「あーあ、お前のせいでもうオナニー出来そうにないわ」 「貴様の下半身事情など知らん!」 この二人の間で言い争いが止むことはない。いつものように応酬を続けていると、突然表通りから声が上がった。 「あー! やっぱり王子さまいたじゃん!」 見れば、立ち去ったはずの少年がいる。引き返してきたのか、頬を膨らませながら近づいてくると、勢いよくマオを睨みつけた。 「勇者さまのうそつき! お店行ったのにいなかった!」 「こいつしつけえな……」 絡んでくる少年に、マオは心底鬱陶しいと言わんばかりに顔をしかめてシスへ視線を送った。 どうにかしろと言いたいのだろう。 シスは少年の背丈に合わせてしゃがみこむと、顔を覗き込む。 すると、少年は先程までの強気な態度から一転、もじもじと体を揺すり始めた。 「どうしたんだい」 「あ、う、えっと……さっき、聞き忘れたことがあって……王子さまは、なんでそんなに強いの?」 「それは……うーん、そうだね、たくさん頑張ったからだよ」 「王子さまなのに? 王子さまなのに頑張ったの?」 「王子さまでも、だ。才能に差はあれど、努力に差別などない」 シスはそう言ってから少年の頭を撫でた。そして、マオには一生向けることがないであろう慈愛に満ちた笑みを浮かべる。 「だから頑張ってごらん。僕は、君が冒険者になれるよう、応援しているよ」 「っ!?」 少年はシスの最後の言葉に目を見開いた。 「なんで分かったの?」 「なんでだろうね」 答えを言う気はないらしい。 少年は「なんでなんで」と疑問を繰り返していたが、やがて落ち着くと真っ直ぐな目をシスに向けて頷いた。 「うん、ぼく頑張る。強くなって、皆を守るんだ!」 ようやく満足したのか、少年はそう言ってシスに手を振ると今度こそ、その場を離れていった。 手を振り返すシスは、懐かしさに目を細める。腹違いの弟たちも、あの年頃は疑問ばかりだった。 元気にしているだろうか。 脳裏で二人の幼い少年を思い浮かべていると、隣でマオが不満げな声をあげる。 「なんで分かったんだよ」 「あの年頃は、大体冒険者に憧れるんだ。僕もそうだった。それに、最初の質問の意図を考えればすぐに分かる。子供は自分に興味のあることしか意識を向けないからな」 少年は、勇者と旅をするのが冒険者ではないことに疑問を抱いていた。 冒険者にとって勇者のパーティーに入ることは、何よりも名誉なことだ。だからこそ、冒険者でなく王族であるシスが同行していることに疑問を感じたのだろう。 話を振っておきながらつまらなさそうな顔を見せるマオに半眼を送りながら、シスは表通りに足を向けた。 欲求を解消させたのならこんな場所に用はない。少年は疑問に思わなかったようだが、他の者に見つかれば、また余計な詮索や噂をされるに違いないだろう。 「ちょっと待て」 「まだ何かあるのか」 しかし、後ろから肩を掴まれて、シスは呆れながら振り返った。 この男の用事はどうせろくでもないことだ。 そして、その予想は裏切ることが無い。 「悪い……また勃った」 「は!?」 だが流石に予想の斜め上の言葉に、シスは声を荒げる。 「治めたばかりだろう!」 「だから悪いって言ったじゃん」 「今度こそ宿までしないからな!」 「だから悪いって言ったじゃん」 「嫌だぞ! 絶対に嫌だぞ!」 「だから悪いって言ったじゃん」 「ああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 話が通じない。 怒りで腸が煮えくり返りそうだ。いや、もう煮えくり返っている。なんなら蒸発している。 地団太を踏むシスは気付かない。 マオは、少年に向けるシスの顔を見て欲情したのだ。 自分には決して見せない、優しく穏やかな笑み。 それを穢すことが出来るのは自分だけだと考えるだけで、性器が反応してしまった。 本人には言わない、言いたくない。怒られそうだし。 マオはそう思っていた。 「次こそ三秒で頼む」 と、浮かべる笑みを見て、心底嫌そうに眉をしかめたシスは、せめてもとマオの脛を強く蹴りつけるのであった。 ちなみに、次はしっかり三秒で終わらせることが出来た。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |