「なんだ」 「いや、ちょっと」 そう言って手招いたマオは、歩みを進めながら表通りの中央から端の方に移動する。 怪訝な表情を浮かべながらも続けば、マオはそのまま人目を気にしながら路地裏へと曲がっていった。 「おい、なんなんだ」 入った道は先が行き止まりとなっており、商店の裏口なのか、空の木箱が積まれている。 マオは無言で奥に進んでいく。それに憤りを覚え始めるシスだったが、ようやく振り返ってこちらを見るマオがあまりにも真剣な表情をしていたので、背筋を伸ばす。 何かあったのだろうか。 ただ事ではない雰囲気に思わず唾を飲む。マオはそんなシスを見て、真面目な表情のまま、人差し指を自身の股間に向けた。 「勃った」 「…………は?」 「いや、だから半勃ち」 いや、そんなまさか。 シスは脳裏に浮かんだ答えに頭を振った。 マオは股間を指さしたままシスを見つめる。その真剣な表情に変わりはない。 長い月日ではないとは言え、四六時中行動を共にしてきた。その中で導き出される現状の答えは一つしかない。 シスは顔を青褪めさせると、首を横に振る。 「いやだぞ、僕は絶対に嫌だ!」 「いつもみたいに三秒で終わらせてくれりゃあいいから」 「せめて宿まで待てないのか!」 「じゃあ、このままちんこ勃てて公道を歩けって言うのかよ」 「治めればいいだろう!」 「だーかーらー、そのために移動したんじゃねえか」 「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」 相変わらず話の通じないマオに、シスは拳を握りしめた。 これ以上会話を続けても、結局折れるのは自分だと分かっている。ならば、さっさと終わらせるのが一番手っ取り早いだろう。 そう考えたシスは、大股でマオに近付き、壁に向かって突き飛ばした。この場所なら下半身が木箱に隠れて、表通りから死角になる。通りがかっても意識しなければ気付かれないはずだ。 乱暴な仕草で下衣をずらし、まだ柔らかいが大きくなった逸物に顔を近付ける。雄特有の臭いに顔を歪めるが、躊躇なくそれを口に含むと唾液で濡らしていく。 シスの中でそれはすぐに硬さを持つ。 ある程度扱ける状態になったところで、射精に導こうと唇を窄めた時だった。 「っ?」 突然マオの手がシスの肩を掴み、体を引き寄せた。バランスを崩したシスは、そのままマオの力に流されて場所を反転させる。 「なにを……っむぐ」 壁に背を打ち付けながらマオを睨みつけるも、開いた口はすぐに逸物で封じられてしまう。同時に、聞き覚えのある声が聞こえてきて、シスは大きく肩を揺らした。 「あ、勇者さまだ」 「!?」 先ほどの少年だ。どうやら父親の目を盗んで、二人を追ってきたらしい。 固まるシスとは反対に、マオは呑気な声でその場から「おう」と返事した。 「ねえねえ、王子さまはどこに行ったの?」 「近付くなクソガキ」 こちらに駆け寄ってくる少年の足音が、マオの言葉で止まる。 シスは、少年から身を隠すために移動させられたのだと理解した。死角とは言え、完全に身を隠せていたわけではない。しゃがみこんだシスよりも、下衣を前だけずらしたマオの方が不審さはないだろう。 だが、覗き込まれれば終わりだ。 シスは、せめて逸物から口を離そうと小さく体を動かすが、頭を掴み抑え込むマオの両手がそれを阻む。口に逸物を咥えたまま膠着する。 上目遣いで睨み上げるも、マオの顔は少年の方に向けられたままだ。 少年は少し離れたその場からマオに話しかける。 「王子さまは?」 「さぁ、便所じゃね。いいからあっち行けよ」 マオの冷たい態度に、少年は唇をとがらせる。 「勇者さまのいじわる! 王子さまの方が優しかった!」 「はぁ? なんで俺がガキに優しくしなきゃなんねえんだよ」 マオの態度は子供相手でも変わらない。少年はその言葉に怒りで顔を赤くさせた。 「〜〜っ、パパが勇者さまは強くて優しい人だって言ってたのに! お前はにせものだ!」 「は?」 言い返す少年に、マオの雰囲気が変わる。億劫そうな表情から不機嫌に眉を寄せる姿は、自分の今の状況とシスの存在を忘れたかのようだ。今にも少年を殴りにいきかねない。 シスは口の中から離れていく逸物を吸いながら、慌ててマオの足に手を回して引き寄せた。 「っ」 勢い良く咥えこんだせいで喉奥に亀頭がぶつかり、思わず声が出そうになる。 しかし、何とか喉元でそれを留めながら、シスは勿体ぶるように口の中の逸物に舌を這わせた。 れろ、れる……ちゅっ、ちゅるっ。 大きな音は立てられないため動きは緩慢になるが、愛撫するだけなら問題はない。 焦らすような動きに、マオも流石に無視できないのかシスを盗み見る。どうやら機嫌は戻ったらしい。 シスの奉仕に満更でもないような顔を見せると、少年の方に向き直った。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |