06


「受精って……面白いこと言うな」
「おもしろ、くっ、な、ぁァんッ」

 エルフたちの放った単語を聞いて、シスはあるはずのない子宮部分が痙攣するような錯覚を感じた。
 下腹部に熱が溜まり、どうしようもなく発情する。疑似であるはずの膣が、精子を求めて収縮を繰り返す。シスは、背筋をぞくぞくと駆け上がる快楽に、耐えきれず口を開いた。

「あーっ、アッ、やっ、おくっ、おく突いっ、てぇっ」

 気付けば本能のように強請っていた。自らも腰を振り、マオを奥へ奥へと導く。
 そんなシスの淫らな動きに、マオはぶるりと腰を震わせた。

「ああ、奥にいっぱい種付けしてやるからなァ。そいつらに見られながらしっかり受精しろよ」

 パンパンパンパンパンッ、ごりゅっ……ぴゅうぅぅぅぅっ、とぴゅっ、ぴゅるぴゅるっ……ッ!

「あーっ! んあっ、あっ、あ、あっ、あ〜〜ッ、やぁアあぁァァ―ッッッ」

 三人のエルフたちに見守られながら、シスは膣の奥へと射精されて快楽の極みに達した。視界が弾け、本当に受精したような気すら覚える。
 射精後も中を揺すられて、シスはぐったりと体を倒しながらうわ言のように呟いた。

「あ……じゅ、せぃっ……こども、できないのに、ぼく……じゅせぇ、して……んっ」
「なんだ、こいづ男だったのが」
「じゃあわーらがわざわざ待づ必要無がったんじゃねえが」
「子作りだど思ったはんで見守ってけだのによぉ」

 どうやら、シスを女だと思っていたらしいエルフたちが、男だと分かるなり態度を変えて立ち上がった。
 そして引っこ抜くつもりなのか、まるで物語の大きな蕪のようにシスの腕を掴むと、引っ張り始める。

「ほら、終わったならさっさどどいでぐれ」

 だが、シスだって好きでこの場にいるわけではない。抜けなくなってしまって身動きが取れないのだ。
 それを伝えるべく、恥を忍んで説明を始めた時だった。

「それが、抜けなくなっ」
「悪かったな、ほらよ」

 シスの言葉を遮って聞こえてきたマオの声。
 呆ける間もなく、シスは真っ暗闇の中に放り出された。

「っ!?」

 そしてすぐ光に包まれ、次に目にした光景はマオの隣。つまり、穴にハマってしまう前の場所だった。
 固まるシスは、徐々に何が起こったのか理解して、顔を真っ赤に染めあげる。

「な、な――っ」
「え、お前この方法で抜け出せるの、気付いてなかったの?」

 シスの反応に、マオは心底驚いたと言いたげな表情を見せた。
 シスを一度アイテムボックスに収納する。そうすれば、穴から簡単に脱出できたのだ。

「〜〜〜〜ッッッ」

 頂点に達した怒りを、エルフたちの前で吐き出すわけにもいかず、シスは両手を半端に浮かせたまま地団太を踏む。
 そんな二人に、穴から通ってきたエルフたちは半眼を向けた。

「痴話喧嘩は犬も食わね」
「だな。時間ば無駄にすたな」

 そう言って通り過ぎようとするエルフの肩を、マオが指で叩いて呼び止める。

「なぁ、ところでお前らの集落に用があるんだけど、入り口これしかねえの?」

 マオの質問にシスはハッと正気に戻った。
 穴から抜け出せたものの、このままでは集落に辿りつくことができない。過去の勇者たちは辿りついているのだから、何らかの手段はあるはずだ。
 隠し通路だろうか、それとも特殊な魔法だろうか。シスは期待をこめた視線をエルフたちに送る。
 しかし、三人のエルフたちは、先ほどの穴を指すマオに眉を吊り上げて「何を言ってるんだこいつは」と、言わんばかりの顔をした。

「というが、横さ扉があるびょん。そこの鈴鳴らせば開げでぐれるよ」
「…………は?」

 嘆息と共に言ったエルフの言葉に、シスは体が石のように固まった。そして、何とか首だけを動かすと、エルフが指し示した壁を見つめる。
 そこには、壁と同じような色だが、よく見れば分かる観音開きの扉と、壁にとりつけられた赤い鈴。

「その穴はわすらみだいな外で狩りばするエルフ使う勝手口だよ」
「横さ扉があるってのに無理矢理通るべどすやがって」
「だな、ちゃんと周りば見るごどだ」

 そう言い残して去って行ったエルフたちを、シスは銅像のように微動だにせず見送った。

「…………」
「………………」
「……………………」
「…………………………ドンマイ」
「ああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁーーーッッッ!」

 ようやくエルフたちの姿が消え、マオの手が肩に置かれた時。
 シスは、途方もない羞恥と、後悔と、怒りによって、獣のような悲鳴をあげたのだった。


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(C)siwasu 2012.03.21


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