触手は胸以外も絶えず動き続ける。しばらくして、内腿を揉んでいた他の触手は、ある個所が硬くなっていることに気付いた。 狙いを定めるように近付くそれに、シスは唇を震わせる。 「だ、駄目だ! そ、こは、ぁ、ッ」 抵抗したくとも、力の抜けた四肢は思うように動かない。 そんな中、内腿から下着の間を縫って上ってきた触手は、ひときわ硬く膨らんでいるそれに絡みついた。 「んんっ、ひん、や、あァッ」 勃起した逸物を包み込んだ触手は、ここぞとばかりに揉みしだきながら上下に毒を擦りこんでいく。 その動きは、例え触手が意図していなくても手淫と変わりなく、シスは鈍くなった感覚でも耐えられないほどの快楽に、大きく首を仰け反らせた。 「あっ、アッ、あ……ッ、あぁッッ! や、やめぇっ」 ぐちゅっ、ぐちゅぐちゅっ、ぐりゅっ、ぐちっ。 目尻に涙を浮かべながら、シスは空を仰ぎ見て嬌声をあげる。 実のところ、シスは旅に出てから一度も自慰――つまり射精をしていない。そのような行為は不謹慎だと考えていたからだ。 マオに素股をしていた時も、達したことがない。 勃起はしても我慢していたし、マオが触ってこようものなら噛み付かんばかりの剣幕で拒否してきた。 つまり、二か月以上もの間、性を発散することはなかったのだ。 そのため、直接的かつ手加減の無い刺激を与えられて、耐えられるはずがなかった。 「アーーーッッッ、あっ、イ……ッ、ん、んぅ、ひっ、ぐ」 ぴゅるるるるっ、どぴゅどぴゅっ。 自分の意思に関係なく、絞り出されるように白濁が下着を濡らしていく。触手は、射精したことで萎み柔らかくなったそれを、満足そうに揉みしだいた。 「ひっ、う、うぅ」 シスはついに涙をこぼして嗚咽を漏らした。 こんな行為、マオにすら許したことがない。触手に性的意図は無かったとしても、これは十分な凌辱だ。 刺激を与える内にまた自然と硬さが戻ってくる。それを数本の触手が手伝いだとばかりに巻き付いてきた。 群がった触手によって下衣がずらされ、陰部が露わになる。動きやすいようにと、足を左右に開かれる。 「い、やだ、や、あっ、あぁッ、んァ……」 暗闇の中で股を開き、陰部や胸に触手が群がる様は、シスにとって惨めとしか言いようがなかった。 隆起した胸を皮膚が切れそうなほど弄られる。睾丸を揉みしだかれ、何度も硬さを取り戻す逸物が絶頂へと導かれる。 そうして時間が経ち、シスの意識が虚ろになってきた頃、口の中に触手が二本入り込んできた。 「うぐ、ん、んんっ」 毒の分泌液を出され、喉に流れ込んでくる強いアルコール臭に、頭がくらくらしてくる。全身が蛸のようになった気分だった。 他の触手も、体内に毒を流し込もうと這いまわり、耳や鼻の周りを蠢いては穴の小ささに引き下がる。 しかし、ついに臀部の窪みを見つけると、それが拡がると分かるや否や、数本の触手は拡げるように割り開いた。 「う、んぐっ、ン……」 触手一本分入るぐらいに開かれた孔から、すうすうと冷たい空気が内壁を撫でる。シスに残った感覚は、最早その程度だった。 孔を埋めるように、触手の先端が宛がわれる。先に毒を流し込んだのか、内壁に感じる熱は痒いほどの刺激をシスに与えた。 ぴろりんっ。 頭上でこの場に似つかわしくない音が聞こえるが、視線を動かす気力もない。 触手は、孔を拡げながら徐々に押し入ってこようとする。 (必死で守り続けていたものが、こうも容易く暴かれるとは) こんなことなら、先にその純潔をマオに捧げれば良かった。 後悔と絶望に、覚悟を決めたシスが瞼を下ろした時だった。 「人の穴を勝手に使ってんじゃねえぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!」 突如現れたマオが、シスに向かって走り寄る。 そして叫びながら跳躍すると、足を突き出し、そのままシスを勢いよく―― 蹴り飛ばした。 「おへぐふぅううぅぅぅぅぅぅーーーッッッ!」 マオの見事なドロップキックによって触手の拘束から逃れたシスは、綺麗な弧を描いて横へと吹っ飛ぶ。 そして、そのまま樹木に背中を打ちつけて、うつ伏せで倒れ込んだまま動かなくなってしまった。 触手たちは、突然獲物が消えたことで、宙を彷徨いながら戸惑っている。 マオはシスの元に近付くと、髪を引っ張り上げて顔を起こした。 「おい、何フルチンで寝てんだクソビッチ。さっさとあれを倒す方法を教えろよ」 「……一瞬、亡き母上の姿が川の向こう側に見えたぞ」 こんなにも殺意を覚える救われ方は今まであっただろうか。 いや、ない。 けれど、相手はクズで守銭奴でドSのクソ勇者なのだ。ここでツッコミを入れてしまうと負けである。 シスは、瞬時に相手から怒りの感情をフルメーターで引き出せるこの男の才能に、今だけは感謝した。 おかげで頭が冷え、冷静さが戻ってくる。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |