少年×リーマン[R18]



「少年、スーツ、電車」というお題で作った話。



「できごころ」

 別にそういう趣味があったとか性癖を持っているとかは決してない。ただ、いつもより八つ当たりのきつかった上司、昼休み箸を入れ忘れていた無愛想なコンビニ店員、人身事故によってかれこれ30分動かない電車。ぶつけ所のない苛立ちは、自然と横でずっと携帯ゲームに熱中している少年に向けられた。ちょっとした出来心だが、何かいけないことをしたくなってしまった気分だ。最近改装したのか広くて綺麗だが、田舎の駅構内の人口なんてたかがしれている。作り笑顔と無害な雰囲気に定評のある俺が少年に話しかけて仲良くなるのは造作なかった。ハーフのように整った顔立ちはまだ未成熟な表情を全面に出していて、まるで女の子のようにぷっくりと膨れた唇は何故か下半身を刺激した。きっと今からする行為を想像して背徳感から生まれる嗜虐心に火をつけたのだろう。
 少年が縦に首を振って席を立ったのは早かった。警戒して周りを見るが、案の定まだ電車が止まっていることにも気付かず寝入った老人が一人舟を漕いでいるだけだ。そのままホームに出て近くの階段をのぼると、改札に向かう手前に見えた公衆トイレの文字が俺の唇に弧を描かせた。幸い車椅子を表わすマークもあったのでそちらに誘導して鍵をかける。密室、個室、その上ユニバーサルシートまで付いている。多目的トイレに入るのは初めてなのかキョロキョロと見回して触れる好奇心旺盛な少年の半ズボンから覗く足は、とても白かった。

「あっ、や…っぁ!」
「大丈夫、これぐらいなら痛くないでしょ?」

 …が、どうしてこんな状況になった。ユニバーサルシートに寝転がって股を開きさっきから尻の穴に指を3本突っ込まれて喘いでいるのは俺で、突っ込んでいるのは少年だ。両手はネクタイで後ろ手に縛られ、ご丁寧にリトラクターベルトで上半身はがっちりと固定されている。

「ほら、もうこんなに奥まで入ったよ?お兄さん」
「あっ、あ、ぬ、抜い…」
「折角だからもうちょっと入れとこうよ」
「ひ、」

 嬉しそうに笑う少年の手によって、尻の穴を解す為にずっと使われていたカルピスの残りを全部中に注ぎ込まれた。圧迫感と冷たさで腹の中がぎゅる、ぎゅる、と嫌な音を立てているのが分かる。ゆっくりと指を引き抜かれて、焦って引き締めるも穴の隙間からまるで排泄物のようにぴゅるぴゅると漏れる感覚に涙が漏れた。

「あはは、何かお漏らししてるみたい」

 笑って俺に向かって携帯で写真を撮る少年の顔にもう未成熟さは見られない。悪戯っ子のように見えて、けれど目に隠された雄の片鱗が彼が少年である前に男だと感じさせられた。

「お兄さんのスーツ、すっかりぐしゃぐしゃだね」

 半分までしか引き下ろされていないスーツのズボンはすっかり濡れている。情けなさやら後悔やら悔しさやら恥ずかしさやら。頭の整理が追いつかなくなってしまった俺は、今だ申し訳なさそうに漏れる尻の状態も忘れてついにみっともなく泣きじゃくってしまった。子供にまでいいように扱われて、俺の価値ってどこにあるんだろう。
 それを暫く窺っていた少年は、俺の呼吸が整ってきた頃を見計らって頭を撫でると瞼に唇を落としてきた。女の子のように柔らかいそれに少しの安堵を覚えて一息ついてしまう自分が悲しい。そうしてまるで女の子にするような優しい扱いを受けた後、少年を見上げた俺に優しい視線が降ってきた。

「ねぇ、お兄さん。僕の彼女になってよ」
「………は?」
「だってお兄さん、みきちゃんより可愛いもん」

 みきちゃんって誰だ、彼女か。
 このマセガキめとか一瞬脳裏に過って固まってしまった俺に、少年は何を勘違いしたのか頬を膨らませると半ズボンのポケットから携帯を取り出した。

「じゃないとこれ、お母さんに送るもん」

 見せられたのは、尻からカルピスを漏らして泣きながら震えている言い逃れできないぐらいド変態な俺の動画。茹でダコに勝てるんじゃないかってぐらい真っ赤に染まった俺の顔は次いで金魚のように口をばくばくと開閉させて。

「ほら、はいって言ってよ」
「は、はひ…」

 か細く従った肯定の答えは、この先少年によって振り回される運命を嘆いているような悲鳴にも聞こえた。
 出来心ってのは、持つものじゃない。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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