親衛隊長×会長 クリスマスの小話。 「メリークリスマス!」 「いや、何してんすか」 「え、見りゃわかんだろ」 目の前でせっせと編み物をしている会長を見て、俺は頭を抱えた。 「だから何で会長が編み物なんですか!」 「会長が編み物しちゃいけねーなんてどこにも書いてなかったぞ!」 「いや、そうですけど!」 ずい、と突き出された生徒会長用の事項をまとめたファイルを横目に溜息が漏れるのも仕方ない。 「勘弁してくださいよもう…会長が料理とか編み物とか裁縫とかレジンとか好きなんて一般生徒にバレたら親衛隊長の僕はもうどんな顔して歩けばいいのか…」 「あ、そういえばこの前親衛隊が欲しいって言ってたレジン出来たぞ。こんな感じでいいのか?」 「わー可愛い!会長って本当手先器用ですね〜………じゃなくて!いつの間に親衛隊とそんな約束してたんですか!」 「先週のお茶会で?」 「ああああああ…会長がこんな人だって知ってたら絶対親衛隊入らなかったのに…」 「失礼な奴だな。やることはやってんだから別にいいだろ」 大男が頬を膨らませながら拗ねても可愛く…うん、可愛くないんですからね!思わず変な方向に進みそうになった僕は首を振って持っていた書類を手渡した。 「これ、各親衛隊のリストと活動報告書です。一部不穏な所もあるのでチェックして風紀に回してください」 「おーさんきゅーさんきゅー。いつも助かってるよ」 黙っていればオーラも色気もあるし申し分ない男の筈なのに、何故か中身はそうもいかなかったようだ。歴代の中で一番気さくで接しやすいと評判がいいのは嬉しいがこうも警戒心がないと間違いも起きないとは言い切れない。実際報道部で集計した家庭的な男ナンバー1に選ばれてたし。 「それじゃあ僕はこれで。あんまり教室で披露しないでくださいね、その趣味」 「あ、ちょっと待て」 「?」 けれどこの中身ばかりは変わりそうにない。半ば諦めている僕は去ろうとして足を止めた。 振り返れば会長が真剣に編み物を続けている。 「用がないなら帰りますけど」 「あー、あとちょっと…、と。これでこーして…できた!」 他の生徒が見たら卒倒しそうな満面の笑みで会長は完成した編み物を見上げた。 「おめでとうございます。良かったですね。じゃあ僕は…」 「いやだから待てって」 これ以上僕に何の用事があるというんだ。僕もそんなに暇じゃないんですけど…と立ち上がる会長を半目で見ていると右手の完成した編み物を掲げて首に回された。 「めりくりー。いつも世話になってるからな。風邪ひかねーように気を付けろよ?」 首に回ったマフラーはほんのり暖かい。あと会長の頬もほんのり赤い。 あ、これは何か色々とヤバい。 「会長」 「ん?」 「今晩あいてますか?」 「別にあいてるけど」 「…食べたいんですけど」 「おー、飯な。おっけーおっけー、適当に作って待ってるから」 誰も飯なんて言ってませんから。とまでは言わない。 とりあえず、おかげさまで半勃ちしたチンコは本人に責任取って面倒見てもらおう、と首に巻かれたマフラーを握りしめながら決意した。 end. >> index (C)siwasu 2012.03.21 |