副会長×会長



クリスマスの小話。



「クリスマスの予定」

「冬ですねー」
「冬だなぁ…」

 12月1日。とうとう始まってしまった12月。俺は何気なくぼけっと窓の外の木枯らしを見る副会長を見ながらそう相槌を打った。

「…とうとう、12月が来てしまった」

 そして、うな垂れた。

「冬、嫌いなんですか?」
「冬が嫌いな訳じゃない、12月が嫌いなんだ…」
「はぁ」

 そう相変わらず間抜けな表情を見せる副会長。能天気なお前には分からないだろう。12月といえばクリスマス。そして年越し。これぞ年に最大のイベントと言っていいだろう。そう、…恋人たちにとっては。

「今年も恋人作れなかったよ畜生…!」

 クリスマスにはムードに包まれてここぞとばかりにイチャイチャし、年越しには夫婦のような落ち着きの中「来年も一緒にいようね」とこれまたイチャイチャする。
 そんな12月、俺は今年も恋人がいない。去年もいなかったし一昨年もいなかった。このままじゃ来年もいないし一生いないかもしれない。
 そんなことを考えてうな垂れる。

「12月なんて滅んでしまえ…」

 そう呟く俺の胸の内を知ってか知らずか、副会長はそういえば、と口を開いた。

「クリスマス、何か予定あります?」
「てめぇ喧嘩売ってんのか…」

 今まさにその件で落ち込んでいた所だ。睨みつけるも、飄々とした副会長にはやはり通じない。

「僕とご飯、食べに行きませんか?」
「あ?」
「ちょうどクリスマスディナー券を頂いたんですが、相手がいなくて」

 会長に予定がなければ是非。
 そう微笑む副会長が天使に見える。

「お前は神か!」
「いえ副会長ですけど」

 そうか、お前もクリスマスの相手がいなかったのだな、可哀想に。俺も忙しいが仕方ない、そこまで共に過ごして欲しいのなら付き合ってやろう。

「じゃあ24日の夜、よろしくお願いします」

 そう行儀良く頭を下げる副会長にくるしゅうない、と持ってもいない扇子で扇ぐ。
 しかし、この時の俺は知らなかった。副会長が実は俺狙いで、クリスマスのムードを使って俺を食おうとしていた魂胆に。

「ところでホテルはスィートでいいですよね?」
「ん?ああ、泊りなのか?」
「ええ、まぁ。嫌ですか?翌日予定があれば…」
「まぁあることにはあるがないな!」
「そうですか、良かったです」



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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