???×男前転入生



攻め食い転入生が不良クラスに乗り込んだらとあるものにヤられちゃった話。企画作品。



【on the morrow!】

「昔々あるところに、季節外れの転入生がいました。転入生はそれはもう立派な男前で、転入してくるや否や次々と学園の人気者たちを攻略していき、ついには生徒会長までをも己の手中におさめ、立派な攻め食い男子として学園を制するようになりましたとさ、おしまい」
「せめてもうちょっと話を膨らませろよ、面白くねえ」

 飲みきった紙パックのジュースが空になったので、ストローを穴が開くほどガジガジと噛む。俺の悪い癖だ。
 穴が開いたら飽きたので、前でつまらない話を作り出す友人の頭に投げつけてやると、気持ちいい音が鳴る。

「おい、すぐそうやってお古を俺に投げつける!」
「失敬な。まだ会長はお前に投げてないぞ」
「その発言、頼むから親衛隊の前ではするなよ……」

 俺と友人しかいない屋上なのに、大袈裟にきょろきょろ辺りを見回す姿に半目でため息を吐きつつ俺は空を見上げた。

「会長も俺様ダー!とか言うからどんなもんかと期待したけど――ただのオンナになりたい犬だったじゃねえか、つまらん」
「まぁそれは俺も意外だった。お前の口から何度聞いても下で腰を振ってる会長が想像つかんぞ」
「今度覗くか?」
「……遠慮しとく」

 会話を聞いて分かる通り俺、立川敦(たちかわ あつし)は二か月前に転入してきて早々学園の攻めたちを食い散らかしているとしてすっかり有名人になっている。本当はこんなに早くバレたくなかったのだが、生徒会が俺に興味を持ち近付いてきたのだから――まぁ、仕方ないだろう。ついでに騒ぎを止めに来る風紀も何人か食えたので良しとする。

「しかしこうも早く学園のトップ食えちまうとこの先の楽しみが何もないな……」
「おい、学園生活を真っ当に過ごすという楽しみはないのかお前には」

 呆れたような視線を受け止めながら、俺は長い足を友人に伸ばすと小突くように蹴ってじゃれる。

「ここには食い応えある攻めはいねえのか、攻めは」
「いつでも股開いてあげる男なら目の前にいるけど」
「うげろ〜〜」

 失礼だな、と軽い拳骨が飛んでくるのを頭上で受け止めながら、後は風紀委員長かあ…でもあいつもすぐ食えそうだなあ、などと考えていると友人からそういえば、と声をかけられる。

「四年一組には行ったか?」
「は?四年?ここ三年制だろうが。しかもクラスはアルファベット分けだし」
「そうなんだけどあるんだよ、四年一組」
「はぁ」

 手持無沙汰だったので友人の飲み物を奪い飲み干すと、俺は空になったペットボトルの側面を噛んでパッケージを剥がしだす。やっぱり悪い癖だ。治す気もないけど。

「四年一組はなんつーか、化け物小屋って呼ばれててな、旧校舎に隔離されてんだけど」
「不良か!?」
「ああ、まぁ、不良が多いな。留年してる奴もいるし」

 成る程、学園でも持て余している不良たちか!そういえばその辺りは盲点だった。転入早々同室の一匹狼は即食いだったのですっかり不良を制覇した気になっていたが、そうか、四年一組なんてものが存在したのか。

「まあでもあそこはかなり特殊だから流石のお前も……っておーい、まさかもう行く気か!?授業始まるぞ!」
「この世に攻めがいる限り、俺のちんこは生き続ける!」
「……なんて残念な男前なんだ」

 後ろからため息とともに静かなツッコミが聞こえてきたが、俺は鳴り響くチャイムも聞こえないふりをして旧校舎の方に一直線で走っていった。
 途中会長に会ったので折角だからと空き教室で一発ヤってから向かったので次の授業もサボることになってしまったが、親の力でどうとでもなる学園だ。理事長の甥である俺に怖いものなど何もない。

「ここが旧校舎か」

 成る程、俺たちの過ごす校舎と違って廃れているところが如何にもって感じだ。
 俺は足を踏み出しいざ、と胸を張った所で誰かに肩を叩かれ振り返った。いたのは想像通りの雑魚っぽい不良で、俺は思わず笑みが浮かびそうになるのを何とか咳き込んで誤魔化し不良たちを睨み付ける。

「なんだ?」
「なんだ、じゃねえよ。ここがどこか分かって来てんのか?四年一組のエリアだぞ」
「それは聞いた」
「だったらさっさとあっちのお綺麗な校舎に戻れよ」

 三人いるうちの雑魚その一が顎をしゃくって俺を追い返そうと啖呵を切る。

「入ってはいけない理由があるのか?」

 しかし、それで食い下がれないのが立川敦だ。あっちのお綺麗な校舎の攻めたちはもう食い尽くしたのだから、ふはははは、次はお前たちの番だ。
 案の定、俺の質問に馬鹿な雑魚たちは首を傾げてお互いを見合わせた。さっき会長とセックスしながらここが立ち入り禁止場所ではないことを聞いているし、たまには一般生徒も用事がある際は寄ることもあると聞く。つまり入っていけない理由はないのだ。

「理由……理由って……あんのか?」
「さあ、ないと思うけど」
「じゃあこいつが入っても問題ないんじゃね?」

 馬鹿どもは勝手に納得すると、悪かったなと俺の肩を叩いて去っていった。馬鹿だ、馬鹿にも程がある。あと不良の癖に物わかり良いな。
 俺は雑魚どもが見えなくなったことを確認すると、次こそと勇み足で旧校舎に足を踏み入れた。あちらと違って少しヤニ臭いのはやはり不良の巣窟だからだろうか。きっとオラオラな男どもがうようよいるに違いない、食い応えがありそうで思わず涎も出ていないのに口元を拭ってしまう。

 しかし、俺の予想に反して旧校舎は妙に平和だった。
 行く先々で会う四年一組の連中は髪も見た目も奇抜で、不良という代名詞が相応しい格好をしているにも関わらず礼儀正しいし(俺と通りすがると先輩まで会釈してくる)古い割に廊下も綺麗だ。清掃がしっかり行き届いているのだろう。

「おかしい……クラスのボス的な攻めはどこにいるんだ……」

 もしやここのボスはとても温厚で皆から慕われているネコだったりするのだろうか。それは嫌だ、俺の希望のためにも高身長でイケメンで目で人を殺しそうな見た目をしてるくせに女を食いまくってるような攻めでいてくれ……!

「……ん?」

 校舎中を歩き回りながら必死で攻めを探していると、どうやら校舎でも奥の方まで来ていたらしい。三階の隅にある美術室と書かれた教室からは、何だか他と違う匂いがして俺は直感でここがボスの部屋だと確信した。
 覗くように開ければ、一人の男が煙草を吸って背中を向けている。赤い髪を後ろで縛って露わになった耳にはピアスがこれでもかと言わんばかりに装飾されている。声をかければ、いかつい顔のイケメンが眉を潜めて振り返った。

「あ?」

 こいつだ、こいつが四年一組のボスだ!
 俺はようやくたどり着いた攻めに感動を覚えながら、それを表に出さないよう笑みを浮かべて扉に背中を預けた。

「あんたが四年一組のボスか?」
「だったら何だっていうんだよ」
「いや、化け物小屋だって聞いたからどんな怪物が飛び出すのかと思ったけど、出てきたのはツラのいい兄ちゃんじゃねえかって思っただけだよ」

 挑発するように顎をしゃくって、向こうの出方を待つ。学園の中でもトップクラスの見た目を持っている自覚はあるので、予想通り喉を鳴らした赤髪の男に心中でガッツポーズを作った。

「残念ながら、俺はボスじゃないんだよ」

 しかし、男が口を開いたかと思えば俺の期待を裏切るもので、首を傾げると後ろから迫る影に包まれるように掴まってしまった。
 しまった、俺が気配に気付かないなんて、相当だぞこいつ!
 俺は相手を確認しながら蹴りでも入れてやろうと振り返って、その異常な見た目に思わず口をあんぐりとあけて固まってしまう。

「なんだ、きょうの相手はこれなの〜」
「そうみたいっすね……ボスの好みじゃないですけど」
「ううん、でもたまにはこういう男前さんでもいいかぁ」
「なっ、ななな……っ」

 いたのは、俺と同じぐらいの大きさの巨大なスライムだった。ぼよんぼよんと揺れる青い物体に固まっていると、スライムは俺を部屋の中へと押し入れてくる。

「ちょ、ちょっと、どういうことなんだっ、ボスって……!」
「そうだよ、こいつが四年一組のボス。化け物小屋ってのも案外間違いじゃねぇんだよなぁ」
「んなっっっ」

 そんなこと聞いてないぞ!いや、だからこそ皆俺に教えなかったのか!
 今更もがいて逃げようとしても、俺の四肢はスライムの触手が巻き付いていてほとんど宙を浮いている状態だ。
 こんなエロ同人みたいな展開は流石の俺も想像していなかった。と、いうかスライム相手に攻めようとも突っ込む場所さえ分からん状態だ。

「んじゃあいただきまあす」

 そうか、攻めを食い続けて遊んでた罰が当たったのかと後悔している暇もなく、俺はスライムに体を高く持ち上げられると、赤髪の男(後で知ったがボスの親友なんだそうだ)の前で今まで俺が男たちにしてきたようにヒーヒー泣かされ続けた。
 そりゃもう、日が暮れるまでたっぷりとだ。





「ううう、お前は俺の味方だと思っていたのに……」

 後日。散々掘り倒されて数日寝込んだ俺がまず昼休みの登校で向かったのは屋上で飯を食ってる友人の元だった。
 四年一組のスライムに攻めとしてのプライドをポッキリへし折られ傷ついていたが、その間全く見舞いにもこない友人に腹が立って同室の一匹狼をガン掘りすることで何とか元気を取り戻したものの、俺の処女喪失の相手がスライムである事実は変わらない。

「いやあ本当に行くとは思わなくってさ、でもボスは可愛い子専門だからお前無事だっ…た……んだよ、な?」
「無事だったら数日休むと思うか?」

 半眼で答えると、なんかごめんと謝られた。余計に惨めだ。

「でもボスは同じ子は二度抱かないで有名だから、お前も犬に噛まれたと思って忘れてしまえば」
「――いいんだろうが、生憎そうもいかなくなってな」
「ひぃっ」

 友人に償いのつもりか飲みかけの紙パックを渡されて慰められたところで、突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえて俺は反射的に悲鳴を上げた。
 振り返れば、数日前煙草をふかしながら俺の痴態を散々視姦してきた赤髪の男が立っている。

「ボスがお前の体気に入っちまったから暫くお前がいいってよ」
「い、いいい、言ってる意味が分からん、どういうことだ!」

 聞けば、ボスという名前のスライムは(肩書きじゃなかったのか)学園の土地神様のようなもので、勉強が出来ない不良どもはボスの身の回りを奉仕することで学園から卒業という切符を売ってもらい、本校舎の容姿が可愛い奴らは週に一回ボスに体をささげることで長く続く美貌を手に入れているのだそうだ。
 まあ無理矢理じゃないから……いいのか?確かに俺もあれからやたら肌がすべすべしてるし男前度も上がった気がする。同室の一匹狼も俺の顔見て赤面してたしな。しかし、

「悪いが俺はネコに転身する気はない」
「悪いがボスの希望に拒否権はないんだ、例え理事長の甥であってもな」

 そう言って掲げてきたのは何故か俺のサインが偽装された同意書だ。叔父め、俺を売ったな。

「四年一組にクラス替えさせたいって我が儘は阻止してやったんだぞ。旧校舎の不良どもは好きに食っていいから、大人しくボスが飽きるまで股を開いてやってくれ」

 ……スライムの件さえ除けばかなり魅力的な話ではある。
 俺は真剣に悩みだして(友人がマジかよ…と引き気味だが無視だ無視)あることに気付いた。

「好きに食っていい不良ってのは、お前も入ってるのか?」

 その質問に、赤髪の男は目を細めて笑みを浮かべながら何も言わず帰っていった。

「……要求を飲むか」
「マジかよ」

 友人が何度も本当にいいのか?と聞いてくるがあの赤髪のイケメンを掘れるのならスライムにケツを貸すぐらいなんてことない気がしてきたぞ。
 結局男とボスの二人にガン掘り3Pされる未来を知らない俺は、その時謎の高揚感に包まれながら紙パックのストローを穴が開くまで噛み続けるのだった。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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