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「立花さん、おはようございます」
「あ、黒川さん。おはよう」
昨夜のことがあったとはいえ、バイトを休むわけにも行かない。
いつも通りに仕事をするまでだ。
「今日は早いねぇ。相変わらず助かるよ」
「いえいえ。私にとって、このレ・エ・カフェは好きな場所ですし」
「そう言ってくれると助かるよ、ホントに。──それにしても、新城さんもおもしろいひとだね。ついつい夜遅くまでやりとりしちゃって……」
「あー、そうなんですか? それはよかったです」
「うん。特に研究の話なんかがね。俺は大学行けなかったから、新城さんの研究の話がおもしろくて」
「ああ、そうなんですか……。私は文系なんで、そういうの全然わかんなくって」
「ああ、そうなんだ。今日は午後に講義があるんだよね。新城さんには会うかな?」
「はい。絢未は研究一本なんで、常に大学にいるようなものなので」
「はは、そっか。一応、黒川さんの方からもお礼言っといてくれる? おかげで楽しかったってね」
「わかりました、伝えておきますね!」
そっかそっか……なんだ、やっぱりいい感じじゃん。
きっと喜んでくれるんだろうなぁ〜。
「あ。黒川さん、朝は食べた?」
「あ、いえ……。ちょっと忘れちゃって……」
というより、眠れなかったというのが本音なんだけれど……。
おかげで一睡すらできていないけれど、目の下にうっすら隈もできていたからコンシーラーで一生懸命消してきた。
「なら、ちょうどよかった。焼きの確認にトーストを何枚か焼いたから、食べてもらっていいかな」
「はい、助かります!」
朝から立花さんのトーストを食べられるなんてむしろラッキーだったかも。
別に朝食はパン派というわけでもご飯派でもない。
「じゃあ、いただきます」
カフェオレも淹れ、立花さんがいろいろと試したトースト2枚をいただく。
「うん、やっぱり美味しいです〜」
「はは、そっかそっか。やっぱりうれしいね、人に食べてもらえるのは」
「私もうれしいです、朝から美味しいトースト食べられて! ──あっ……」
もう一枚──それは忍田さんの好きなはちみつがけトースト……。
「黒川さん?」
「あっ、ごめんなさい! なんですか?」