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「あ、いや……はちみつトースト見て幸せそうな顔してたから……どうしたかなって思って」
「幸せそう、な……?」
「うん。もしかして、忍田さんのこと考えてたとか?」
「えっ、なんでわかるんですか!?」
私ってば、また顔に出てたのかな!?
思わず自分の顔を触って確認すると、立花さんが「ぷっ」と小さく吹き出して笑う。
「ははっ、黒川さんはわかりやすいね。まあ、忍田さんのこと考えてたのは俺のただの勘で直感だったんだけどね」
「え〜っ!」
「ははっ。いや、黒川さんって最近はよく忍田さんの話をするし。それにはちみつがけトーストは忍田さんの好物だしね。黒川さんって忍田さんのことが好きなんだなぁって思ったんだよ」
「好き……?」
「うん。えっ、違った?」
「えー、と……」
好き、なのかな……忍田さんのこと。
私のことが好きだって告白してくれて、一途に私のことを思ってくれて。
それで、会うたびに優しく笑ってくれていて……。
「正直、怖いんです……。男性のことを好きになることが」
「……そっか。そういうことがあったのか」
「はは、最初からしくじっちゃった感じで、それを未だに引きずってて。──忍田さんの好意に気づいてもなお、忍田さんのことを好きになることが難しくって」
「いいんじゃない?」
「えっ?」
「黒川さんの過去に何があったのか俺には判らないけど……忍田さんのことをゆっくり知って、ゆっくり好きになっていけばいい。もし、好きになれなかったとしても、次の恋もできるよ」
「でも、それは忍田さんに悪いですし……」
「迷惑なんてことはないよ。忍田さんだってもし好きになってくれなかったとしても、黒川さんを恨んだり憎んだりなんかしない。忍田さんはそういう人だ」
「忍田さん、が……」
「それに、忍田さんはずっと黒川さんのことが好きだったんだ。黒川さんに告白するまでずっと黒川さんのことが好きだった。それは忍田さんの優しさで、忍田さんはそれでもいいと思ったからだ。だからきっと自分を好きになってくれなかったとしても、黒川さんが次にいい恋でもしてくれるならそれでもいいと思ってくれるはずだよ」
「忍田さん……」