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──「俺と結婚してほしいんだ」。
そう言われたのも8月のこと、今はもう12月になってもうそろそろクリスマスがやってくる。
外に出れば、辺りは幸せそうに笑うカップルばかりで、そんなカップルを祝福するかのように散りばめられた光たちが強く瞬く。
街はイルミネーションによって彩り飾られ、どこを見てもまぶしくてくらくらしそうだ。
「あっ、結ちゃん!」
「忍田さん!」
待ち合わせに指定された場所には、サンタやトナカイなどといったクリスマスの定番がライトで飾り付けられた小さな庭がある駅前広場。
ここにもカップルがわいわいと楽しそうにしている。
今日はお互い仕事と講義が重なり、夜は出かけようと話していたのだ。
「ここ、すっごく可愛いですね!」
「でしょ? 毎年、こうやって広場でクリスマスのイルミネーションが行われてるんだよ」
「へぇ、そうなんですか〜」
「じゃあ、行こうか。今日は結ちゃんのためにディナーの予約しといたんだよ」
「そうだったんですか。だから、夜は出かけようって」
「そういうこと。大体、俺の家かカフェで終わっちゃうから、たまには違うことしてみようと思って。何だって12月だしね」
「いいですね!」
正直……そのいつも通りでもよかったのだけれど、もしかしたら忍田さんなりの気遣いかもしれない。
プロポーズされてからもう5ヶ月は経っているのに未だに返答に困っている私を見兼ねて、気分転換でもしてもらおうと考えたのではないか、と。
しばらく歩いていくと、忍田さんが立ち止まった。
私も止まると、おしゃれな外観の洋館風のレストランだ。
「おしゃれですね……」
「うん、会社の女の子が話しててよさそうだったから、紹介してもらったんだよ。見た目はこんなだけど、そんなに気を遣うお店ではないから、緊張しなくて大丈夫だよ」
「そうなんですか、よかった……」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
扉を開ければ、イメージ通りにドラマとかでよく観る洋館の玄関が広がっていた。
進路には柔らかそうな赤い絨毯が伸び、柱には天使などの石像がそれぞれろうそくを持って明るく、エレガントな雰囲気を出してくれている。
その赤い通路を進んで再び扉を開けると、横に立っていた支配人のような方が出迎えてくれる。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
「こんばんは。予約していた忍田ですが」
「忍田様ですね──はい、承っております。では、ご予約の席に案内させていただきます」
予約簿を確認したタキシード姿の男性が歩き出したので、私たちもそのあとに続いた。