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青く透き通っていたはずの海が沈みゆく太陽のせいで、砂浜までも夕陽色に染まっていく。
浜辺には二人の姿だけ、それは私と立花さん。
二人はその景色をただ眺めているだけ……。
ロマンチックで、でもどこか切なげだ。
誰もいない、ただ小さな波音だけが規則的に耳を撫でる。
そんな静かな潮騒に聞き惚れていたはずなのに、私の耳は立花さんの一言を聞き逃さなかった。
「あ、あのっ……立花さん……っ」
「ん? どうしたの?」
「その……待ってください。そんな急に言われても……!」
立花さんを目を点にしていたけれど、すぐに私に微笑みをくれる。
「急じゃないよ。ずっと考えてた。俺はもっと新城さんといたい……だから、俺と結婚してください」
「そんな……でも……でも……」
まだ心の準備なんてできていない。
もちろんうれしくてすぐに「よろしくお願いします」と叫びたいはずなのに。
「──まだダメです……!」
ドォン──目が覚めれば、私はベッドから落ちていた。
そう、立花さんにプロポーズされたのはすべて夢だったんだ……。
「はぁ……海デートが楽しすぎたせいかなぁ……」
天井を見つめるけれど、もちろん夢の続きなんて見られることもなく、なおかつまた夢から覚めるでもなく、時が流れた。
いい夢だったのに、これでは目覚めが悪すぎる……。
期待なんてしていない。
と言ったら嘘にはなるのだけれども、でもプロポーズされるなんて想像もできない。
もし、本当にプロポーズされちゃったら私……なんて答えるのかなぁ?
「絢未ー起きなさーい──って、何してるの!?」
「あーうん……変な夢? 見ただけ……」
そんなこと、今考えても分かるはずもなく、重い体を起こした。