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「ん……?」
「おはよ、新城さん」
「立花、さん……?」
目を覚ますと、隣には立花さんが私を優しい表情で見つめていた。
「おはよ、ございます」
「ん。それにしても、よく寝てたね。あともう少しで約束の時間だよ」
「約束の……時間?」
なんの話……。
思い出そうとすると、余計なエピソードも次々と蘇ってきた。
「ああああああっ!」
「思い出した?」
「は、はい……ありありと……」
「あと20分ってところかな、17時まで」
「あ、そうなんです、か……」
夢じゃ……ないんだよね?
あのエッチも、告白のことも全部──。
「立花さ──」
チュ、突然仕掛けられたキスに、私は目を丸くした。
立花さんの唇が離れると、ふっと笑われた。
「な……なな……っ、なんですか!」
「いや……びっくりして固まっちゃってるから、おもしろいなと」
「っ……!」
「今までのは全部、夢なんかじゃないよ。現実だよ、現実」
「そ、そうです、よね……」
心を読まれてしまった。
そんなに心の中がだだ漏れなのかと思うと、いたたまれない。
「じゃ、そろそろ待ち合わせ場所に行こっか」
「はい……」
「あの二人、仲直りできてるといいんだけど……」
「できてなかったら、一緒に帰りたくないですよね……」
「ははっ、そうだね。まあ、そうなったら一緒に電車で帰ろっか」
「そうですね……」
いつの間にか乱れていた服もきちんと直されていてその間のことを想像してしまうと恥ずかしいけれど、ここは何も言わないでおこう。
「帰ったら、ゆっくりしようね?」
「へ? ゆっくり……?」
「だって新城さん、気絶して最後までしてないでしょ?」
「さ、最後まで?」
「そこまで言わせるつもり? せっかくオブラートに包んであげたのに。──もっと気持ちよくしてあげるって……言ったでしょ?」
耳元で吐息混じりの甘い言葉に、私の顔はぼんっと一気に熱くなった。
それはもう、立花さんは大笑いしたのだった。