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何はともあれ、感謝はしているし。
それ以上は言わないでおこう。
梶田君とだべっているうちに研究室に辿り着いた。
「失礼します」
「お疲れ様です」
「はい、お疲れ様! 今日でしばらく研究室お休みだからね」
そういえばそうだった……。
来週から教授がシンガポールのシンポジウムに行くので、今日で研究室はお休み。
もちろん私たちにはその間、研究成果の中間報告としてレポートは書かなくてはいけないのだけれど。
「やっぱり休まなくてよかったぁ。もうちょっとだけ観察したかったから」
「そうだな」
「ということで、新城さん? 今日は19時までしか許さないからね?」
「は、はい、分かりました!」
「うんうん、新城さんは常習犯だからね」
「う……ごめんなさい……」
「あはははっ、冗談冗談」
今日は集中力切れがちだし……しっかり観察してレポートにまとめないと。
「はい、新城さんにはいつものように鍵を渡しておくからね」
「はい、しっかり鍵していきますね!」
「よろしくねー。新城さんはしっかり施錠してくれるけど、誰かさんは没頭しすぎて鍵すら忘れてきちゃうからね?」
研究員の視線が一斉に梶田君へ注がれる。
紛れもなく梶田君のことである。
「わ、悪かったですね!」
「あははは、ごめんごめん。でもさ、梶田君ってついついからかいたくなっちゃうんだよね〜。ちょっと母性本能くすぐる的な?」
「あはは、梶田君は真面目ですもんね」
「そうそう。見た目はこんなにチャラチャラしちゃってさ〜ギャップがありすぎて、余計に萌えちゃうんだよね〜」
「俺、もしかして貶されてる?」
「やだな〜褒めてるんだよ! ね、先輩?」
「そうそう、うちのアイドルなんだからね、梶田君は」
「だから、それを貶してるって言うんですって!」
「あはははっ」