main short | ナノ

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ざわざわとした喧騒の中でひっそりと理緒は佇む。





_____私は何のために生まれてきたんだろう?







辛かった受験を終えて迎えた高校生活。


…気づけば私は一人だった。


きっと皆は私といてもつまらないんだ。私は人とうまく話せない。つい愛想笑いばかりになってしまう。
皆も別に嫌い、ってわけじゃないと思う。たまに話しかけてくれる時だってある。ただ、私といるくらいなら他の友達と居たほうが楽しいんだと思う。

私はその現実を拒みはしなかった。私はただゆっくりと静かに生活を送っていたかったし。


涙だって出てこなかった。



でも、たまに思う。




心の中で。
一人は寂しいんだって。

私のセカイは灰色で、鮮やかな色なんてこれっぽっちもなかった。




…そんな私のセカイに一色の`色`を与えてくれた人がいた。







5時間目終了のチャイムが鳴る。

やっと授業が終わった。開放感から蒸し暑かった真夏の気温がほんの少しマシになった気がする。

私はいつものようにちゃっちゃと支度を済ませて教室を出ようとした時、聞きなれたクラスメイトの声が私の名前を呼んだ。


「おーーい、理緒ちゃん、3ー1の`沖田`って人が呼んでるよーー。」


…沖田?誰だろう…。
聞いたこと無い名前だけど…。


こんな私に用があるなんて趣味の悪い人。


どうせこんな私を馬鹿にしにきたんでしょ。


最初はそう思ってた。

だからおもいっきり不機嫌な顔で出ていってやった。


けれど、彼…沖田先輩はそんな私を見ても少しも怯まなかった。
むしろ余裕の目でこちらを見つめ、


「君が、理緒ちゃん?」

「…そうですけど…」

「ちょっと君と話してみたくてさ。この後時間空いてる?」

「ま、まぁ少しくらいなら空いてますけど…」


何なんだこの人…と思いながら理緒が答えると、彼は透き通った翡翠色の目を緩ませ、笑った。



「それじゃ、行こうか。」



こうして私はやや強引に連れていかれたわけだけど…。




__________さっき、ほんの一瞬だったけれど、僅かに笑った彼のその瞳から私はしばらく目が話せなかった。







校門を出てから数十分は経っただろうか。

真夏の太陽がぎらぎら照りつけて首筋から汗が一筋流れる。

沖田さんは無言でただひたすら歩いていた。

初めて会ったばかりだからかなんだか気まずい気がして、私はさっき沖田先輩が言っていたことを聞いてみた。


「あの…なんで私なんかと話してみたかったんですか?」

「ん?…いや…なんとなくね。」


……なんとなく?一体どういうこと?
私なんか影がおもいっきり薄くて、気づいてもらえないことだってあるのに。

ほんと、この人よく分からない…。



「それで、どこ行くんですか?」

「それも内緒だよ。」


沖田さんはそれっきり話さなくなった。

理緒はこれ以上離すことが見つからなくて、私もまた彼の横を無言で歩いた。



それからしばらく歩いていると、遠くから、ざぁ……と波の音が聞こえてきた。ほのかに鼻をくすぐる潮の香り。


曲がり角が無駄に多い道を抜けると、私の目の前に広がったのは太陽の光を反射させてキラキラ光る海だった。



「す…すごい…。こんな所あるなんて知らなかった……。」


砂浜へ足を一歩踏み出すと暑くなった砂がさく、っと優しく私の足を包み込んだ。



波が押し寄せてくる一歩手前に理緒が座ると、沖田さんも私の隣に座って、



「僕も、君と一緒なんだ。」


ただ一言、ぼそりと呟いた。

意味が分からなくて私は沖田さんを見上げる。

すると彼はそんな私にふっと笑うと、こう続けた。



「君がこの高校に入ってから僕はずっと君を見てきた。君はいつもこうして一人で座ってて、哀しそうにしてた。」



______キミは、寂しいんでしょ?




その言葉を聞いたとき、私はまるで心の奥を見透かされたような感じを覚えた。

理緒は否定できずに俯いてしまう。



「…だから、僕は君と一緒なんだ。」



ふと見た沖田さんの瞳は、どこか翳りがあってなぜだか儚い桜のように散ってしまいそうだった。
さっきの挑戦的な眼は微塵もなくて…。



なんだかこの人と私は同じなんだ…と思った。




しばらく二人で座っていると、やがて夕日が沈む時間になった。




「夕日、綺麗ですね…。」




ざざ…と波の音と共に沈んでいく太陽。じりじりと肌を焼く真夏暑さがだんだん抜けてきて、その時もやっぱり海面はキラキラ光っていて__________。

なんだか今私が見ているそれは現実では無いような気がしてきた。





「………また、来ませんか?」





私は立ち上がった沖田さんを見上げて言った。
…なんだか彼といる時間は短いようで長くてどこか不思議な感じがした。



そしてどこか温かくて。



また、こんな時間があればいいなって思ったから。




すると彼は一瞬驚いたような顔を見せ、そして儚げに笑って、優しく私の頭を撫でて言った。











「…ありがとう。」























海辺のシンデレラの前のお話、理緒ちゃんが沖田さんと出会った時のお話をかいてみました。


ホント駄文で申し訳ないです(泣

それでは、ここまで読んで下さった優しい方、ありがとうございました!