Act. 15 *独りじゃない*
微睡んだ視界が徐々にクリアになって行く。
目の前には心配そうにあたしの顔を覗き込むサソリの顔があって・・・、
優しい手付きであたしの頭を撫でてくれている。
サソリ「少しは落ち着いたか????」
『・・・っうん///。』
一頻り泣き、冷静になって考えてみたら急に羞恥心が湧いて来た・・・。
カァッと顔に熱が集まっていくのを感じる。
夢と現実を混同し騒いだ上、揚げ句の果てには泣き喚いてサソリに抱き付いてしまった。
寝惚けていたとは言えど、何て醜態を晒してしまったんだろう・・・////。
サソリも面倒だったよね・・・???
それでも嫌な顔一つせず・・・、
未だにあたしを抱き締め、頭を撫でていてくれるサソリ。
何だか申し訳なくて居たたまれない気持ちだ。
『・・・サソリ。』
サソリ「どうした???」
『ごめんね・・・。』
サソリ「何がだ???」
『その・・・、迷惑掛けちゃって・・・。』
サソリ「・・・迷惑???」
サソリはあたしの言葉に首を傾げると、頭をクシャリと撫でた。
サソリ「迷惑だなんて思ってねェよ。」
『でも・・・。』
サソリ「・・・。」
サソリは小さく溜め息を吐き出すと、あたしの目を見据えた。
サソリ「お前は何でもかんでも独りで抱え込み過ぎだ。」
『・・・え???』
サソリ「少しは周りを頼ったらどうだ???」
『・・・。』
周りを頼る・・・???
・・・そんな事したら皆に迷惑を掛ける。
今の修行でさえ、あたしの我儘で迷惑を掛けているのに・・・。
これ以上、他の事で負担を掛けたくなどない・・・。
サソリ「お前、また余計な事考えてんじゃねェぞ???」
『!??』
サソリ「お前の事だ。周りに迷惑を掛けるだとか、変な事考えてんだろ???」
ずばり言い当てられ、心臓がドキリと跳ねる。
何で分かったのだろう??
『え、えっと・・・。』
何て返答したら良いのか分からず、あたふたとしているとサソリは再度溜め息を吐き出した。
サソリ「・・・リク。」
『・・・。』
サソリ「・・・お前は頼って貰えない周りの気持ちを考えた事があるか???」
頼って貰えない周りの気持ち・・・???
サソリ「力になってやりてェのに言わねェから、手も出せねェ。もどかしくて仕方がなくなる・・・。」
『・・・ごめん。』
サソリ「別に謝って欲しい訳じゃねェ。・・・そんなに月日も経ってねェし。信用も出来てないだろうから、仕方無いけどな。」
何処か淋しそうに苦笑を浮かべるサソリに胸が苦しくなる。
『違うよ!!!!皆の事は信用してる!!!』
頼れないのはそこが問題では無いのだ・・・。
今までの境遇上、どう頼って良いのか分からない・・・。
早くに肉親を失い、親戚には冷たい扱いを受け・・・
甘えられる存在など居なかった・・・。
あたしは独りぼっち・・・
頼れるのは自分だけだって・・・。
『今まで、頼れる人なんて居なかったから・・・。』
サソリ「・・・。」
『ずっと、独りぼっちだったから・・・。』
サソリ「・・・リク。」
サソリはあたしを引寄せるとギュッと抱き締めた。
『///!????』
サソリ「・・・お前はもう独りじゃねェだろーが。」
『・・・。』
サソリ「お前にはオレ達が居る・・・。」
サソリの言葉に涙が溢れ出す・・・。
サソリ「辛かったらオレ達を頼れ。・・・少しは楽になるだろーが。」
『・・・・・・うん///。』
そうだ・・・。
もう、あたしは独りじゃない。
あたしには暁の皆が居る・・・!!!!
そう思うだけで胸が温かさに包まれていく。
サソリの心音が心地好い・・・。
『サソリ・・・、ありがとう・・・////。』
サソリ「あぁ。」
サソリはあたしの体を放すと、顔を見て苦笑を浮かべた。
サソリ「ったく、お前はいつまで泣いてんだ???」
『安心したら涙が止まらなくなっちゃって・・・///。』
サソリ「・・・本当に手間の掛かる奴だな。」
サソリの顔がスッと近付き、あたしの前髪に指が触れた・・・
『・・・???』
直後、おでこにサソリの唇が触れる。
『っっ/////!???』
突然の事に言葉にならず、口をパクパクさせるあたしにサソリは小さく笑いを溢した。
サソリ「クク。金魚みてェだな。」
『お、おおおでこにっっ///!???』
サソリ「あん???おでこじゃなく口が良かったか???」
『な、何言って///!????』
サソリ「ククク。冗談に決まってんだろーが。」
喉の奥でクツクツと笑いを溢すサソリに顔が熱くなっていく。
『そうやって、からかって////!!!!』
サソリ「・・・やっと、泣き止んだな???」
『・・・え????』
サソリは微かに口角を上げフッと笑いを溢すと立ち上がった。
サソリ「・・・リビングに戻る。鬼鮫を待たせているからな。」
『えっ、あ・・・うん///。』
サソリ「準備が出来たら、さっさと来い。」
サソリはそれだけ言うと、スタスタと部屋から出て行った。
パタンと音を立てて閉まる扉を見つめる・・・。
『・・・もしかして、泣き止ませる為にチュウしたのかな///???』
不器用なサソリの優しさ・・・
目を瞑り、サソリを思い浮かべると小さく『ありがとう』の言葉を呟いた・・・。
〜Fin〜
2012.7/5
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