Act.14 *闇*
『・・・ここは何処???』
何も見えない・・・
辺り一面が真っ暗で一足先も見えない闇。
その闇の中に自分の姿のみが光を放つようにあたしだけが浮き出ている。
何処に向かって歩いているのか・・・
この闇は何処まで続いているのか・・・
いったい此処は何処なのか・・・
何も分からない・・・。
ただ、感じるのは身体を虫歯むように冷たい気温・・・。
恐いよ・・・
涙が溢れ落ちそうになるのを必死に堪えながら、ひたすら歩き続ける・・・。
恐い・・・
不安・・・
恐い・・・
不安・・・
恐怖と不安が混じり合う。
このままでは頭がどうにかなってしまいそうだ。
『誰か居ないの・・・!??』
あたしの言葉に反応するように少し先にぽぉっと光が宿る。
『!???』
目を凝らして先を見つめる。
『・・・あ!!!』
光の中に居たのは暁の皆・・・。
優しい笑顔であたしを見つめている・・・。
『皆・・・!!!』
あたしは皆の元へと駆け出した。
脚が縺れようが、息が切れようが構わない・・・!!!
それよりも早く皆の所に行きたい!!!
いつもみたく温かく受け入れて!!!
優しい声で『リク』って名前を呼んで欲しい!!!!
皆と居ればこんな暗闇なんか恐くないから・・・!!!
『何で・・・!???』
全速力で走るのに皆との距離は縮まらない。
それどころかどんどん遠ざかって行く。
嫌だ、
待って!!!!!
置いていかないで!!!
『待って!!!!』
あたしの叫びと同時に光は消え、また暗闇が世界を支配した。
希望を失ったあたしは崩れ落ちるようにその場にしゃがみこんだ。
我慢していたものが一気に溢れ出す。
『〜っふぅ・・・。』
ポロポロと眼から涙が溢れ落ちる。
嫌だ・・・
嫌だ・・・
嫌だっっ!!!!!
あたしを独りにしないで・・・!!!!
もう、独りは沢山!!!!
あたしには皆が必要なの!!!!!
お願いだから・・・
あたしを独りにしないで・・・
皆と一緒に居させて!!!!!
『っは・・・!????』
急に呼吸が出来なくなり、喉がひゅーひゅーと音をたてる。
必死に空気を取り込もうとしても、一向に肺に空気が入らない。
苦しい・・・
苦しいよ・・・
あたし独りぼっちで死ぬの???
ー誰か助けて
遠くなる意識の中、誰かがあたしの名を呼んだ気がした・・・。
**********
鬼鮫「珍しいですね〜。」
サソリ「・・・何がだ???」
オレは珈琲を啜りながら、鬼鮫に問い掛けた。
鬼鮫「リクさんですよ。」
サソリ「・・・あぁ。確かに今朝は見てねェな。」
いつもはリビングに入ると『おはよう!!!』と笑顔で珈琲を運んで来るのだが、今朝は居なかった。
鬼鮫「寝坊ですかね???まぁ、ハードな修行ですし疲れが出たんですかね???」
サソリ「・・・そうかもな。」
鬼鮫が言っている事はもっともな事の筈なのに何と無く嫌な予感がする。
サソリ「・・・。」
ーガタッ!!!!
鬼鮫「サソリさん???」
サソリ「・・・すぐ戻る。」
オレはそれだけ言うとリビングを出て、すぐにリクへの部屋へと向かった。
ーコンコン!!!
サソリ「おい、リク!!!」
ーコンコン!!!
サソリ「・・寝てるのか???」
名前を呼んでも、ノックをしても返事はない。
仕方無い・・・。
サソリ「入るぞ!!!」
ドアを開け、中を窺う。
カーテンは閉まっており、ベットの布団が盛り上がっているのにオレは小さく溜め息をはいた。
心配し過ぎたか・・・。
オレはベットに近付き、声をかけた。
サソリ「おい!!!起きろ!!!!」
これだけ近くで声をかけているのにリクに起きる様子はない。
返事の代わりにひゅーひゅーと変な音が聞こえ、オレは慌てて布団を捲った。
サソリ「リク!???」
リクは涙を流しながら苦しそうに胸を押さえていた。
サソリ「おい!!!リク!!!!」
リクの体を揺するが相変わらず反応は無い。
サソリ「・・・この症状、過呼吸か???」
過呼吸の時は空気を吸うんじゃなく、吐き出さなきゃいけねェんだが・・・。
これだけ呼んでも起きない奴にどう説明しろと???
『ッハ・・・ぅ・・・っ!!!!!』
サソリ「!!!!!」
オレがこうして悩んでいる間もリクは苦しんでいる。
悩んでいる暇は無い。
サソリ「これは不可抗力だからな!???」
オレはそれだけ言うとリクの唇を塞いだ。
一瞬体をピクリと跳ねさせたが、特に抵抗はない。
こんな時だとゆうのにリクの唇の柔らかさに欲情しそうになった自分に苦笑を浮かべる。
ー不可抗力
クク・・・
好きでも無い女なら確実に放っておく癖にな・・・。
暫くして、呼吸の乱れが収まりオレはリクから唇を離した。
サソリ「おい!!!!リク!!!!!」
『・・・・・・で・・・』
サソリ「リク!!!」
オレは少し強めにリクの体を揺すった。
サソリ「リク!!!起きろ!!!!」
『!???????』
サソリ「やっと、起き・・・!???」
リクは目をパチリと開けるや否やオレの姿を確認するとギュッとしがみついて来た。
『やぁぁぁ!!!!!』
サソリ「おい!???落ち着け!!!!」
寝惚けているのか????
『置いて行かないで!!!!!!』
サソリ「リク、落ち着・・・」
『あたしを独りにしないで!!!!もう、独りは嫌!!!!』
サソリ「!???」
泣き喚きながらオレにしがみつくリクをオレはギュッと抱き締めた。
オレ達の前ではそんな素振りなど微塵も見せずに明るくに振る舞っていたが、本当はいつも不安だったのだろう・・・。
幼い頃に両親を亡くして淋しくない筈がない。
きっと、今まで凄く苦労して来たんだろう・・・。
オレの腕の中で泣きじゃくるリクは小さくて今にも壊れてしまいそうだ。
この小さな体にどれだけの想いを詰め込んで来たのだろうか???
サソリ「オレは何処にも行かねェ。ずっと傍に居てやるから・・・。」
『本当に・・・???』
サソリ「あぁ。約束する・・・。」
『うん・・・。・・・ヒック。』
サソリ「だから不安がるんじゃねェよ。」
不安な時はオレが傍に居てやる・・・
泣きたい時は胸を貸してやる・・・
辛い時は話を聞いてやる・・・
だから泣くんじゃねェよ。
リク・・・
オマエには笑顔でいて欲しい。
オレは愛しい想いを込めて、優しくリクの頭を撫でた。
〜Fin 〜
2012.4/19
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