Act. 12*木登り*
朝食を終えて直ぐに、あたし達は森へ修行に向かった。
サソリ「リク、チャクラについてはどのくらい把握してんだ???」
『んっと、忍術に使うエネルギーで・・・。確か、身体エネルギーと精神エネルギーの2つを合わせてとか何とか・・・???』
サソリ「大体分かってるじゃねェか。それに印が合わさると術が発動する。・・・が、エネルギー量のコントロールが習得出来ねェと技は発動しねェ。」
『・・・コントロールかぁ。』
デイダラ「そこでだ、チャクラのコントロールを覚える為に木登りの練習をするぞ。うん。」
『木登り・・・。』
そういえば、NARUTOの漫画の中でもチャクラのコントロールを学ぶ為に木登りの練習してたっけ・・・。
サソリ「あぁ。だが、木登りって言っても手は使わねェ。デイダラ、見本を見せてやれ。」
デイダラ「おう。」
デイダラは印を結ぶと地面と垂直に木を登って行く。
枝の分かれ目に差し掛かるとそこに腰を下ろした。
デイダラ「っとまぁ、こんなもんだ。うん。」
『す、凄い!!!!』
漫画で見慣れていても、やはり現実で目で見るのは違う。
手品か何かを見てる気分になる。
本当にあたしに出来るのだろうか???
少し不安になるけど、あたしにはサソリとデイダラという頼もしい先生がいる・・・。
きっと大丈夫だよね!!!!
あたしは小さくガッツポーズを取った。
『よし、あたしもやるぞ!!!!』
サソリ「言っとくが見てる程、楽じゃねェぞ???」
『分かってます。』
デイダラは木から飛び降りるとあたしの隣に着地した。
デイダラ「よっと。じゃあ、教えるぞ???」
『はい!!!!』
デイダラ「いいか???まずは印を結んで・・・。」
見よう見真似であたしも印を結ぶ。
デイダラ「そうそう。それから、足元に一定量のチャクラを流し込む。」
『・・・足元に一定量のチャクラを流し込む。』
目を瞑り、チャクラが足元に流れいくイメージをする。
その瞬間、足元にブゥンっと小さく風が巻き起こった。
『!???』
デイダラ「お!???チャクラを感じるぞ???うん???」
サソリ「チャクラを出す事自体に時間がかかると思ったんだが・・・、早かったな。」
『やったぁぁぁ!!!!初チャクラだよ!!!!』
デイダラ「リク、嬉しいのは分かるけど落ち着け???うん???」
『あ、ごめん。』
デイダラ「そのまま、登ってみろよ。」
『う、うん・・・。』
頑張れあたしっっ!!!!
あたしは勢いに任せて、木に向かって一気にかけ上がった。
『っっ!????』
・・・が、そんな上手く行く筈もなく木の表面に足跡を付けて体が弾き返されてしまった。
『・・・チャクラが強すぎたんだ。』
この修行はナルト達も苦戦してたんだよね・・・。
・・・で、確かサクラちゃんにコツを聞いていた筈。
何て言ってたっけ・・・???
確か・・・
「一定量のチャクラを足の裏に集めるように、リラックスして木に集中・・・」
・・・だったかな???
あたしは深呼吸して気持ちを落ち着かせると、もう一度足元に一定量のチャクラを集めた。
・・・今度こそ!!!!
あたしは木に意識を集中させつつ、片足を付けた。
今度は弾き返されることはなかった。
勢いに任せ、あたしはそのまま木をかけ登った。
『あっ!!!!』
重力に逆らって髪は下に落ちるが地面と垂直に立っている。
足元を見るとしっかり木に足がついている。
『で、出来ちゃった!!!!!』
あたしはそのまま、枝の分かれ目まで行くと腰を下ろした。
『デイダラー!!!!サソリー!!!!!出来たよ〜!!!!』
下にいるデイダラ達に手を振ると、デイダラは笑顔でこちらに手を振り返してくれた。
デイダラ「リクやるじゃねェか!!!!うん!!!!」
『えへへ〜♪ありがとう!!!』
サソリ「大したもんだ・・・。チャクラのコントロールに長けてやがる。」
デイダラ「リクは医療忍者向けかもな???うん。」
サソリ「そうだな。」
デイダラ「リクー!!!!そろそろ降りて来いよ!!!!うん!!!!」
『・・・え???』
あたしはデイダラの発言に固まった。
登ったは良いけど、ここからどうやって降りるの・・・???
デイダラは飛び降りてたけど・・・。
あたしは下を見下ろした。
この高さなら着地出来る・・・よね???
『よしっっ!!!!』
あたしは枝の上に立つと勢い良く飛び降りた。
・・・が、
『きゃっ!???』
足が枝に引っ掛かり体勢がグラリと崩れた。
空中で体勢を立て直す術もなく、あたしはそのまま落下して行った。
デイダラ「リク!????」
サソリ「!????」
地面にぶつかる!!!!
覚悟を決め、目をギュッと瞑る。
ーボス
『・・・・・・???』
体に衝撃が走る事はなく、代わりに温もりが体を包み込む。
恐る恐る目を開けると、息を切らしてこちらを見るサソリと目があった。
『サ、サソ・・・』
サソリ「ンの馬鹿!!!!てめェは何考えてんだ!???」
『ご、ごめんなさい・・・。まさか足を引っ掛けるなんて思わなくて・・・。』
サソリ「言い訳すんじゃねェ!!!!」
『・・・はい。』
デイダラ「本当に心臓が飛び出るかと思ったぞ。・・・うん。」
『・・・ごめんなさい。』
デイダラ「・・・無事で良かった。・・・うん。」
サソリ「心配かけさせんじゃねェよ・・・。」
『///!???』
サソリはあたしをギュッと抱き締めると肩に顔を埋めた。
あたしはどうして良いのか分からず、顔を真っ赤に染めて俯く。
『ほ、本当にごめんね////。今度からは気を付けるから・・・////。』
サソリ「・・・あぁ。」
サソリはスッとあたしから離れると、「落ち着いたら、また修行を再開しろ。」とだけ言い一人で何処かに姿を消してしまった。
その場に残されたあたしとデイダラに暫し沈黙の時間が流れる。
『・・・サソリ、あたしに呆れちゃったのかな???』
デイダラ「・・・いや、そうじゃねェ。・・・うん。」
デイダラは何処か複雑そうな表情を浮かべて、地面に視線を反らした。
『・・・デイダラ???』
デイダラ「・・・まぁ、取り敢えずリクに呆れたとかそんなんじゃねェと思うから安心しろよ。うん。」
デイダラはあたしの頭を撫でるとニッと笑った。
あたしもデイダラの笑顔に吊られて、笑顔が溢れる。
『うん♪』
デイダラ「さて、そろそろ修行再開するかい???」
『うん!!!また、ご指導お願いします!!!!』
デイダラ「おう!!!!」
あたしは気合いを入れると修行に意識を集中させた。
**********
オレは森の中で大きな溜め息を吐き出した。
サソリ「・・・。」
リクが落下しそうになった時、一瞬呼吸が出来なくなった。
気が付いたら体が動いていて、リクを抱き抱えていた。
自分で言うのも何だが、オレは他人に余り興味が無い。
誰が死のうが知ったこっちゃねェし、
自分以外の誰がどうなろうと、どうでも良いと思っている。
・・・だが、リクに関しては違っていた。
オレの腕の中で温もりを宿し、こちらを見るリクを見た時に凄く安堵した。
生きていて良かった・・・。
そう思うや否や、オレはリクを抱き締めていた。
自分でも正直驚いた。
いつも冷静なオレが感情を露にし、頭より先に体が動いてしまっていたのだから。
サソリ「・・・ククク。」
オレは額に手を当て、自嘲気味に小さく笑いを溢した。
自分の中にまだ、こんな人間染みた感情が残っていたとはな・・・。
サソリ「・・・認めるしかねェよな。」
オレはリクの事が・・・、
サソリ「・・・まさか、あんな小娘を好きになるなんてな。」
オレはもう一度溜め息をつくと、木に背を預けた。
少し気持ちを落ち着けてから戻るとするか・・・。
目を綴じるとリクの笑顔が脳裏を掠め、思わず口元が弛んだ。
〜Fin 〜
2011.10/10
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