ふと達也の唇を見てみる。少し薄い桃色の控えめではあるが、微かに揺れる口唇

その口から放たれる声はなんとも蕩けるような感覚さえさせてしまう、そんな唇

「なに?」

「あ、いや…」

少しすると、俺の熱烈な視線に気付いたのか。達也は怪訝な顔で俺を見た

そんな顔しても可愛いよ。って内心呟きながら、手招きをしてみる。すると疑う素振りなく俺の側に歩み寄る

「さっきから何を見っ」

よほど俺の視線が気になったらしい、その魅惑的な口唇が動き出す。どんな感触なのだろう、と思う先に、体が勝手に動いた

「ちょ…、と」

やっちまった、と思いつつ、ああ、こんなに甘いのかっと唇を堪能してしまう矛盾

クセになるくらいやんわりした唇。そして甘くとろみのついた、まるで蜂蜜のような達也の唾液さえも味わう

「ふ…ぅ…」

達也から思いの外、抵抗がなく、流石にやめとこう…っと自分に言い聞かせて、俺は名残惜しく達也から退いた

「…もう…、一体何なの…」

「あー…わり、」

口を離せば、ふあっと甘い声を漏らしつつ俺を見つめる達也に俺は感情を抑えるように口を自分の塞ぐ

達也の唇は甘くてクセになる。

それが逆に俺の体に悪いってことを
今更ながら思い知った、そんな日だった



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