小説 | ナノ




‖紅

赤く燃えるような髪
そして瞳…
わたくしの心はいつもあの人のことばかり…


かたっ

「…風が強いな」



「…」

遠子はどうしているのかしら…
病み上がりなのに
あの子は…

「小碓命…」

あの子は
殺めると言っていた…

「…」

遠子を看病して思っていた
どうして
そこまで人を想えるのか
明姉様もそうして…
宿命を捨て
命までも犠牲にし
自ら逝ってしまわれた方…



どうしてそこまで想えるのかしら…

「…菅流」

もう口にはしたくない名前
わたくしを侮辱した髪の赤い人
そして…



一度でも好きと想ったわたくし…



「嫌だわわたくし…」

巫女になると決めたのに
なのに…

この晴れない気持ちは…


かたっ



物音がした

「豊青姫様?」

わたくしは戸まで行く

「どうなされ…」





「やあ」





一瞬
時が止まった



「見ない内に一段と綺麗になったね」



どくん



「…な…」

どうして
あなたがわたくしの目の前にいるの?

「な…何か御用かしら?」
声が震える…

「いや,勾玉の事を聞きに来たんだ」

「そう…」



風が彼の髪を弄ぶ



「そして君に逢いに来たんだ」



「え…」



わたくしを真っ直ぐに見つめる



「象子?」



その瞳は
紅く透き通った
…濁りのない瞳




†象子†




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