恋人

遊園地に行った翌日。
運動すると未だに痛む片足が原因で、僕は暫く部活が出来ない。
普段は見学しているけど、今日は休ませて貰った。
リビングでゆっくりと紅茶を啜りながら、この数日を回想した。


―――ピンポーン


家のベルが鳴った。
出来る限りの早足で玄関へ向かうと、可愛いお客さんをお出迎えした。

「やあ。」

『こんにちは。』

玄関を開けた瞬間、僕の大好きな可愛いお客さんが顔を出した。
勿論、華代だ。
すると華代の後ろから凛とした美人が顔を出した。

「ただいま、お兄ちゃん。」

「おかえり、愛。」

学校の帰り、僕の家に来る直前にこの二人はお茶をしていた。
華代は愛に手術の話をする為にお茶に誘ったらしい。
愛は慣れた手つきで華代を誘導し、家に上がらせた。

「それじゃあ、後は二人でごゆっくり。」

『ありがとう、愛。』

華代は愛に手を振った。
僕は華代の肩に軽く手を置いて、愛ににっこりと笑った。
愛は苦笑いしながら口パクで話した。

「華代が分からないからってこっそり自慢しないでよ。」

「手塚との事を普段から自慢し放題なのは何処の誰だい?」

口パクでも会話が成立する不二兄妹。
華代は全く気付いていない。
自慢するなと言いながらも、愛は去り際に「おめでとう」と言ってくれた。
素直に、嬉しかった。
僕は華代の手を取って僕の部屋へ誘導した。

『見えていた頃に愛の部屋は何度かお邪魔した事がありますよ。』

「その時に僕が家にいたら、僕らはもっと早く出逢えていたかもしれないね。」

『でも今こうして実際逢えていますから、もう充分です。』

「そうだね、僕もこれ以上は望まないよ。」

こんな会話をしているうちに、僕の部屋に到着した。
僕は君を座布団に座らせた。
ソファーの一つや二つ、あれば良かったんだけど。

「バイオリンを持ってきたんだね。

大事な物だから、安定した処に置いておくよ。」

『ありがとうございます。』

君の荷物はバイオリンと小さな鞄だけだ。
僕は立ち上がった。

「紅茶を取ってくるから、ちょっとだけ待っていてね。」

『はい。』

君の頭に手を優しくポンと置いてから、僕は部屋を出た。
リビングへ行くと、愛が先着だった。
両親と姉は仕事で不在だ。

「あ、お兄ちゃん。

丁度良かった。」

「ん?」

愛は紅茶のお湯を沸かしてくれていた。
何時も思うけど、僕の妹はテニス馬鹿の癖に家庭的で気が利く。

「華代はね、アールグレイに砂糖1.5杯が丁度良いんだよ?」

「覚えておくよ。」

愛は丸い盆に紅茶一式を準備し、僕に手渡してくれた。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

愛は温かい笑顔を向けてくれた。
こういう素顔に手塚は魅かれたのかな、と思ったりした。





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